なぜ、ハイレゾ音源は必要ないのに 32-bit Float 384kHz 録音は必要なのか?

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なぜ、ハイレゾ音源は必要ないのに 32-bit Float 384kHz 録音は必要なのか?

なぜ、ハイレゾ音源は必要ないのに 32-bit Float 384kHz 録音は必要なのか? 

この内容はモンゴメリーさんの 24/192 音源は本当に愚かなり のページを読んだあと見ることをオススメします。

なぜハイレゾは必要ないのか


モンゴメリーさんは、ハイレゾ音源の無意味さ、悪いところを含めて、理論的に説明してくれました。これはあくまでも 理論的・数学的側面リスナー目線 で書かれていることを理解する必要があります。

極論を述べるのであれば、現代のストリーミング音質に不満を抱えているコンシューマはいないはずだし、圧縮音源が気に入らない層ならハイレゾを購入するという選択肢があり棲み分けができています。圧縮音源なんて CD フォーマットから逆行して音源としては退化しているのにもかかわらず業績は右肩上がりという事実に目を向けるべきで、ハイレゾが不必要というわけでなく、現段階では一般フォーマットにはなりえない、ということです。

事実、1982年の10月1日以降、この CD フォーマットは 40 年近く更新されていません。SACD や DVD-A などハイレート音源を広めようと画策しましたが、次世代フォーマットとして成長しませんでした。この事実を鑑みるに 40 年ほど前に、フルオケが丸々ディスクに収まる 16/44.1 というフォーマットを選択した Sony と Philips には脱帽です。

彼の意見はオーディオエンジニア目線ではなく、理論的数学的エンジニア目線の主張が主であること、些細な変化はプラシーボやバイアスがかかっていることなど、と主張していますが、エンジニア目線では全く異なります。オーディオエンジニアであれば、24/192 音源と 16/44.1 音源の誤差が簡単に聞き分けられます。それは 24/192 でミックスして、完成形の音ができているので、経験で 16/44.1 の音と違いがわかるもので、このギャップが気になるのがエンジニアです。どちらがいいか悪いかは別として、印象が若干かわることを避けたいと考えるのがプロの考えです。

384kHz/32-bit Float 録音が必要なわけ


ではなぜ、私は 32-bit Float/384kHz 録音が必要か、というと、エンジニア側視点 という大前提があります。

私はプロなので、必要ないといえば必要ない。エンジニアというものは与えられた中でベストを尽くすので、16-bit/44.1kHz のフォーマットであろうが、最善を尽くしてエンジニアリングする。だから仕事の上で指定されたフォーマットは大した問題ではない。しかし最善は尽くしたいと考える。

しかし、現代デジタル音楽では、流石に 16-bit/44.1kHz フォーマットは限界で厳しい。やはり、ミックスは 高ビット、高サンプルレート がほしい。これはデジタルミックスだからこそ、必要であり、何故必要かと感じかは以下の通りです。

  1. 384kHz あれば、業務用 AD/DA とアナログの信号とを A/B 比較したとき、音の違いがわからない。
  2. DAW が 64-bit Float で動いているので保存データも 32-bit Float にしたい。
  3. エイリアシングノイズとは無縁になる

以上が、個人的に最高の状況を見出したいが為の理由です。

384kHz の必要性


1 に関しては、これはもう経験としか言いようがない。卓のドライシグナルと Pro Tools 返りの音は全然違います。急にレンジが狭くなる印象。あと高域の圧縮感っていうのかな、狭い領域に押し込まれているような印象を感じる。これはモンゴメリーさんに言わせれば、バイアス、なのでしょう。数学的にはモンゴメリーさんは間違っていないですが、物理的、エンジニアリング的に当てはまらないことがたくさんあります。詳しいデジタルオーディオ物理については別記事で。

32-bit Float の必要性


2 に関しては、別記事で詳しく書きますが、24-bit 音声を 64-bit Float Mixer で編集してもまだ、Pro Tools では量子化誤差ノイズが発生します。ものすごく極低レベルのノイズなので可聴範囲に影響を及ぼすようなもの、ではないですが、エンジニアリング的には無駄なものや余分なものは徹底的に排除することが大切なので、32-bit Float で録音して量子化ノイズを極限まで考えないようにしたいのです。

エイリアシングノイズ


3 一番気を使っている部分です。昨今のオーバーコンプレッションの高音シャカシャキ音源の原因だと思っています。また、現代ミックスの倍音の扱いにおいて、このエイリアシングノイズが低域に何らかの影響を与えているという仮説を立てたのでその解説を別記事で書きます。

私個人として、「倍音を制す者がミックスを制す」考えています。昔の偉い人が「コンプを制す者がミックスを制す」と言ったらしいですが、コンプの倍音に正解が隠れていたのかもしれません。

そして倍音こそが、デジタルミックスで最大の要となるわけなんですが、最大の敵 にもなります。動作ナイキスト周波数以上の倍音は折返しノイズとして存在しない周波数を発生させます。96kHz ではまだ不安なんです。192kHz のヘッドルームが欲しいんです。いちいちノイズのことを気にするようなシステムを廃止したい、という願望です。AD/DA も 200kHz 以上はローパスフィルターがかかるだろうし、384 が制作の限界だろう、と考えています。

現代のハイレゾはエンジニアにとって非常に魅力的な共有ツール


32-bit Float/384kHz の再生環境の整備はいらないと思います。再生に関してはモンゴメリーさんにかなり同意します。しかし、私はハイレゾ音源否定というわけではありません。制作過程のままの Bit Depth と Sample Rate 音源を提供できれば、それはエンジニア達が仕上げた音そのままを提供できるということです。これは非常に素晴らしいことです。数学的に多少欠陥があったとしてもです。正直 24/48 でマスタリングした音源を 16/44.1 に落とし込むときは非常に複雑な思いで、マスタリングの立会いをしています。

今はデータサイズの問題が立ちはだかり、なかなかハイレゾを平等に供給できませんし、高 Depth と 高 Rate の音源を 16-bit/44.1kHz に落とし込んだほうが絶対にエンジニアが仕上げたい音に限りなく近づくはずで、そういった意味で、CD フォーマットは素晴らしい立ち位置にいてくれていています。

コンピュータの進化や AD/DA コンバータの発達でエンジニアはデジタルオーディオの障害を超えて、次の次元の音質をまた、CD フォーマットに落とし込むことができるようになるのです。

  • 書いた人: Naruki
    レコーディングエンジニア
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