iZotope Ozone 12 最速レビュー

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iZotope Ozone 12 最速レビュー

iZotope Ozone 12 最速レビュー 

割と需要があるので、これやってみます。

結局買いました。Trial の文字が Plugin 上から消えました。

ちなみに海外では Trial でレビューすることは普通です。海外のレビュー見まくってください。デモでのレビューは Reddit 等のスレッドでは否定的ではなく歓迎されています。私は EULA の中身を読み、レビューに関する項目について言及はありませんでしたので問題ないと動画を制作しております。デモ版等で動画自体は無償のプロモーションになるため歓迎されています。

この動画を見ておくと良いです。

2年ぶりのアップデートらしい


以前、Ozone 11 最速レビューをしている。

もうあの記事?から2年経ったのか。

この記事では総合評価として少し酷評していた。

この記事では動画では「間違ったいたであろう解釈」の補足を行います。

AI Assistance


かなり、進化していると思う。

結構、意図違いの設定を自動で設定された記憶があるが、12 になって結構使える。

動画では適当なこと言ってるのですが、自動で Adapt されるモジュールは以下のモジュールのみ。

そして、Analysis Time (解析時間) は自分で設定できる。

ちなみに AI に設定を依頼しても、Impact や Imager の特定の数値は固定で常に 100ms や 3.0dB などの設定はそのままである模様。全然使っていないので把握していなくてすみません。

Intelligent Release Control 5


動画では、リダクションの仕方からマルチバンドがかなり細かくなった、という発言をしているが、どうもそれが真実ではないっぽい。

マルチバンドであることは間違いなく、おそらく Limitless と同じような 6 バンドないし、複数バンド設計であると思われると発言したしたのだが、各周波数で処理が完全に異なるようだ。

公式的な情報を得られた のですが、IRC 5 は 4 バンドのマルチバンド処理を実現しているとのこと。今までの IRC の Gain 補完 (公式的にはゲインエンベロープなんて言ってた) がシングルバンド設計であると開発者の発信がありました。

実は IRC 4 はマニュアルには「周波数帯域を制限して処理する」と書かれていたため、私はずっとマルチバンド処理だと思っていたが、Limiting 処理自体はシングルバンドであることは知らなかった。

IRC 4 は見かけ上マルチバンド処理のように見えますが、実態はマルチバンドリミッターではなく、各帯域ごとの解析でリダクションをどうするかを決定するが、ゲイン処理はマルチバンドではない、ということのようだ。ややこしいな!

これは IRC 5 の測定値であり、入力される信号を先読みしつつ実際には変形していくのだろう

上図は 40Hz を入力したときの IRC 5 のダイナミクスを表す。測定値であり、あくまで推測議論の参考値。

もちろん、IRC 5 の中身はマルチバンド処理のため、このリダクション動作は周波数によって異なる。そして、測定値自体は常に変動するため、一つの解釈としての情報になる。測定値の見かけ上だけで議論できないため推測を大きく含む話になる。

測定値の結果のみで議論は難しいため出音と測定値を前提としてこの記事は書いている。素人は絶対にやらないほうがいい。

従来の波形変形ツールと一緒で低域は歪みやすいが、高域は非常に低歪みであり、IMD の測定では 0.12 % 程度だった。もちろん、この Maximazer はおそらく 32-bit float 処理であるため、全体の THD の値は 非常に低いときで -134 dB 程度に落ちつく。(これは帯域別評価をしたときの測定値下限で全体の評価は実際は多い)

簡単に言うと通常のモダンな Limiter ではなく、古典的な動作を高度な Limiter (Algorithm) で実現し、0 dBFS を超える信号は完全に Clipper で抑制しているように見てる。そして信号は 0 dBFS に向かっていき、波形終端はわずかならがに三角波のような波形変形を起こしている。これは Waves L2 と似たような波形変形であり、歪みの原因でもある。

ただし、低域に於いてはこの変形が歪みとして知覚しやすいが、高域になるとほぼ無理。そもそも波形の 1 周期が非常に短い時間の中で起こるので少しの高調波と変調を起こすのみ。

こちらは IRC 4 Modern の波形評価で、IRC 5 と比べて変動がほとんどない。

上図は IRC 4 Modern の波形評価画像であるが、歪みが一定であり、大きいことがよく分かる。また、アタックの先読みが強すぎるため Transient が失われやすい処理である。そのための Transient Emphasis パラメータだよねって話は使う人間ならわかるかな。

ただし、波形の見た目を論じる話で、波形評価は数学的に理解してないと理解できないだろうが、IRC の挙動は限りなく低歪みを達成しているため IRC 4 と比べて IRC 5 は dB 換算で約 2 倍、エネルギー換算で約 7 倍も格段にクリーンに進化している。そのため SoftClip 機能が非常に役に立つ構造になった。

これは結構でかい。SoftClip マジで使いづらかったから。


これはある種の Infinity Ratio と Clipper の複合プラグイン動作。

上図は単に古典的な Infinity Ratio の Limiter と Clipper を内蔵しているプラグインの動作。IRC 5 の動作と似ている。ただし、Clipping の飽和の仕方が異なるので IRC 5 と同じような処理にに見えない人は、ごめんね。波形変形の知識がないと、これを理解はできない。

そしてコチラがまた違う Limiter の動作を見ているが、波形の評価的には IRC 5 とかなり似ている。

上図はおそよ 10 年前に発売された Limiter のダイナミクス状況を表す。初段の Clipping 現象と徐々に信号が元の波形を復元する様子は IRC 5 とかなり似通っているが、後半の波形の先端がわずかに Clipping している。

このため、歪みの評価は圧倒的に 10 年前のプラグインが勝ってしまうが、Algorithm 的には古いため、それを超える恩恵が受けられるか、という話はすべて自分の耳との闘いである。


今までの IRC は Threshold を超えた波形終端の信号に対して、波形変形を行い、Gain 処理と Celling を達成していたのに対して、IRC 5 は昔の Limiter プラグインのような、古典的な Ratio: ∞ の Limiter Algorithm に回帰していると言えよう。しかし、中身はそんな単純なものではなく、非常に高度なものだ。低域では信号が若干ながら三角変形している。

このような動作は Pro-L2 なんかも近い。しかし、Pro-L2 なんかは Lookahead や Attack time と Release Time を制御できるため、できるだけ元の信号を維持しようとする。Algorithm の選択によっては、Ozone よりも圧倒的にクリーンな設定も可能だし圧倒的に Clipping させることも可能。Pro-L2 の再評価がやってきた。マジでちゃんと Pro-L2 を再度勉強しようと思った。Algorithm の選択が難しいのよ Pro-L2 は…

しかし、IRC 5 は歪みの全体評価はわずか 100ms 以下の間に限りなく少なくなるため、クリーンな音だと認識するし、リミッター自体のリダクション量は先に高度な Clipping しているため True Peak 制御のために行われる程度に収束するものと思われる。

色々な資料を見てみると、音響心理的に歪みを知覚する前に歪みを抑える動作をしているため、クリーンな印象を受けるが、測定すると歪みは別に少なくない、ということみたいですね。まぁ、波形変形の画像を見ても、そうだよなって自分は納得できます。

これが IRC 5 がクリーンな印象かつ、そもそも Attack Time 挙動が高度な Clipping によって先に処理されているために、リダクション量をおさえつつも Release Time を柔軟に設定できる。Algorithm の考え方自体は非常に古典的だと思うが、遅延は 48kHz で 330ms 超え、かなりの先読みと自動制御を匠に行っていると理解できる。

つまり、IRC 5 は歪み自体は少ないわけではなく、信号自体にダイナミクスを再度整形させるような仕組みがある。従来のモダン Limiter は入ってきた信号の波形変形を上手に行い、歪みを抑えつつも平均の RMS や LUFS を上昇させることを目的化してきたような製品ばかりであるが、IRC 5 では Compressor の延長となる古典的な Limiter 動作を Algorithm 化しつつ、歪みは瞬間の 100ms 以内に抑え、従来の IRC のような持続的な波形変形を辞めさせている。

そして、高度なマルチバンド仕様のお陰でそもそも最終の Celling セクションでリダクションがかなり抑えられているので、元々の周波数バランスをなるべく崩さないように、信号の RMS や LUFS を上昇することができる。

重要なのは今までの高度なシングルバンド処理 Limiter がマルチバンドでかつ、ほぼ自動で内部的に処理してくれるということだ。遅延は仕方なかろう。もっと言うと、以下のような動作が本当に意味を見いだせる可能性はある。なかなかやらないだろうが…

上図は Pro Tools の機能を理解していないの全くわからないと思うが、PRE に入ってきた信号が 2Mix で Bus Comp と Tape Plugin が Insert してあり、その後に Multi-Band Splitter が Insert してある。

このプラグインは AUX に 4 バンドをスプリットして送れるのだが、各バンドの AUX に Pro-L2 を配置して、バンド別に Pro-L2 を動作、そして Multi-Band Bus から POST の AUX に行き、最終的にシングルバンド Limiter で True-Peak 制御をしている。

正直、なかなか実行しないだろうが、いくつかの場面では先にマルチバンドでダイナミクスを再形成してあげることは悪ではないと思う。「俺ん家の水道蛇口から山岡家出る」のセッションで試してみたが、突き詰めるとめっちゃ効果出た…笑

いいか悪いかはよくわからないが…ただ処理負荷は 4 倍以上になるのでそうそう実行はできないが…

いや、いちいち AUX でマルチバンド処理をしなくても、Impact と Ozone でやればいいじゃん…って話かもしれないが、Ozone や Impactを使わないで同じような動作ができるようになることには非常に意味がある。

つまり、マルチバンドコンプレッサーやマルチバンドリミッターを極めろ、っつー話に収束しちゃうんだけど、いやー難しいっすよ。勉強しまくるしかねぇなぁ。。。

有料記事では Ozone の内部構造について詳しく語っているので、ここでは深く言いませんが、Ozone の Maximazer は 古典的な Clipper と古典的な Limiter の複合 Algorithm によって 0 dBFS まで信号をうまく抑制し、そのあと従来のモダンな Gain 処理と Celling 処理で信号を持ち上げていることがわかった。


今までの IRC に関連する事実関係

IRC 4 では単に音や信号で解析すると、マルチバンドのような処理の振る舞いをする。おそらく、sonible の smart:limit も同じような設計ではないかと思う。もちろん IRC 1 〜3 はシングルバンド処理である。

具体的には各バンドを IRC 4 のアルゴリズムで処理して決めているが、最終的な Limiting Algorithm (Gain 補正) はシングルバンドリミッターであった、ということ。Ozone などの高度なプラグインは内部処理の構造が複雑なため、最終的な Gain 処理はシングルバンド処理であるが、その前の IRC 4 のリダクション挙動はマルチバンド処理であった、ということのようだ。

これはあくまで推測であるが、 iZotope 公式の説明や、いくつかの信号処理のスレッドなど読むと、かなり正しい情報のようだ。


新しい IRC 5 の公式的な情報

いくつか iZotope の公式発表の情報を引用しつつ、情報をまとめていく。

IRC 4 では、最も問題となる周波数成分を抑制し、他の周波数帯域への影響を低減するスペクトルシェイパーを導入しました。しかし、真のマルチバンド設計を導入したのは IRC 5 になってからです。

以前、Ozone の IRC 4 はマルチバンド処理っぽいよねっていう動画をアップしていたけど、実はシングルバンドでした〜って落ちでもある。

この動画ではマルチバンド処理であろうリミッターを紹介した。

そして、いくつかの論文を読んできた。

正直だからなに?っていう内容をここで記載していく。

これは Ozone に使用されている Algorithm の基礎的な内部処理を知るものになる。

  1. 信号全体を解析し、それを元に Peak Level と Momentary Loudness の分布をヒストグラム (表みたいなもの) として作成する
  2. このヒストグラムを使い、True Peak Limiting や Short-Term Loudness Limiting が Integrated Loudness に与える影響を予測
  3. この予測に基づいて、3つの目標値を最適に満たすための全体 Gain を算出
  4. 分析で決定された全体ゲインを適用
  5. その後 Short-Term Loudness を目標値内に収めるために、ブリックウォールコンプレッサーを適用
  6. 最後に「最大限に準拠する(maximally compliant)」True Peak Limiter でトゥルーピークを抑制

という解析論文がある。もちろんこれはリアルタイム処理ができるかどうか、が鍵であり、Ozone はこれを独自の DSP 処理と Algorithm で実用上の低遅延で実行している模様。この論文自体は 2016 年に iZotope の現主席研究エンジニアである Alexey Lukin が著者である。(共著: Russell McClellan, Aaron Wishnick)

こういう内部的な信号解析で Limiter は実現している。

ちなみに Unlimiter の元となった論文も読んできたけど、まぁ、ここでは別の話なので書かない。

IRC 5:Ozone に初めて登場したマルチバンドリミッター設計です。これまでのシングルバンド IRC モードとは異なり、IRC 5 は信号を 4 つの周波数帯域に分割し、それぞれに最適化されたアタックタイムとリリースタイムを設定します。これにより、低周波の影響で高い周波数に生じるポンピングや相互変調歪みが軽減されます。その結果、より大きくてクリーンなマスタリングが実現し、透明度が向上します。IRC 5 はピークレベルに最も影響を与える周波数帯域を優先するため、微妙なトーンシフトが生じることがあります。ただし、これも iZotope のサウンドデザインチームによって慎重にバランスが取られ、キャラクターを保ちながら最大の明瞭度と音量を確保しています。リミッティングが不要な場合、スペクトルは変更されません。IRC 5 は IRC 3 の技術を利用しており、音が人間の耳で認識できる歪みを生じる前に、信号に適用できるリミッティングの速度をインテリジェントに決定する高度な心理音響モデルを使うことで、最も積極的なリミッティングを実現しています。このモードはすべての IRC モードの中で最も CPU 負荷が高く、最も遅延を伴います。

とこのこと。

実際に別のマルチバンドリミッターと音質比較しましたが、おそらくマルチバンド Filter の影響を極端に受けやすい設計 (各バンドで別々の自動動作をする影響) なので、かなり音が Filter 通したときの位相角度のズレの音が聞こえます。ただし、これは楽曲によってはいい影響を与えることがありますが、結構原音から音が変わるため、やはりギークなエンジニアは避けるべき事象が聞こえる、と言うでしょう。私みたいに…

ああ、なるほど、ようやくわかってきた


Ozone 12 の IRC5 の動作を理解すると、そもそも、しっかりとしたダイナミクス制御を Master 前の Bus Compressor と Clipper で行えば、やはり極端な Limiter 処理は必要ないって話だ。そもそも IRC 5 のリダクションはかなり少なくなっていることが動画でもわかっている。

これはマルチバンドでしっかりとダイナミクス整形ができれば最終的なマルチバンドリミットで極端なリダクションはなくてもクリーンでパンチがあり、音のプッシュ感が強い音は作れる、という遠回し的な説明をされた気分だ。結局シングルバンドではどうしても最終の Gain 補完にアタック挙動やリリース挙動が引っかかってしまうために、限界があったんだよって Ozone が答えを言い放ったに過ぎない。

この話は既に 10 年以上前に理解していたが、自分がまだまだ未熟だっただけだ。

つまり、この話は以下の動画の応用の底力を試されるって話で、別に Ozone 12 が必要でもない。ただし、Intelligence に古典的な Clipping Limiter を実行してくれるので、後段のマルチバンドリミッティングAlgorithm が非常に上手く動作しているということだろう。

このチャンネル主は自分でメソッドを公開している。

結局は、コンプレッサーなり古典的なリミッターなりで、ちゃんとダイナミクスを形成してあげてかつ、瞬間的な非常に短い時間の中で Clipper などを使い、更に信号を抑制しつつ、最終的にモダンな Limiter に当てていけ、ということだ。

IRC 5 はそれをかなり高度に処理してくれるが、私は IRC5 の動作概論がわかったので、別のツールで同様の事ができないか模索する旅に出ることにしようと思う。

ああ、最近出た Pulsar Modular の P19 Igloo がドンピシャな製品であることを理解した。ただし、こいつの Clipper はおそらく RMS ベース Clipper なので、Peak Detection Clipper である Standard Clip などをもっと突き詰めるほうがいいかもしれない。

Ozone 12 と IRC5、私に新しい境地を見せてくれてありがとう。

引用元: https://www.izotope.com/en/learn/inside-ozone-12

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  • 書いた人: Naruki
    レコーディング、ミキシングエンジニア
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