アナログ VU メーターを使いこなそう
アナログ VU メーターを作ってもらいましたので、紹介です。
VU メーターの役目
VU メーターはアナログの信号監視をするものです。
基本的にデジタル信号しか扱わない人にとっては無用の産物です。
ただし、アナログ機器を正しく使うための信号監視として使えます。
ですからアナログの VU が必要なのはアナログ機器を使う人です。
もちろん、ミックスのときに使える、といいますが、それは考え方の話で、使えるかどうかはその人次第です。
ですが、電圧の監視、という目的には誰でも同じように使えます。
VU はほとんどの説明で本来の使い方を説明されていないため、必要かどうかの理解ができないという自体に陥っています。
0VU = +4dBu
この数値は見たことがあると思います。
正直、+4dBu というアナログ信号が入出力されているか、を確認する手段が現実的に VU メーターしか音響の世界にないので、みんな VU を使っている、という話です。
もちろん、AD/DA コンバーターの入出力基準を知っている人は Plugin 上の VU メーターからキャリブレーションを行い、デジタル 0VU = +4dBu を定義づけすることが可能な人もいます。これは 0VU = +4dBu = -18dBFS が成り立っているデジタル機器上での話、もしくは、デジタル VU の dBFS を変更して 0VU = +4dBu と定義できる高度な知識を持った人ならデジタル VU だけでも運用自体は可能です。
自分の使っているデジタルデバイスに +4dBu を入力したときに 何 -dBFS になるか把握しているか、という話なのですが、デバイスによってこのレベルがバラバラなので、デジタルの 0VU = -18dBFS を指すデジタル信号をアナログ信号で入出力した場合、電圧レベルが +4dBu であるとは限らない、ということが起きています。
この話は リファレンスレベルの話 という動画でしっかりと解説していますので、そちらを参照してください。
ただし、デジタル機器だけを使った場合、アナログ機器間での信号電圧の監視はできません。一度わざわざ AD コンバーターに信号を入力する必要があります。
ですから VU を使ったほうが効率がいいよねっていう話です。
実際の使い方
これは、ゲインステージング、という 言葉の意味 を知っていないと理解できません。
ですから、最初にゲインステージングの話をしなければいけません。
ゲインステージング
広義のゲインステージングというのは「基準レベルに信号を揃えろ」という話になっていますが、実際にはそうではありません。
実際にはゲインステージングというのは、基準信号値から信号を Hot (Push) にするのか、Cold (Pull) にするのか、という話です。
このときにアナログ機材の信号レベルが Hot でも Cold でもない位置が +4dBu ですよね、っていう話です。
ただ、これはマイクプリに於いては当てはまりません。マイクからやってくる信号は、マイクの種類や音源の違いで +4dBu まで増幅するときに必要以上に Hot になる場合もありますし、全く Pre の Gain に信号を突っ込まなくても良い場合があります。マイクプリ (Head Amp) のみ基本的に例外です。もちろん、ライン信号をラインアンプに入力する場合は異なります。
アナログ機材のマニュアルを読むと公称基準値 +4dBu って書いてあります。
これは、この機材を使うときに +4dBu 入出力で使うと、私の説明する ゲインステージング では スタート地点から始められますよ、という意味です。
この話を厳密に理解するには信号の非線形を理解する必要があります。
アナログ信号の非線形要素
これを説明するためにはデジタルクリッパーを理解している必要があると思います。
クリッパーはある信号レベルに達すると、徐々に信号が飽和 (非線形) し、信号が歪む、という現象が観測されます。
この動作と同じことがアナログ領域で起きます。
大体アナログ機材にも 最大入出力レベル +24dBu みたいなスペックが書いてあることがありますが、+24dBu を超える信号はアナログクリッピングするよ、と考えていいです。
ですからそのような機材に +24dBu 以上を入出力した場合、アナログ信号で矩形します。もちろん、そのクリッピング特性はアナログ機器次第です。
この非線形の特徴がアナログ機材でどのような特性をもっているか、で入出力レベルをシビアに扱う必要があります。
機器のマニュアルに 最大入出力レベル +24dBu と書いてあっても、非線形特性が非常に強いアナログ機材であれば、+12dBu くらいから信号が徐々に歪んでいく可能性があります。そして +24dBu で最大限、歪みを誘発する場合もあるでしょう。もちろん、線形特性が強いアナログ機材もあります。特に高級なマスタリンググレードな機材の場合、アナログ機材なのに線形を維持するヘッドルームが異様に広い、ということもあります。
つまり、各々のアナログ機器の非線形特性を把握していなければ、無難に +4dBu という信号レベルを入出力してあげれば、そこから歪みが多い気がするな、と思えば Cold 方向に信号を引く、もっと歪んだ音がいいな、と思えば信号を Hot 方向に押し込むことをすればいい、という非常に単純な話なのですが、なかなか理解されません。
何度も言いますが、VU メーターを使うだけでは意味がありません。+4dBu という基準を自分でどのように音楽性で利用していくか考える、ということが重要です。
VU はあくまでヘッドルームの確保に利用できるってだけ
前々から常々、言っておりますが、デジタルの VU メーターとアナログの VU メーターは役目が違います。
デジタルの VU メーターは デジタルフルスケールの ヘッドルーム確保 に役に立つメーターで、ミックスなどその他の利用方法に役に立つかは、使っている人の考え方次第です。
アナログの VU メーターは アナログ信号レベルの監視 以外に役に立ちません。もちろん、その監視から得られる情報を使って、各々が利用方法を考えるのであって、VU が何かしら答えを直接与えてくれるわけでも示してくれるわけでもありません。
VU は音では判断しきれない、信号の監視を針の振れ方で視覚的に教えてくれるだけです。この視覚的に得られた情報をどう使うか、はあなた次第なのです。











