アナログ VU メーターを使いこなそう

Learn More
アナログ VU メーターを使いこなそう

アナログ VU メーターを使いこなそう

アナログ VU メーターを作ってもらいましたので、紹介です。

VU メーターは音声信号の平均的な電圧レベルを 300 ms の時間定数で平滑化して表示する平均レベル指示計です。

意味はわからなくてもいいですが、デジタルの Peak 値を見るものではありません。測定法的に RMS に近いですが、RMS ではありません。針の振れ方が聴感上の音量に近いと言われますが、あくまで聴感覚と近い信号の場合は近似するだけで当てはまらないことも多いです。

購入はこちら

動画で解説を見たい方はこちら

アナログ VU メーターの役目


アナログの VU メーターはアナログ信号の電圧を監視をするものです。別に音量というものを表すメーターではありません。

そして アナログ信号の 電圧以外 測定できません。基本的にデジタル信号しか扱わない人にとっては 無用の産物 です。しかし、DTM のインテリアとしては結構重宝 します。

ただし、アナログの VU メーターは「アナログ機器を正しく使うための信号監視ツール」として使えます。(ちなみに監視という日本語を英語では “モニター” という) 

ですからアナログの VU メーターが必要なのはアナログ機器を使う人です。

もちろん『ミックスのときに使えるよ』と言う人もいますが、それは (デジタル VU メーターも含む) VU メーターを利用したミックスの考え方の話で、アナログ VU メーターが実際に使えるかどうか、自体はその人次第です。

ですが「電圧の監視」という目的には、世界中の誰でも同じように使えます。

VU メーターはほとんどの説明で本来の使い方を説明されていないため、そもそも自分に必要なのかどうか、の理解ができないという自体に陥っています。

0VU = +4dBu もしくは 0VU = -18dBFS


この数値は見たことがあると思います。

正直、+4dBu というアナログ信号が入出力されているか、を確認する手段が 現実的に VU メーターしか音響の世界にない ので、みんな VU メーター を使っている、という話です。

「0VU = -18dBFS」という数値は JAPRS (担当者に『ジャプルス』って発音するのよって怒られた) という日本レコーディングスタジオ協会が 2024 年に基準を変更し「0VU = -18dBFS」という基準をみんなで揃えようねっていう話が日本だとあります。まぁぶっちゃけ一般人には関係ない話。

もう少し他の経緯を話すと EBU (欧州放送連合) が「0VU = -18dBFS」を国際放送での基準レベルにしますよ、っていう規定を定めています。アメリカだと SMPTE が 0VU = -20dBFS で運用するといいよ的な記述があって、明確に基準は定めていない。だけど、ほぼ「0VU = -18dBFS」が世界標準だと思ってください。

ただ、これは入力レベル基準がどんな機材であっても、デジタル上の「0VU = -18dBFS」は世界中で統一はできる というメリットがあります。

そして私は YouTube で「0VU = +4dBu = -18dBFS」という話をしました。これは デジタル VU メーターアナログ VU メーター の感覚の統一のために必要な知識だよっていう話をしています。

この話は リファレンスレベルの話 という動画でしっかりと解説していますので、そちらを参照してください。

事前知識がない人はこちらを見ておくとよいでしょう。

もちろん、AD/DA コンバーターの入出力基準を知っている人は Plugin 上の VU メーターからキャリブレーションを行い、デジタル VU メーターの「0VU = +4dBu」を入出力別で定義づけすることが可能な人もいます。

これは「0VU = +4dBu = -18dBFSが成り立っているデジタル機器上での話、もしくは、デジタル VU メーター のキャリブレーション値 (dBFS 値) を変更して 入出力レベルそれぞれで「0VU = +4dBu」と定義できる高度な知識を持った人 ならデジタル VU メーターだけでも運用自体は可能です。

問題はデバイスによっては 最大入力レベル が入力方式や設定によって変動したり、最大出力レベル が最大入力レベルとは違うデバイスが世の中に溢れているので、実は「入力レベル +4dBu」と「出力レベル +4dBu」に於いて、デジタル VU メーターの校正値が変動してしまう ことが多いです。まぁこれが厄介だから理解が難しい。

一例として RME の Fireface UFX Ⅲ で説明すると、コヤツはライン入力レベルが「+19dBu、+13dBu、+4dBu」と三段階あり、それぞれ、0VU = +4dBu の信号を入力すると、DAW 上では順番に、「-15dBFS、-9dBFS、0dBFS」の Peak 値を示します。つまり最大入力レベルを把握していないと、DAW 上のデジタル VU メーターの 0VU が統一できません

ですから、入力信号におけるデジタル VU メーターの値は「0VU = -18dBFS」という値を保持しないと、入力する信号の種類や設定で デジタル VU メーターの値が変動しちゃうよ ってことなんです。でも、どんな最大入力レベルの値を持ったデバイスであろうが「0VU = -18dBFS」というデジタル領域の絶対値は変わりません。これが利点になります。

そして、Fireface UFX Ⅲ の最大出力レベルも実は「+24dBu、+19dBu、+13dBu、+4dBu」と四段階あって、それぞれ「0VU = -18dBFS」という信号をアナログ出力すると「+6dBu、+1dBu、-5dBu、-14dBu」となり、実は「0VU = +4dBu = -18dBFSが成り立つ出力レベルがありません

ですから、皆さんが使う一般的なオーディオインターフェイスでは VU メーターの理解がめちゃくちゃ難しいのです。これは先程説明した通り、「デジタル VU メーターとアナログ VU メーターの値が統一できないから」なのです。プロオーディオ機器で価格が高価なラインデバイスになると、ちゃんとアナログ信号のキャリブレーションが可能で、最大入出力レベルを「0VU = +4dBu = -18dBFSに設定できます。(最大入出力レベルを +22dBu に統一したら可能です。)

説明理解としては「自分の使っているデジタルデバイスに +4dBu のアナログ入力したときに 何 -dBFS になるか把握しているか」、「デジタル VU メーターで 0VU を指すときに、アナログ出力レベルが何 dBu になるか把握しているか」という話なのですが、理解がこんがらがる理由になります。

だって今も説明を文章で聞いても理解できいないでしょう?

デバイスによってこの最大入出力のレベルがバラバラなので、デジタル VU メーターが「0VU = -18dBFS」を指すときのアナログ信号レベルが「+4dBu であるとは限らないということが起きています。だからしっかりと自分の環境でアナログ信号レベルとデジタルフルスケールレベルの統一を考えなくてはいけません。

だからそれを確認するときに アナログ VU メーターが役に立ちますよ、という話で導入をしたほうがいい人はいっぱいいるよね、という話になります。

+4dBu という信号電圧レベルで実際にデバイスに入力されているのか、+4dBu という信号電圧レベルで実際にデバイスから出力されているか、を確認する方法として、アナログ VU メーターが役に立つよ」って話です。 

もちろん、そのちょっとした複雑な計算が頭の中で完結できる人はアナログ VU メーターをわざわざ利用することは無駄だと思うでしょう。

ただし、デジタル機器だけを使った場合、アナログ機器間での信号電圧の監視はできません。一度わざわざ AD コンバーターに信号を入力する必要があります。

ですから、アナログの VU メーターを使ったほうが効率がいいよねっていう話です。(スルー回路を巧みに使う方法があります。)

実際の使い方


これは、ゲインステージング という 言葉の意味 を知っていないと理解できません。

ですから、最初にゲインステージングの話をしなければいけません。

ゲインステージング


昨今の広義のゲインステージングというのは「DAW 上で基準レベルに信号を揃えろ」という話になっていますが、実際にはそうではありません。

そもそも DAW 上には基準レベルの概念がありません。強いて言うなら 0dBFS を超えてはいけない、くらいでしょうか。あとはプラグインによって Headroom オプションがあるので個別で調整できるものには基準値があります。

実はデジタルの領域でも「0VU = -18dBFS」というのもが統一されていません。まぁ、ちゃんとキャリブレーションできるプラグインもあります。いくつかのプラグイン上ではデフォルト値として「+4dBu = -14dBFS」として定義しているものもあります。つまり、そのブラグイン上では「0VU = -14dBFS」ですって言ってるのですが……知らないとなんのことだかさっぱりですよね。

ですから DAW 上でのゲインステージングも一筋縄では行きません。

実際には私が提唱する「ゲインステージング」というのは、基準信号値から信号を Hot に (Push) する のか、Cold に (Pull) する のか、という話です。

このときに「アナログ機材の信号レベルが Hot でも Cold でもない位置 が +4dBu ですよ」っていう話です。

ゲインステージングはあくまで使う機材によって異なる話なんですよね

ちなみに既にゲインステージングについては記事を書いていますので以下も参照してみてください。

ただ、これは実機のマイクプリに於いては当てはまりません。マイクからやってくる信号は、マイクの種類や音源の違いで +4dBu まで増幅するときに必要以上に Hot になる場合もありますし、全く Pre の Gain に信号を突っ込まなくても良い場合があります。

実はマイクの回路自体で歪む場合もありますし、考慮すべき別の要因が複数絡むため、マイクプリ (Head Amp) のみ基本的に例外です。もちろん、ライン信号をラインアンプに入力する場合は異なります。この場合はゲインステージングは必要です。

アナログ機材のマニュアルを読むと大体の機材には「公称基準値 +4dBu」って書いてあります。

これは、この機材を使うときに +4dBu 入出力で使うと、私の説明する ゲインステージング では スタート地点から始められますよ、という意味です。

この話を厳密に理解するには信号の非線形を理解する必要があります。

アナログ信号の非線形要素


これを説明するためにはデジタルクリッパーを理解している必要があると思います。

クリッパーを理解するための動画

クリッパーはある信号レベルに達すると、徐々に信号が飽和 (非線形) し、信号が歪む、という現象が観測されます。

これは 非線形系の関数モデルを理解しろ という話で、この話も歪みの記事を書いているので理解したい人はお読みください。

この動作と同じことがアナログ領域で起きます。

大体アナログ機材にも 最大入出力レベル +24dBu みたいなスペックが書いてあることがありますが、+24dBu を超える信号はアナログクリッピングするよ、と考えていいです。

ですからそのような機材に +24dBu 以上を入出力した場合、アナログ信号でもしっかり矩形します。もちろん、そのクリッピング特性はアナログ機器次第です。

この非線形の特徴がアナログ機材でどのような特性をもっているか、で入出力レベルをシビアに扱う必要があります。

機器のマニュアルに 最大入出力レベル +24dBu と書いてあっても、非線形特性が非常に強いアナログ機材であれば、+12dBu くらいから信号が徐々に歪んでいく可能性があります。そして +24dBu で最大限、歪みを誘発する場合もあるでしょう。

もちろん、線形特性が強いアナログ機材もあります。特に高級なマスタリンググレードな機材の場合、アナログ機材なのに線形を維持するヘッドルームが異様に広い、ということもあります。

つまり、各々のアナログ機器の非線形特性を把握していなければ、無難に +4dBu という信号レベルを入出力してあげれば、そこから「歪みが多い気がするな」と思えば Cold 方向に信号を引く、「もっと歪んだ音がいいな」と思えば信号を Hot 方向に押し込む、ということをすればいい、という非常に単純な話なのですが、なかなか理解されません。

何度も言いますが、VU メーターを使うだけでは意味がありません。+4dBu という基準を自分でどのように音楽に利用して適応していくか考える、ということが重要です。

これはデジタルプラグイン上でも同じことが言えます。各種アナログモデリングのマニュアルを読み「+4dBu = 何 dBFS と定義しています」などの説明文を見つけることで、プラグイン上でのゲインステージングを設計者の意図通りに行うことができます。

VU はあくまでヘッドルームの確保に利用できるってだけ


前々から常々、言っておりますが、デジタルの VU メーターとアナログの VU メーターは役目が違います。

デジタルの VU メーターは デジタルフルスケールの ヘッドルーム確保 に役に立つメーター で、アナログの信号監視には 直接的に利用できません。ミックスなどその他の利用方法に役に立つかは、使っている人の考え方次第です。

アナログの VU メーターは アナログ機材の ヘッドルーム確保 に役立つメーター で、アナログ信号レベルの監視 以外に役に立ちません。もちろん、その監視から得られる情報を使って、各々が利用方法を考えるのであって、VU が何かしら答えを直接与えてくれるわけでも示してくれるわけでもありません。

VU は音では判断しきれない、信号の監視を針の振れ方で視覚的に教えてくれるだけです。この視覚的に得られた情報をどう使うか、はあなた次第なのです。

POST DATE:
TAGS:
  • NK Productions
  •                
  • 書いた人: Naruki
    レコーディング、ミキシングエンジニア
    お仕事のご依頼詳細は こちら から
    ミックスレッスンの詳細については こちら から
Contact Form






    SNS Share
    Related Posts