ついにマスタリングの魔法にたどり着く… Pulsar Modular – P440 Sweet Spot 【日本語マニュアルPR】

Learn More
ついにマスタリングの魔法にたどり着く… Pulsar Modular – P440 Sweet Spot 【日本語マニュアルPR】

ついにマスタリングの魔法にたどり着く… Pulsar Modular – P440 Sweet Spot 【日本語マニュアルPR】 

やぁ、みんな。久しぶりかな?

正直、めちゃくちゃ感動しながらこの記事を書いているよ。

僕は Mastering については Mastering のエンジニアじゃないから全くわからないし、全然語ることもできないのだけれど、私自身が Mastering の魔法というものを語るのは非常におこがましいと思うし、信じてはいるんだけど、実際、Mastering で劇的に 2Mix が変わった、良くなった、魔法が加わった、と感じたことは実は個人的には無いんだ。

それは自分の実力が無いからだ、と、わかったのはごく最近のこと。

というか Mastering に関しては、お門違いというか、お家違いというか、エンジニアが何を行っているのか、サッパリわからない。これは Mix をしている自分には見えないストーリーやイメージが Mastering エンジニアには見えていて、そこに到達するために、色々調整してくれるもので、簡単に言うと、相手の頭の中身はなかなか見えてこない、ということだ。

例えば、小説を読んだりする人は多少この感覚に共感してくれると思うのだけれど、小説の場合、作者の頭の中がめちゃくちゃ見える作家がよく名作なんかを書いている印象です。砂の女とか蟹工船とか。

これは非常に一方的な解釈と意見だけれど、 Mastering とはエンジニアの頭の中がよく見えるマスタリングが最高である、ということだ。ただし、 Mastering エンジニアの頭の中のイメージが音で見えるということは、Mastering エンジニアと同じ高みに行かなければいけないわけで、自分は本当に遠い存在だと感じていたのが Mastering エンジニアの境地です。

しかし、ちゃんと集中して知覚できる感覚が身につけば自ずと答えが見えてくるのだと今回実感できた。

簡単に言うとマスタリングの魔法が実際にどのように元の 2Mix から変化しているのか、が理解できないから、マスタリングの魔法というもの自体の認識が難しいんだと感じる今日この頃。やっとマスタリングエンジニアが振るう魔法の鱗片を見ることが出来たので、それを今回は紹介しよう。

今回、全面的に Pulsar ModularP440 Sweet Spot の日本語マニュアルの翻訳を担当したのでその PR も兼ねてお話していきます。

Pulsar Modular を知らない人のために 


Pulsar Audio というプラグインメーカーは知っていても、Pulsar Modular を知らない人は多いと思います。Pulsar Modular は 2015 年にシンセサイザー製品 (P900) を市場に投入しており、Pulsar Audio は 2017 年に Echorec を発表しています。Pulsar Modular のほうが実は製品発表は早く、特にこれと言って関わりがあるわけではない。ちなみに Pulsar Modular の拠点はトルコで Pulsar Audio はフランスで立ち上がっています。(ややこしい)

Pulsar Modular の製品群は基本的には現在主流の DSP プラグインとは考えが異なります。最近のプラグインのトレンドは ML、DL、AI でしょう。ただ、これらはアルゴリズムやニューラルネットワークを用いて開発しているもので、実際の挙動が AI 的に振る舞う、というよりは常に計算し続けて最適化するみたいなものが多いです。

Pulsar Modular は古典的、またはモダンな DSP 処理や最近のプラグインのようなモデリングに関連するものとは少し毛色が異なり、どのように固定概念や既定路線を破る発想と思考に至るか、という、かなり哲学的な側面を持つプラグインを発表しています。

私も P11 Abyss と P42 Climax のレビューをしているので時間がある方は是非お読み下さい。

Mastering への布石


この P440 Sweet Spot という EQ の開発の道のりを端的に紹介します。

まず、皆さんに Robb Robinson さんを紹介する必要があります。彼は Mark ‘Robb’ Robinson といい、グラミー賞受賞経験もある、アメリカ、ロサンゼルスのオレンジカウンティーでマスタリングスタジオ Robinson Mastering を経営しているエンジニアです。

彼のキャリアは 20 年以上あり、カスタムの Knif Mastering Console を利用している人です。そして、私がゴリ押しされて購入してしまった Ghost Cable の創設者の一人でもあります。ただ、今回の P440 によって、彼は Knif Soma EQ の売却を検討している、または売却した、との噂を聞きました。

そして開発者の Ziad Sidawi さんの哲学も知る必要があります。彼の目指すべき到達点というのは、完全なアナログモデリングを作ることではなく、既存のアプローチとは異なる方法でハードウェアの代替となるプラグインを製作することです。

Pulsar Modular のプラグインの音は、最初に述べた「文豪の頭の中を覗ける作品」と同じように彼の音楽やオーディオへの哲学を感じるプラグイン郡です。もちろん全てを肯定するわけではありませんが、彼の設計思想を理解しないと、P440 もどう使っていいのか、サッパリわからない EQ となります。

この EQ は Pro-Q3 や Kirchhoff EQ のような、高い視認性と操作性を持ち合わせた EQ ではなく、新しいアプローチを取り入れた、非常に視認性が悪く、目的の音へ到達するための優れた操作性は持ち合わせていません。

なぜなら、それらのユーザビリティが存在すると、視覚情報ばかりを気にして音に集中できないから、という至極真っ当な設計概念の元に成り立っているからです。音に関してもそうです。彼の音響思想を理解できないと、全てのパラメータへの理解が難しく、使いこなせない = 使えないプラグイン、のレッテルを貼る原因になります。全てはあなたの許容次第です。

ちなみに Robinson さんとはケーブルを買ったときに少しお話をしました。また、Ziad は普通に仲のいいおっちゃんって感じの人です。良くメールをくれます。大体、日本に関連する事柄でですけど。

簡単な製品紹介


ぶっちゃけ、マニュアルを読んでくれ、ってレベルでマニュアルと同じことしか書けないのだが、各パラメーターを見つつ、どのようなワークフローに取り組めばいいのかのヒントをさらっていく。

最初に断っておく。このプラグインは別に数学的な特性は全く良くない。もちろん Linear Phase EQ でもない。位相は他の精度の高いプラグインと比べたら古典的な EQ と同じで普通にぐにゃぐにゃするし、もちろん下手な事すれば音像は余裕で崩壊する。

このプラグインはそういったスペック厨さんバイバイな EQ であるため、そういった硬いというか正確な制御を EQ に求めている人は別の EQ 使いましょう。DMG Audio とか MAAT Digital とか。僕には難しすぎて逆にまだ手が出ないのがあっち系の EQ ですね。というか、Master に EQ が必要なのか分からないレベルの人間なので。

もちろん、サージカルと P440 のような甘い EQ はまず用途というか考え方というか、全てにおいて真逆を行くような EQ なので、開発に関わった Robinson さん自身も Dynamic EQ と P440 の併用がワークフローにおいて今のところはベストだって言ってるかな。

(Mix で完成していると思い込んで Master EQ をサボりたいだけだし、Master EQ は Mixing Engineer はできないのよ、Master のバランスのそこでストーリーが出来上がっているから Mastering でさらなる重み付けって思考的に既にキャパオーバー。)


簡単な開発経緯

P11 Abyss に付いていた Internal EQ と Sidechain EQ を覚えているだろうか。

自分も「この EQ すげぇいい感じで Shelving してくれるなぁ〜もっと自由度あったらいいなぁ〜」なんて思っていたんだけど、同じこと思っていた人がいたんだ。そう、Robinson さんだ。

Robinson さんが、P11 Abyss の EQ を元に EQ を開発したらどうか?と Ziad に持ちかけて開発が始まりました。目標は Robinson さんがハードウェアと遜色ないと感じるプラグイン EQ を作ることでした。

Low End Section


なんとなくこの P440 は 3バンド EQ に上下のフィルターがついているのかな? と UI をパッと見た感じだと思うだろう。

しかし実際には、そうでもない。考え方によっては 9 Bands EQ にもなる。Low End に 3 つのバンド、High End にも 3 つのバンド、そんな感じで考えられる、ややこしい。ただ便宜上は 3 Bands EQ だ。

そこで、各セクションの哲学を一通りさらう必要性がある。これらは正直、ただプラグインを購入して起動しただけでは、この EQ が何が出来て何が言いたいのか分からない部分が多い、のでちゃんとさらう。


High Pass Filter

正直言おう。マジで直感的ではないスライダーであるため、操作に慣れるまでが、難しい。そういう設計になっているんだ。使いづらいからこそ、音に集中できるという、なんとも逆説的な設計…

画像を見てくれ。

赤色で囲った部分が HPF だ。

「真ん中のツマミじゃないんかい!」

って突っ込みたくなるだろ?

しかも数値すら表示されない。

数値はちっちゃい VALUE インジゲータにしか表示されない。

とにかく、数値や既存の UI の機能美というものを壊しにかかってくる EQ なのだ。視覚優先で使うことができないから音に集中するしかなくなってくるという。目や手癖で EQ しようとすると、些細な変化しか起こさないこの EQ の場合、ツマミを動かしても違いを知覚できない場合が多いので、必然的に集中せざる負えなくなるのだ。これは本当にトップエンジニア層でなければ付き合いきれない人が続出するであろう設計である。

フィルター自体も普通のフィルターで設計自体は特に変哲もないものなのだけれど、周波数の調整が非常にシビア。もちろん位相は狂う。特に特徴はないので Plugin Doctor では見ないけど、周波数の微調整がかなりシビアなことだけは伝えておく。

自身のローエンドモニター環境に左右されるので、かなり上級者向けの説明になるが、30Hz までは十分聞こえ認識出来ている環境での使用を前提とした使い方を説明するが、HPF のスライダーを動かして音に変化があるところから少しだけ戻す。その後 TREMOR や LF SHELF をさわる。

その時、RES のツマミを + 側に動かしてポイントを探り、見つけたら RES を自分の納得できる音に落ち着くまで下げましょう。RES のイニシャル位置が通常の 12dB/oct になって、マイナスに振り切ると 6dB/oct と同じスロープが得られるとのこと。

または、ローエンドのタイトさや、押し出し感が出るような周波数までツマミを動かす。その後 TREMOR や SHELF ツマミを動かす。

これが基本の使い方になるでしょう。


TREMOR

このツマミも単語からでは意図も意味もわからない。実際の動きも一応確認しつつ見ていこう。

Freq – 10.79 Hz、Gain – 30.8% の時の解析図。

こんな感じ。特にこれと言って測定しても何も感情は湧いてこない。

まぁ、これは極低域のプッシュ用 EQ Band だと思っていいと思います。が、とにかく音を聞いて調整してください。なんとなく数値を頼って EQ しても全く決まりません。

本当に些細な Low End のディティールや解像度、奥行き、次元、はたまたワイド感、など本当に総合的に自分でいいと思うように調整出来ない場合は機能を OFF って下さい。

当たり前ですが、適当に EQ すると普通に Low End 崩壊します。

Gain を上げて、ローエンドに影響を与える周波数をみつけたら Gain を心地よいバランスを得られる場所まで戻しましょう。


Low shelf

非常に独特の設定方法を取る Shelving 回路。

とにかくツマミを見ても理解できない。つまり、とにかく触って音が変化することを知覚しろ、という強い意思しか伝わってこない。

この LF SHELF ですが、とにかく、決められた周波数とシェルビングカーブにステップするのですが、数値が 1 〜 12 という表記で、もはや周波数すら教えてくれない。「耳で決めろ」と Ziad が囁いてくるのだ。

一応 Fine-tune FREQ のツマミがあるので微調整は可能なんだけど、もはや必要ないレベル。この FINE TUNE 機能はアナログステップの感覚にプラスしてデジタルの微調整ができるよっていうハイブリット設計の概念が見えないと使い勝手も見えてこない。

高級マスタリング EQ は基本ステップノブであり、周波数もブースト/アッテネートの値は固定で、これらは設計者の意図が介在する。これに FINE TUNE 機能でハイブリット設計の補佐をさせるということだ。非常に高いレベルで考えられている EQ であり、残念ながらとにかくただ使ってみるだけでは価値を見いだせない場合が多いかもしれない。

下に矢印があるのですが、シェルビングする帯域を変化させることができる。

このステップ式のシェルビングノブは全ての特性が異なるため、いちいち Plugin Doctor でそれぞれの特性を見せることはもはやナンセンスであるため、気になる人は買って見て、自分で検証することをおすすめします。

とにかく触って変化を知覚して、いいか悪いかの判断は最終的に自分の耳に聴け、スタイルを地で行く EQ ですので、知覚が出来ない環境や自分の感覚では変化を捉えられないという人は、この EQ で修行するというもの手ではある。

数値 6 の位置がニュートラルというか真ん中みたいな扱いなので 6 を基準に考えてもいいみたい。


BAIS

この BIAS ツマミはおそらくノイズというか歪みのトーンバランスが変化するツマミだと思いますが、非常にこの EQ の根幹というか心臓部になるツマミです。

実際に使う場合、SOUL や O2 のパラメータを考慮しなくてはいけないので、そのときに補足しようと思う。

Ziad 曰く、ステレオの奥行き表現に関連するツマミなので、とにかく耳で聞いてスイートスポットを探すことを怠らないでほしいとのこと。


TIBO

TIBO は最新 Ver 1.1.1 で追加されているツマミで、Ver 1.0.0 のマニュアルにはまだ説明がない。

これは Low End フォーカスのための一つのアプローチを提供してくれる。

最近の Low End へのアプローチとして、Mono-Make が上げられる。Gear Space でもこの話題がちらほらでており、P440 でも Low End Mono へのアプローチが欲しいというユーザーがいた。実際にこのツマミは M / S の関係性になにか影響を与えるわけではなく、Side 信号に変更を加えること無く、Low End のフォーカスを調整するというツマミだ。

触ってみてほしい。全く難しく、そして繊細である。

Ziad 曰く、位相に関連したツマミで上手くスポットを見つけると、非常に豊かで Bottom Center を実現できる場所が見つかるはずだ、ということ。

Bassline Pro に逃げたくない私にとってこのツマミは非常に自分の力を試される機能だ。


SAT

お好みで、重み付けの調整ができるツマミだと思っていい。ザラつきの調整?

おそらくノイズ系のツマミだけれど、未だ自分でもその効果のほどはわかっていない。

Shift + クリックで ON / OFF が切り替えられるので、ツマミを動かして耳で違いを感じるしかない。

うーん、これが Mastering の世界だ。自分が恥ずかしくなってくる。

Band Section


メインとなる 3 Bands セクションだ。

別に特にこれと言って語ることはない。要はアナログ機材でスイートスポットを見つけるときと同じ使い方をすればいいだけなのだが、まぁ難しい。この EQ はとにかく変化に乏しく、極端に設定すれば、容易に音像が崩壊するからだ。壊れた EQ みたいな音がすると評しているユーザーも入るくらいだし。

SONTEC かな。おそらく UI のモデルデザイン元。

3つの Q プロポーションと可変 Q 動作が特徴。スタイルというべきなのかプロポーショナルと呼ぶべきかは非常に翻訳時に難儀して、なるべく直訳がいいかなって話し合ってプロポーショナル Q と訳した。

数値 3 の特の Q 特性。良くある、なだらかな Q 特性

dB の数値が低いときは低い Q 数値を維持するような EQ で、dB 数値を上げていくと…

数値 12 の時の Q 特性。いわゆる探索用というかスポットを見つける時に使う感じ。

だから基本は 6 以上には設定しないんじゃないかなって思う。その辺は全ては使う状況と素材によるので…

これらの dB 調整と Q 調整も FINE TUNE 機能がある。先程も語りましたが、高級マスタリングハードウェア EQ は全てのノブが開発者が決めたステップ位置なのでユーザー側でその微調整は出来ない。P440 も周波数も dB ステップ範囲も固有の値が設定されており、アナログ機材のその設計概念を踏襲していますが、デジタル EQ なので微調整も可能であるオプションがついているよ、ということ。

あまり語ることはない。とにかく自分のイメージに到達するために時間を掛けてツマミを触るだけだ。こう考えると両手でツマミを触れるアナログ機材の優位性が非常に理解出来ると思う。絶対アナログの方が仕事は早い。ただ、調整できない範囲も多いってことだ。

いい忘れていた、メインのバンドセクションは有効にするだけで、若干変化を及ぼすので、ON / OFF だけでも変化を感じ取れるように慣れるといいだろう。本当に些細な違いなので、プラシーボを感じてくるはずだ(笑)

High End Section


とにかく個人的に難しいのが High End Section だ。

一番むずかしい。すぐに音像が崩壊する原因は 3kHz 以上の EQ がめちゃんこ難しいからだ。

とにかく理解し、自分で耳で違いを感じて、この EQ を使いこなそう。安い製品じゃないので、機材と会話して向き合うことが大事で、わからないからポイ、ではいけないのだと心底感じさせる EQ だ。私はデジタル EQ を購入したはずなのに、なにもこんなにアナログ機材と対話している気分になっているだろうか、恐ろしや、P440。


Low Pass Filter

まぁ、普通の Low Pass Filter です。もちろん位相は回転します。

特に変哲もない Filter ですが、動作周波数によって最大周波数が変わるのが一番の特徴ではないでしょうか。

緑色のライトが光っているときに有効になります。

RES のツマミも付いていますが、HPF の RES と同じ動作をします。通常が 12dB/oct のスロープで最大ナローが 6dB/oct と同じようなスロープになります。

LPF の使い方は全くわかりません。それくらい使ったこと無いです。それはもちろん自分でミックスの時点で High End に対する処理というかバランスというか表現は完了しているはずだからです。

あえて使うという場合、Oversampling するか、LPF を使うか、の選択なのでしょうか。このあたりは本当に本職の Mastering エンジニアに聞いてみたいです。OS を利用せずに LPF で好みのフィルターを作って実行する、的な。

そう考えていくと Mastering の作業自体は 高サンプルレート がやはり無難なのだろうなぁっと勝手に思っておきます。はい。


High Shelf

先にこちらを解説します。SOUL と O2 は後で。

SCALE のツマミはまだ未実装なので、追記の可能性があります。

これも Low Shelf と同様、数値が 1 〜 12 でステップ式に決められた周波数とカーブで調整されます。

とにかくツマミの位置と数値を気にせずに音にだけ集中して変化を聴きましょう。なんか仏門に入ったような気分だ。悟りを開くまで EQ を触り続けろ、そんな気分。

こちらも FINE TUNE 機能があるので、自分でハマった場所を見つけて微調整も出来る。1〜 12 で 6 が全部の VALUE のニュートラル値というか中央値らしいので、1 〜5 のときは GAIN を上げて、7 〜12 の時 GAIN を下げるようなチュートリアル的なワークフローだけは覚えておくといいかもしれない。

下の矢印はシェルビングの帯域を変更できるが、詳細は自分で Plugin Doctor で見てくれ、別に帯域の情報を知っているからと言ってこの EQ にとってはその情報はおそらく役に立たないことが多い。とにかく微調整にとって煩わしい FFT Graph や曲線表示はしたくないという、配慮なのか強気のというか、意思しか感じないのが、また。癖が強すぎるので自分も愛したくなるという。

SOUL、O2、TX、OS、Dual Mono、HW、MOD


さて、このプラグインの確信設計へ踏み込んでいく。

もう、ここはとにかく触って感じてくれ、としかいいようがないのだが、とにかく感動する挙動を見せてくれる。もちろん容易に崩壊もする。

EQ はそこそこちょこっと触ったら、とにかく SOUL と O2 を徹底的に調整することだ。そしてその時に BIAS も一緒に微調整が必要!

OS は常時入れっぱなしでいいでしょう。

最初に OS と Dual Mono と MOD のボタンを有効にしてから他のツマミを調整しましょう。これは私のワークフローなので別に遵守する必要はありません。

Dual Mono 恐るべし

かなり調整は大変なのですが、駆け足で見ていきます。

とにかく、SOUL と O2 は意図通りに調整しなくていけない。

これは高調波に影響するもの、つまり歪むのだが、これらを調整しつつ、BIAS と MOD と Dual Mono が噛み合うととんでもない効果を発揮する。まるで実機。本当に。

あとで、自分が行ったミックスの見本みたいなもの上げるので効果を感じては欲しいですが、まぁ聞いてもわからんもんはわからんでいいです。

これらの調整はもう、本当に自分との戦いなので、頑張って調整を覚えてほしい。とくにこれと言ったワークフローはないが、OS、MOD そして Dual Mono を有効にして、SOUL を調整したあとに O2 を調整、TX の調整と HW の吟味。

SOUL と O2 は 25% 以内の調整でも変化の幅が大きいのでとにかく集中するしかない。

TX は Low End の特性に変化が出ますが、こちらも些細な違いなので、とにかくポチポチして吟味。右クリックで前のパラメータに戻れるので、クリックと右クリックで精神統一しながら設定を吟味しよう。

HW は Dual Mono に多分影響するとおもうのですが、とにかく違いを知覚して、そして吟味。とにかく全てが些細な違いなので、自分との戦いが多いのだ。多すぎる。まさに千日回峰行。

MOD は回路特性が付加されるようなボタンらしいんだけど、もう ON でいいよ、ってレベルで ON にしたままです。そして、Dual Mono こいつが最高にいい味を出す。

まぁ、よくわかんないと思います。一応以下にサンプルを置いておきますが、違いがわかんなくて当然です。が、なにか違うと感じてほしいです。千里の道も一歩からです。

マスタリングサンプル


今回、マスタリングサンプルをご用意いたしました。

元音源はこちらです。和田さん、許諾とご協力をいただきまして誠にありがとうございます。

TuneCore

マルチトラックデータが以下で購入出来ます。
こちらから

こちらのマルチトラックデータで自分でミックスした音の Mastering 前と後を用意しましたので載せておきます。なお、YouTube の使用上 Wav での再生ができませんので、エンコードされていること前提でお聞き下さい。

念押しいたしますが元 Mix とは違い、マルチトラックから私が ReMix した音源で検証しています。


P440 Sweet Spot 使用前

こちらは原曲の LUFS 値と同じ用になるように Limiter の設定を行った P440 を使用しない Mastering Version です。Master には Limiter だけ利用しました。

なお、YouTube は自動で Loudness が揃えられるので、あくまで数値は補助的な情報開示です。

聴き比べを行う際は、リラックスした状態でかつ、できるだけ良い視聴環境でお聞き下さい。差異は非常に小さく、モノラルで視聴してもその些細な違いを感じることは出来ません。

EQ 前。ステータスは同じような Dynamics になるように調整したという意思表示で意味はあまりない。

P440 Sweet Spot 使用後

Limiter の前に P440 を使用しただけです。それ以外は一切利用していません。

ちなみに 原曲音源の LUFS 値 が Intergrate -8.7 でしたので、調整して -8.7 で合わせましたが、数値に意味はありません。ただし、YouTube 上で原曲音源と聴き比べる必要はありません。Mastering 元 2Mix が違いますので意味をなしません。

EQ 後、YouTube で聴く限り、音量差は無いはず。
別にこの設定に意味はなさない。

とりあえず、情報として EQ のスクリーンショットを置いておきます。

この値は私がこの Mix に対して合わせたもので、参考にはなりません。すべては 2Mix で変動します。

ちなみに Before の Mix のほうがヘッドフォンやイヤフォンで聴いた場合、まとまりがいいと思いますし、自分の Mix の傾向がよく出ています。After の音源はスピーカーでの視聴環境でかなり良い悪いの好き嫌いが出そうな音に仕上がっています。


聴き方

原曲音源とは異なる表現をしています。この Mix が好き嫌いの判断基準で聴かれても意味はありません。趣旨は P440 でどれだけ Master にどのような違いが生まれるか、です。

Low End の聴き方は少し難しいです。が、雑味がどう変化しているかを感じて下さい、少しセンターにボトムが着くような感じがあります。Bass に該当する帯域は元々エネルギーがすくないので、EQ による倍音構成の変化を感じて下さい。

Mid Range はボーカルの聞こえ方に注目して下さい。聴いている Converter に左右されることは間違いないのですが、ボーカルの位置や微妙な 3 次元的な空間の把握をしてみて下さい。少し押し出しているので表現の位置の変化を見てみて下さい。

High End はわりとわかりやすいと思います。これらは Shelving と SOUL、O2 によって強く刺激されました。特に自分はボーカルの De-Ess をしていないので倍音の出方が強くなっていることと少し刺さるような音になっている事を感じて下さい。

最後にステレオの違いを感じて下さい。非常に些細な違いですが、これらの違いを大きく取るのか、全く考慮しないのか、はあなた次第ですが、プラグインでこの微妙な違いを生み出すことができるようになったことが非常に大きな躍進だと思います。

最後に


P440 Sweet Spot ですが、日本語マニュアルが公開されました。

今回のマニュアル翻訳ですが、監修させていただきました。

最後に Robinson さん、Ghost Cable ありがとうございました。

Ziad、素晴らしいデジタルプラグイン EQ を開発してくれて、ありがとう。

POST DATE:
CATEGORIES:
  • 書いた人: Naruki
    レコーディング、ミキシングエンジニア
    お仕事のご依頼詳細は こちら から
    ミックスレッスンの詳細については こちら から
Contact Form






    SNS Share