【日本最速?】AMÁRI レビュー&解説 【Antelope Audio】
皆さんは、Zodiac Series、Eclipse 384、Pure2 という名機達をご存知だろうか? このサイトの視聴者のほとんどの方が全くと行っていいほど知らないでしょう… 現代マスタリングにおいてその名を知らない人は、なかなかいない、というレベルの代物です。
特に Zodiac Series は一般のオーディオファン向けに作られた製品だったのですが、そのフラットな特性と音質が非常に評価がされ、マスタリングエンジニアの間で瞬く間に評判となりました。
基本性能としては DAC だったので DA コンバータとして広く使われた製品でした。AD まで搭載したものもありましたが、おそらくほとんどが DA 目的で使用された製品だとは思います。AD はアップサンプリングに使用されたていましたね。
そして、2011年に Antelope Audio 初の業務用 AD/DA Converter の金字塔、Eclipse 384 が発売されました。当時の販売価格は 約100万円。ただしこれも大ヒット。特に評価された部分はリファレンスレベルのクロックを 2つ 搭載し、AD と DA でそれぞれ異なる動作周波数で動かすことができたこと。
この機能により、Eclipse 384 の DA と AD でマスタリングが完結するというシステムの構築が可能になったことです。なんにしてもその音の良さは半端じゃない。(AES/EBU などデジタル信号出力は別の機器を使用する必要はある)
そしてその後継機として 2015年 には Pure2 をリリース。これはマスタリング AD としての能力が凄まじく、独自のオーバーハンドリング機能でクリップしない AD を実現していました。実際に本当に多少突っ込み過ぎた、と感じてもデジタル領域でクリップしない、不思議な AD です。つまり過度なリミッティングを防ぐことができました。
また、単体クロックと同じモノを 1系統搭載 していましたが、なんと 8つ に分岐可能という、一風変わった、マスタリンググレードクロック AD コンバータでした。
もちろん、この 3種 の コンバータ は現役であり、国内の大手マスタリングスタジオでは、現役で可動しています。知り合いのマスタリングエンジニアの 6〜7割 が Antelope ユーザーです。
大体商業スタジオにいくと、10M と Trinity のクロックセットを見つけることができます。クロックと言ったら Big Ben か Trinity か。そんなところですね。
AMÁRI
AMÁRI は Zodiac のリファレンスモニター用の DAC の性能と、Eclipse 384 や Pure2 の マスタリングコンバータ としての能力を併せ持つ、ハイブリットなインターフェイスです。
サイズは 2U の高さがありますが、幅はハーフラックサイズでもありません。マウントアダプターは今の所出る予定はないそうです。(公式に聞いた限り)
独自の 8 DAC 構造
AMÁRI の特徴はなんといっても、その独自構造にあります。
今までの DAC は Dual 構造、つまり LR にそれぞれの DAC チップを使う構造は高級機ではよくありますが、この AMÁRI は、なんと 8 DAC 構造を採用しています。LR それぞれ 4つずつ、合計 8 DAC チップです。
ダイナミックレンジは驚異の 138dB ですが、ダイナミックレンジが良けりゃ音がいいってわけでもないのは、ここにいる人なら理解できますね。ただ、世界中どこに行っても、ハイファイオーディオ層っていうのはスペック厨だらけなんです。そんな人達も納得させる設計をしています。
ゲームチェンジャーなネガティブインピーダンス機能
私が一番驚いたのは、このヘッドフォンアンプの独自の機能です。
理論上は、抵抗が 0Ω なことが理想ですが、いろいろな理由により、大体ヘッドフォンの出力抵抗は高級機になると、高級なヘッドフォンに合わせて割と高インピーダンス仕様になっていたり(これは古い製品独特仕様)、最近は低いものでも 1Ω、0.1Ω などで、0Ω を採用している、もしくは設計しているメーカーは今までありませんでした。
AMÁRI は 17Step の可変インピーダンス機能があり、これはヘッドフォンのマッチングを考えてる機能なのかもしれません。また、0オーム (-0.3Ω) から -4.6Ω のネガティブインピーダンスの設定が可能です。
これはヘッドフォン音質に与える影響もありますが、一番はヘッドフォン別で電圧のばらつきがなくなる、ということがメリットに挙げられます。詳しくは知りませんが理想的らしいです。また、AMÁRI のヘッドフォンドライバは今まで自分のヘッドフォンの活かしきれていなかったポテンシャルを発揮します。非常にびっくりしました。安いヘッドフォンが活き活きと動きます。
使い始める前に
Antelope 製品は登録作業を終えないと、デバイスに Please Activate って表示されて使えません。このあたりは保証期間の証明とセカンドハンドへの配慮があると思われます。まぁ現代であれば普通かな。ここで挫折する人たまにいるけど、そういう類の人は海外製品を買わないほうがいいと思う。基本のサポート体制は英語だ。
ただ、なぜか日本語のサポートには特別対応しているし特別ページもある。ちなみに英語サポートページより詳しいこと書いてあるw ので最初から頼り切りで買うのもあり。メールか電話で助けてもらおう。リモートサポートもあるので全部代わりにやってもらうこともできるぞw
Antelope Audio のページに行って 右上 にログインページあるので入る。アカウントを持ってなければ Create Account で作ってね。このあたりは普通のよくある作業だからここで挫折する人は素直にサポート任せるか、販売店に聞く。普通は販売店がサポートしてくれるはずだからね。
全部英語だけど、今の時代、英語読み書きできないと結構死活問題だと思う。私は英語の成績なんて常に赤点ギリギリだったのに今じゃ英語ベースで仕事しているので、なんとかなるもんだよ、言語なんて。
製品をコンピューターと繋ぐ
アカウント作ったら AMÁRI と iMac を繋ぎました。Windows 10 でも MacBook Air でも ベース OS が対応していて、USB3.1 Gen1 に対応してればどんなコンピューターでも動くはず。
ダウンロードセクションから Antelope Launcher と Driver を入手。これも英語読めなくても入手方法わかると思うけど、AMÁRI の製品ページに入手先が書いてあります。
ドライバーを入れて Antelope Launcher を起動すると初回起動時はいろいろ通知があります。とりあえず、右下の赤い UPDATE 押しておけばいい。10分くらいセットアップに時間がかかるので待つ。
アップデートが終わったのになんにも変化がない場合、セキュリティ関連で引っかかっている可能性あり。とりあえず Antelope Launcher 再起動かな。ドライバーや OS の最適化を忘れずに行おう。
そのあたりはサポートページに詳しく書いてあるから割愛。
コントロールパネルを開く
セットアップが完了したら Antelope Launcher 上の AMÁRI のアイコンが有効になっているはずで、クリックできる。そうするとコントロールパネルが開く。
結構 Antelope Launcher と 製品コントロールパネルをごっちゃになるから、ランチャーとコントロールパネルは違うものって覚えないとサポートページ見ても「?」になる人いると思う。サポートページの最初にお読みくださいにも同じ注意書きあったわ。
開くと最初に Activation Wizard なるものが出てくるので、とにかく Continue を押していけばいい。ログインしてくださいって言われるから最初に作ったアカウント名とパスワード入れると進む。
とりあえずとにかく Continue でエラーが出たら、英語の赤文字に従って修正して進めればいい。難しいことはまったくない。と思う。
無事終わると、本体の Please Activate は消えて、コントロールパネルが正常起動する。
操作性と安定性
ドライバーの挙動が最初おかしいなと思ったけど、一度 OS 側の動作が安定すれば、動作は安定する。最初、macOS の Sound で Amari USB を選択しても音が Chrome から出なかったけど、OS 側できちんと切り替えしてやれば問題無い様子。他の USB デバイスでも同じ症状が…マウスとかも接続が切れる。どうも Mojave は OS 側にもまだまだ問題が多いようだ。
基本的にコンピューター OS 上のコントロールパネルは開く必要がないくらい、デバイス全面のタッチディスプレイからほぼすべての操作が可能。
メニューからはちょっと隠れた機能、スクリーンサーバー機能だったり SRC の ON、OFF が切り替えられたり、プリセットのセーブ機能がある。もちろん Antelope Audio 伝家の宝刀 Factory Reset () もある。
Oven を押せば、クロックソースの選択も可能だし、44.1 を押せばサンプルレートの切り替えも簡単だ (Oven 選択時のみ)
右上 POWER を押すと、最終確認が出て、Press を押すと、スタンバイ状態になります。完全に電源を落とす場合は直接コンセントから AC Adapter を抜く必要がある。誤動作防止にも役立つ。
ちなみに Antelope Audio 製品の Power Connector はスクリューで固定式なのでそこらへんの作りが他メーカーとは一線を画っしている。非常に作りは高級感があっていい。アダプター電源はトランスと比べ、軽くて小型で電力効率が高く、発熱とトランス特有のうねりが無いのが魅力だ。
また、各アウトプットの信号選択もタッチパネルからできる。AMÁRI のソフトウェアは本当に開く必要がない。今後のアップデートで機能追加が必要か? と言われてこれで完成形の製品なので、最初のアクティベーションで起動して終わりの可能性が高い。非常にありがたい。
リモートなどはない模様。これも公式に確認したけど、出す予定は今のところないらしい。
ちなみに DIM と MONO ボタン同意押しでタッチパネルのキャリブレーションができるようで、上手くタッチパネルが言うことを聞かない時は試そう。
製品仕様の確認
まず、どこを探しても確認できなかった気になる製品仕様について、探っていく。
インの種類
RCA と コンボ端子のアナログ入力があってこれはコントロールパネルか本体タッチパネルメニューから XLR なのか RCA なのかの選択ができるようになっている。切り替え自体は超簡単。この2系統のみ。
アウトの種類
アナログアウトは 2系統 ありますが、同じ出力系。オス端子はコンボ端子にできないんで別れているだけで、XLR も TRS もモニター出力の同じ信号が出力される。別々で ADC は搭載されていない。モニターアッテネーター後の音が出る。
ボリュームを 0dB にしてあげれば、おそらくアッテネータの抵抗は 0 になるので、ライン出しはそれで対応するしかないかな。TRS で別のモニターセクションへ送る前提の設計だ。XLR はそのまま別系統としてライン出しするような感じがいいだろう。
見てもらえればわかるが、AES/EBU と S/PDIF、TOSLINK がある。デジタルで受けて AMÁRI で DA して Analog Out から Analog In することは可能だが、AD 後の音の出力先がない。当たり前だが自己完結用にはできていない。Pure2 や Eclipse 384 ではこの自己完結ができるようなチャンネルがあった。
これは 8 DAC アーキテクチャのせいだろう、音質のために機能が犠牲になったのだ… まぁ自己完結するマスタリングエンジニアなんてそうはいないから、メインアウトが2系統ないのは全然問題ないのだけど。
対策としては、AES で AD 後の信号を出力してモニター側で DA させてあげることが望ましいかな? 最近のモニコンは DA できるからね。あとスピーカー側で AES DA が付いているのもある。最近は Class-D Amp が増えているね。
マスタリングエンジニアによってまちまちですが、DA は ProTools HD I/O を使う人は多い。なぜなら商業のミックスは ほぼ 100% HD I/O で行われるから。そのあと好きな AD に入れる方が多い。自己完結系のシステムってどうやって DDP に落とし込むん?
ヘッドフォン出力インピーダンス数値
これも 17ステップ の -4.6 〜 85.3Ω って書いてあるけどその間の情報がない。なので調べる。
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- 85.3Ω
- 68.1Ω
- 53.6Ω
- 39.4Ω
- 27.9Ω
- 19.8Ω
- 13.0Ω
- 8.1Ω
- 4.5Ω
- 1.6Ω
- -0.3Ω
- -1.7Ω
- -2.8Ω
- -3.5Ω
- -4.0Ω
- -4.3Ω
- -4.6Ω
ふむふむ。自分のヘッドフォンのインピーダンスに近い値を選択するといいのかな?未だにどういう目的かあまり理解できていないが、インピーダンスが小さいヘッドホンを擬似的にハイインピーダンスに見立てるとか? でも 0Ω 付近でドライバガンガン鳴らすのもありかな。
アナログアウトプット
非常にリッチな音。Discrete Series や Orion Series と音の傾向は一緒ですね、いつも使っている音と似ているのでガラッと変わる印象はありませんでした。ただ、上下の伸びと今まで低域の量感が足りないと言われていた Antelope サウンドですが、下が出すぎて部屋が揺れる揺れる。嘘みたいに上下伸びてくる。
ですので今まで Antelope サウンドを聞いてこなかった人にとっては、非常に今日意味深いレスポンスが得られるかもしれません。また、今回は 10M 入力はしていません。(修理中…) そして壁コンで試しました。そのほうがいいと思いまして。
ただ、音量が小さいと Discrete 4 とあんまり違いが現れないので、音量が出せる環境をお持ちであればあるほど、おすすめする DAC となります。オーディオファン業界には、クロックも含めて、150万 や 300万 する高級 DAC が存在しています。
それらと比べたら現実的な値段でなおかつ、プロが実際につかっているデバイスを選択したほうがいいと思うのは私だけでしょうか? もちろん民生機の DAC にはそれなりのステータスというものがあり、憧れというものもあるのは事実です。
それを差し置いても実際に現場で使われている再生機をつかって自宅で再生するのはそれほど悪いものではありません。ただし味付けが一切ないので面白みにかける音だとは思いますが…
アナログインプット
今回はとりあえず Pure2 のアウトから AMÁRI のインプットへ入れてリファレンスを聞いてみた。
素晴らしい。Pure2 のアウトの性能もあるのかもしれないが、聞いているリファレンス音源は -0.1 dBFS 程度のリミッターが入っているとおもうが、Pure2 で DA した信号が AMÁRI に入ってきても全然オーバーしない。Pure2 って 20dBu 出力だったかな? だったわ。4dBu くらいマージンあるのかな。
しかも、音が良くなっている、気がする、AMÁRI 単体で DA させた時よりいいんじゃないか? ってくらい。不思議だなぁ… Pure2 自体も True Peak を抑えているかもしれないし、AMÁRI 自体もなめらかに AD させているかもしれない。
しかしなんだ? AD させたときの方がいい音鳴ってる気がするぞ。これは面白い。
ヘッドフォン出力
私は バランス () 対応のヘッドフォンをもっていないのでバランスの音は聞けていない。普通にアンバラのヘッドフォンで聞く。
まず、面白いことに、いい音がするって印象じゃなくて、ヘッドフォンがよく動いてるって感じて、安っすいヘッドフォンがこんなになってくれるのか! とちょっと感動を覚える。
オープンエアーと密閉型で聞いてみたけど、ハイが意外と上がってこない密閉型でも上が出る。へぇこのヘッドフォンここまででるのか。と感心する。オープンエアーは今までユニットが振動する感じが伝わってこなかったけど、AMÁRI だとヘッドフォンが揺れ動く。反応がいい。
メインアウトとそこまで音質の違いがないので本当にリファレンスとして利用できるヘッドフォン出力だと感じた。いつもよく聞く Antelope サウンドだ。
どちらも、0Ω (-0.3Ω) の出力インピーダンスで視聴した。インピーダンスは抵抗値なのでヘッドフォンと自分にあった値を見つける楽しみができるのではないか。音の変化を楽しむ機能だと思うのでこの機能は確実にホームオーディオユーザー向け。
まとめ
もちろんマスタリングに利用できる。用途は最大 384kHz のアップサンプリングが魅力。AD の質がいい。でも視聴用の DAC としても非常にオススメ。特にヘッドフォンアンプの音は自分のヘッドフォンに対する音の世界を変えられた。
マスタリングで利用するなら、DA 側のスペックも要求されるだろう。AMÁRI の AD は本当に優秀だと思うので、アナログ出し側の真価が問われるんじゃないかな。2台かって DA 用と AD 用で揃えるのが最高かも(笑)
ラックタイプで内部完結をご所望も方は中古で Pure2 を探すほうがいいかもしれない。Eclipse 384 は絶対見つからない。できれば USB より AES/EBU を使うことをオススメする。USB より音いい気がする。
また、付属の AC Adapter と USB ケーブルはまぁ普通なのでできれば、18V の容量大きめのアダプタと USB 3.0 ケーブルを吟味しましょう。アイソレーション系よりレギュレーター電源に AC 刺すほうがいいらしい。
Antelope 製品はノイズ対策はめちゃくちゃちゃんとしているそうなので、できるのはケーブルの吟味と電源の工夫です。アマゾンとかで 18V AC だけ買って太いケーブル使うだけでも効果ありです。
容量が多いので音質向上に効果あり。そしてこれに
を使うだけでかなり効果ある。自分でもやってみるから。
最後に
このAMÁRI を視聴する機会をくれた Antelope Audio に感謝です。
ありがとうございました。