マルチバンドダイナミクスの現代制御を達成する TB-TECH futureMB

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マルチバンドダイナミクスの現代制御を達成する TB-TECH futureMB

マルチバンドダイナミクスの現代制御を達成する TB-TECH futureMB

この記事は Three-body Technologies の提供でお送りします。

私はマルチバンド処理に関して、どうアプローチするべきなのか、最近までさっぱりわかっていませんでした。

マルチバンドに関連する処理をやっと理解するきっかけをくれたのは、Leapwing AudioDynOne という製品でした。

正直、当時は理由もわからず、5 Bands のマルチバンドをスレッショルドに当てると、まとまった感が出る気がするという非常に浅はかな理解でした。私にとっても、それくらい難しいのがマルチバンドでした。そもそも Mixing 中に全周波数帯の整理整頓は終わっているという前提ですので、Masatering 専業ではない私にとって「Mastering で Compression や Multibands 処理する意味が正直わからない…」本当にそういう感情や思想でした。

自分の制作ステージはレコーディングやミックスが主なので、マスタリング向けのマルチバンド処理について、そもそも「どこに正解を持っていくか」がわからなかった為、使い方が全くわかりませんでした。ミックスで出来上がっているので Mastering で更にコンプレッションや EQ を施す意味が自分にはないのです。だからこそ、別のマスタリングエンジニアがいることが「制作のオピニオンとして」非常に重要であったりするわけですね。

個人的には自分にとってマルチバンド処理はあくまで EQ の延長のような利用方法で、特定の帯域を制限したいときに利用していました。つまりは De-essing と一緒の考え方です。特定の帯域の時間軸を制御したいときです。例えば、立ち上がった瞬間だけ信号レベルを特定の帯域で下げたい、立ち上がりだけは音を維持して指定した ms 後に信号を圧縮したい、など。

今でも私個人としてマルチバンド処理を積極的に利用することはありません。あったとしても 2 Bands、多くて 3 Bands での利用です。これは帯域を Bands で分けた考え方で作曲をしている人であれば、マルチバンド処理は使い易さが出ると思いますが、エンジニアである自分が「この楽曲の構成はなんとなく、5 Bands 構成かな〜」という思考が出来ないからです。本当にそうであるかは作家に確認しなくてはいけません。ですから、Low, Mid, High くらいの思考が私は限界です。

しかし、現代的なマスター処理を勉強していくうちに「マルチバンド処理しないと整理が大変な状況に陥る」という状況になってきました。

2022 年に Cradle から The God Particle が発表された時、最先端ではマルチバンド処理の必須や、とにかく時間軸に対して周波数の制御が当たり前であることを学びました。

そしてエンドースさせていただいております oeksoundbloom というアダプティブトーンシェイパーと周波数依存の Upward 並びに Downward Compressor の重要性を学びました。

これらの Plugin はほぼ自動調整であるため、実際に処理に対して積極的に介入したい場合は、それらのマルチバンド処理について理解する必要性がありました。非常に難しいです。アルゴリズム化されているものをなんとなく数値に落とし込む作業です。処理の音と自分が処理設定した音を聴き比べて、なんとなくの構造を掴んでいったのです。

マルチバンド処理を実行する前に


マルチバンド処理の基礎を最初に学んでおく必要性があります。

これは EQ の基礎的な話を語った動画と一緒で、基礎的なことを知っている、知らない、では思考のレベルが違います。

これは Linear Phase EQ について説明していますがマルチバンド処理もこのような難しい話ができます。

マルチバンド処理で起こる事象を知らずに使っていることと、それら事象のことは知っていて無視すること、この 2 つは大きな違いが生まれます。

闇雲にマルチバンド処理を選択実行しないため、そして、適切にマルチバンド処理を選択実行するための予備知識は必要です。


クロスオーバーフィルター

マルチバンド処理は基本的にクロスオーバーフィルターというものを利用します。

これは簡単に説明すると、1kHz をクロスオーバー周波数に選択した場合、1kHz より上の周波数を High、1kHz より下の周波数を Low と定義できる、みたいな話です。

1kHz を中心として Low 側と High 側に分けた図

この時にクロスオーバーの設定をすることが出来ます。

これがクロスオーバー設定

このクロスオーバーについては非常に初歩的な、しかし、非常に重要な問題 が隠れています

上記のクロスオーバー設定は 24.0dB/Oct という設定がされています。これは「設定した周波数のオクターブ上の周波数が -24dB されますよ」ということを表している。

簡単に言えば 1kHz オクターブ上は 2kHz で中心周波数より 2 倍の周波数は -24dB されるよって考えればいいだけの話です。

これは Minimum Phase EQ で Low Pass 1kHz 24dB/Oct 設定を見ている

しかし、単に EQ でクロスオーバーを作ってもきれいな位相特性になりませんし、フラットな特性を得ることは出来ません。

例えば Track を複製して、片方には 1kHz Lowpass Filter EQ を実行、もう片方には 1kHz Highpass Filter EQ を実行したと考えてください。

以下図は、そのよくある考え方の 1kHz の Lowpass と Highpass を合算した周波数特性を見ています。なんとなく「EQ で帯域を分けて後で合算すれば思い通りの帯域処理になるに違いない!」という浅はかな考えはまだ 20 代の頃にはありました。だって先輩エンジニアからそういう処理を教わったからです。

今となっては本当に良くないことを教わっていたんだろうなぁって感じです。

正直今となっては笑い話にできる事象ですが、今でも EQ で帯域を分けて後で合算しよう、的な Tooltips は英語圏でも普通に大手 YouTube チャンネルでも語られています。

Tooltips 的なものを紹介するのは全然いいと思います。しかし、問題を知っていて紹介するのと、知らずに「これいいでしょ!?」って紹介するのは良くないんです。

問題はその合算が「数学的に = にならない」のが問題です。良く EQ などでサブベースとのクロスオーバーを考えたり、スピーカーの EQ とサブウーファーの関係性を考える時、その位相特性や Linkwitz-Riley (リンクウィッツ・ライリー) Filter を利用したものではないと、このようにクロスオーバー周波数で +3dB のブーストが実行されます。

普通に皆さん、知らないことでしょう。もちろん、ある程度音響に精通している人なら常識レベルの話かもしれませんが、このような一見有能そうな Tooltips にありがちな思慮が、非常に問題を多く孕むことは音声処理において多いです。

もちろん、この現象を把握して、それでも EQ で帯域を分けた後に合算する処理を実行するのは個人の自由です。ただし、闇雲に EQ でクロスオーバー周波数を設定してそれぞれの処理を実行したあとに合算させる、という Tooltips を紹介することに抵抗が生まれるでしょう。

つまりマルチバンド処理というのは EQ とは違うまた別のフィルターに対する心構えが必要ということです。

これは Lowpass 1kHz 12dB/Oct の EQ の設定

ちなみに、EQ の Filter を特に考慮せず、12dB/Oct で 1kHz をクロスオーバー周波数と見立ててパラレル処理を実行しようとすると、通常の EQ Filter は中心周波数よりもオクターブ下から反応するのが正常な反応であり、Lowpass、Highpass の位相変形の影響も相まって以下のような図の特性になる。

これが 1kHz 12dB/Oct のクロスオーバーを EQ で作った場合の図

クロスオーバーを利用する場合、ぶっちゃけ、クロスオーバー専用の機器やプラグインであれば、このような特性にならないようにそもそも Crossover Filter の設計をちゃんと行っているのでぶっちゃけ議論になりにくい側面がある。


future MB の場合

通常はマルチバンド用に設計されているので、合算しても特に周波数特性に変化はありません。

これは future MB の Minimum Phase Mode 時の特性を見ているので実際にはダイナミクスが動作中に変化はないとは言えないのですが、合算して元の周波数特性を再現できるということで数学的にはきっちり整理されていると考える必要があります。単に自前で Crossover Filter を作ってみよう、という発想自体はありだけど、上手く行かない理由は大体クロスオーバー周波数の問題が起きていたことが原因かもしれません。

これはダイナミクスが実行中の future MB の特性、これは High 側の Compressor が実行されている時の図。Minimum Phase Mode 時の特性ではクロスオーバー周波数のディップが起きている。

図だけだと要領を得るのが難しいかもしれないけど、通常のマルチバンド処理であれば、クロスオーバーフィルターで帯域を分けた後にゲインが増減する場合に元の周波数特性を再現することは事実上無理なため、位相回転やゲインの問題でこのようなディップやブーストが発生する。

そんな中、future MB には「Liquid Phase」なる Mode がある。

プラグイン画面の一番左下にある

Liquid Phase

このモードは簡単に言えば、IIR と FIR の中間の特性をもつ位相モードで動的な位相シフトを実行してフィルターのアーティファクトを抑えた設計という話。

ここでは情報がすべて公開されているわけではないので曖昧な説明は避けます。

どうしても遅延やリンギングの問題などいろいろあるので MAAT Digital の thEQorange の解説で言ったことを念頭に於いて、Phase Mode の選択は自分で考えるしかありません。

マルチバンド処理の必要性


これは単に特定の周波数領域のダイナミクスを変えたい時に利用します。

よくある例として、ドラムトラックの場合。

スネアのマイクにハイハットの被り音が非常に強く混入した場合。

これは公式アカウントの動画でも紹介されていたので動画を置いておきます。

ナレーションは Arthur さん。

すべてはこれの応用です。

スネアとハイハットであれば、時間軸処理として…

スネアのアタックとシンバルのアタックは聴き分けがつかないのでアタック音に干渉しない設定もしくは処理はさせない

しかし、スネアの余韻とシンバルの余韻は簡単に見分けが付くのでサスティンやリリースに該当する部分は信号を下げてしまえばいい。

その時に全帯域に Gate/Expander 処理を実行すると余韻が音楽的に感じない場合がある。

だったら特定の帯域のみ、この場合はシンバルの余韻が強い帯域に対してだけ Gate/Expander 処理を実行すればいい。

こんな感じの実行ワークフローだ。

最近の室内音楽の場合でマルチマイクを立てて、被りが気になるようなセッションは基本的にドラムくらいしかないので、このような利用は多いかと言われると、最近は別の Split 処理が実行出来るようになってきている。特にスネアとハイハットの分離の機械学習が進んだため、どのように利用していくかの判断は難しくなってきている。

ただし基本はこれなので、例えば ビートトラックで 2Mix の音源に対して、低域は完全にベースやキックの基音、中域はスネア、高域はハイハットなどリズムパートのステム、もしくは 2Mix 状態に対してアプローチが可能なのがマルチバンドダイナミクスである。

Dynamic EQ との違い


一言でいうなら、位相干渉ができるだけ抑えられるのが Multibands Dynamics である。

もちろん、Dynamic EQ にも Linear Phase Mode が実行できるものもあるけど、そもそもそんなピンポイントで Dynamic EQ するときに位相歪みや位相線形処理を意識しない。

もちろん、確かに広いバンドで Liquid Phase Mode で Dynamic EQ を利用することもあるでしょう。

しかし、Dynamic EQ は実は非常に高速な動作に於いて重大な欠点があります。


Dynamic EQ の設計の限界点

実は Linear Phase Mode の Dynamic EQ に於いては、Attack time を極限まで短く設定することは Linear Phase 本来のメリットを自ら破壊しに行くような挙動を招きます

「時間領域での波形の崩れ (変調歪み) が極大化する」ということが言えます。文字にすると非常に難しい話に感じますが、一つずつ確認すると見えてくる事象があります。


Linear Phase が成り立つ「前提条件」の崩壊

Linear Phase Filter (FIR) が位相歪みを起こさないためには、インパルス応答が「対称性(Symmetry)」を持つ必要があります。

  • 静的な EQ: フィルターの係数が固定されているため、完璧な対称性を維持できます。
  • Dynamic EQ (Slow Attack): ゲインがゆっくり変化する場合、各瞬間での対称性はほぼ保たれます。
  • Dynamic EQ (Fast Attack): ゲインが極めて高速に変化すると FIR の計算窓 (Window) の中で「前半と後半でゲインが違う」という状態が生まれます。

この瞬間対称性」という Linear Phase の大前提が物理的に崩れる ため、結果として位相特性は不安定になり、非線形な位相歪みが発生します。

プリリンギングの変調地獄

Linear Phase の最大の弱点は音が出る前に予備振動が発生する プリリンギング (Pre-ringing) があります。

Attack time を非常に早くすると、このプリリンギングの音量まで高速に変化することになります。

  • アタックの直前に急激に音量が変化する「不自然な予備振動」が発生します。
  • これが聴感上は「アタックのボヤけ」を通り越して「金属的なクリックノイズ」や「シュワシュワした変調感」として現れることがあります。

時間不変性 (LTI) のルール無視

信号処理の数学 (LTI システム) において、Linear Phase が保証されるのは「システムが時間によって変化しない」場合です。 Dynamic EQ で Attack を早くするということは、システムを激しく時間変化させることを意味します。

  • 結果「非常に速い Attack の Dynamic EQ」と「Linear Phase」は 根本的に相性が最悪 です。

Dynamic EQ = 動的なフィルター

Dynamic EQ は、ゲインの変化に合わせてフィルターの係数をリアルタイムで計算し直し、形状を変化させています。

  • 仕組み: ゲインが動くたびにベル型やシェルフ型のフィルター形状を「滑らかに」変化させようとします。
  • 課題: アタックタイムが極端に短い (超高速変調) 場合、フィルターの係数が急激に書き換わります。デジタル処理においてフィルター係数をあまりに速く書き換えると「ジッパーノイズ」や、意図しない「非線形な位相変調」が発生しやすくなります。
  • 位相への影響: 前述の通り、特に Linear Phase モードでは高速な変調が「フィルターの対称性」を破壊し、本来のメリットを失わせます。

このように Dynamic EQ は極端な振幅変調 (高速な信号レベル変化) に非常に弱いという特徴があります。

これはとある瞬間の Dynamic EQ の周波数特性。このように非常に高速な変調を実行するとき、瞬間的には非常におかしな挙動を示す。

ちなみに fabfilter の Pro-Q 4 で高解像度での Dynamic EQ を実行しようとすると以下の警告が表示されます。

⚠️ の警告が表示される
Very High や Maximum の解像度を組み合わせて Dynamic EQ は実行できません。という警告が出る。

このように「⚠️」マークが表示されて Dynamic EQ が無効になるという。そもそも、このモードを実装出来ないようにプラグインに組み込めばいいと思うのだがなにか制約があるのか、警告だけ表示される。見た目は反応しているように見える場合もあるけど、Dynamic EQ は実行されない。通常の EQ は有効になる。ちなみに遅延はそのまま。遅延コストが無駄なただの IIR EQ 処理になる。

こちらは Linear Phase EQ に Dynamic EQ を有効にすると Minimum Phase Mode で処理される

上図は Kirchhoff EQ の IR 特性を見ているのだが、Linear Phase Mode で実行中に Dynamic EQ Mode を有効にすると、遅延だけ維持して IIR 動作に切り替わる。

これらの動作を把握していない限り基本的に Dynamic EQ は Minimum Phase EQ、IIR で動作することを頭に入れておこう。


Multibands 処理のメリット

高速な変調 (極めて速い Attack/Release) を扱う場合、一般的にはマルチバンド処理の方が「動作が安定しており、不自然な副作用が少ない」と言えます。

その理由は、フィルターが「静的(固定)」であるか「動的 (可変)」であるかという根本的な設計の違いにあります。

マルチバンド処理 = 静的なフィルター

Multibands Dynamics の Crossover Filter は一度設定を決めたら係数 (Coefficients) が変化しません。

  • 仕組み: 信号を最初に「低域・中域・高域」などの固定されたフィルターで分割し、その「後の工程」で音量(ゲイン)だけを高速に変化させます。
  • 位相への影響: フィルター自体が固定されているため、位相の回転角や遅延時間は常に一定です。たとえ 1ms 未満の超高速なゲイン変化が起きてもフィルターの位相特性が暴れる」という現象は起きません
  • 結果: 位相の整合性が保たれやすく、音の芯が崩れにくいのが特徴。

このため、高度な時間軸への介入、つまりダイナミクスやエンベロープへの介入を行いたい場合、基本的にはマルチバンドダイナミクスを使うべきだということがわかる。

Dynamic EQ はあくまで通常の EQ の延長を考えるべき事象で利用すべきであり、高度なマルチバンド処理を実行することを念頭に置くと、De-essing や位相シフトや位相歪みの影響を受けやすい低周波領域に於いては Multibands Dynamics を選択するほうがほとんどのシチュエーションで正解であると言える。


お仕事依頼、ミックスレッスンについて

筆者はレコーディング、ミックス、マスタリングを業務的に行っている音楽のエンジニアです。主な制作を海外を軸として活動しています。音楽制作のご依頼等は こちら をご参照ください。

また、最近はミックスレッスンのご依頼を多数いただいております。通常とは異なる業務向け、実践向けのレッスンとなりますが、ご依頼等は こちら をご参照ください。


実際の実行を聴いてみる


これらの基礎知識を前提とし、実際にマルチバンド処理を実行してみる。

上の動画は Multibands Dynamics 処理前の音です。ドラムの Bus の音で EQ 処理だけしています。そしてその EQ 処理は 50Hz Shelving +9dB という設定です。

特に変哲もない音だと思います。

こちらは Multibands Dynamics が実行されている音。

音がいいとか悪いとかの基準で聴くのではなく「何が実行されているのか」を耳で判断することを心がけよう。


実際の処理を聴き解く

音を聴いて、どんな処理が実行されているのかを想像できる、予測できることが大事です。

変化が聴き取りやすい低域の部分を説明します。

低域は 150Hz が Crossover 周波数になっており、中心周波数は 67.41Hz となっています。この情報は至極どうでもいい値です。

ここでは Gate → Upward Expander → Downward Compressor が順次適応されています。


Gate (Downward Expander)

ここでは -36dB 以下の信号をすぐに -6dB ほどするような設定にしています。

Attack time は限りなく最速で、これは -36dB 以上の信号レベルになった場合の復帰速度が最速ということです。Release time は Low End の減衰速度に合わせています。Low の周波数のダイナミクスの減衰スピードに合わせて Release time を設定しているため、特に減衰の仕方については元音から変化を感じにくいと思います。


Upward Expander (Spike)

Upward Compression を Spike Mode にすると Upward Expander 動作になります。

これは -32dB 以上の信号レベルになったら +5dB するような設定にしてあります。その振幅速度が Attack time であり、Release time は Boost した信号の保持時間です。

そしてすこーしだけ SPEC というパラメータを有効にしています。この SPEC はスペクトル処理の略で周波数に重み付けが付与されます。そして Dynamic EQ ではどうしても実行できなかった狭いバンドでの高速での振幅変調を可能にします。

もちろん、このピンポイントなスペクトル処理は位相は極端に変形する処理です。また同じような処理を実行する Dynamic EQ もあります。

ここでは Kick の基音と倍音で処理の適応に重み付けを実行しました。若干倍音のほうが強く立ち上がります。


Downward Compressor

特に語ることはないのだけれど、Compression しています。

最大 Gain Reduction が 6dB ほど、Attack time も Release time も少し遅め。

これは Spike Mode の Upward Expander で 6dB ほどプッシュされたものの Envelope の再成形 を実行しているものと捉えてください。

立ち上がりの Punch 感の演出の Compression です。


個人的な総評

処理後のほうがスネアの暴れは少なく、タイトな Kick を演出は出来ていますが、Expansion と Compression の影響で Low End の知覚が難しくなっています。視聴環境に寄るので非常に難しい議論ですが、元々の音のほうが Low End の認識は強かったですが、Kick はルーズなリズムになっていました。それをタイトなパンチある Kick に調整しています。

どちらがいいか、という視点で音を聴かないでください。

どこが変化しているのか、どうやったらその認識が処理と結びつくのか、それを考えるところです。

嬉しい機能抜粋


実は、これ欲しかったよね、っていう機能がいくつかあるので紹介する。


Double Threshold

「2 重スレッショルド」という機能があるんですが、派手に便利です。

ちょっと Help と重なっちゃって見づらいけど 2 重の Threshold が設定されている

通常 Upward Compression はスレッショルド以下の信号すべてに反応するのですが、この Dynamics Tool、賢い。

2段目のThreshold で元の信号レベルに戻すということが出来る。

私は基本的に Upward Compressor は Downward Expander とセットだよねって言う話は YouTube の動画でしているので割愛するが、これが派手に便利な機能なんです。これがめっちゃいい機能だよねぇ!って思える同士に伝わればいいかな。

簡単に言うとノイズレベルも上昇しちゃうからそれを戻したり、小さい信号に過剰に Upward Compressor が反応しないので便利って機能です。マジで嬉しい。最高。


Δ MATRIX

名前だけではなんのこっちゃかわからない機能。

通常、Side-chain 機能は 1 つの信号のみにしか利用できないのですが、Δ (差分) のエネルギーを各帯域に利用できる、という機能。意味不明ですね。

チョーざっくりいうと、以下の画像では「低域に反応したら高域にも反応するよ」って感じの機能。Side-chain だ。

これは通常の Side-chain と違って Δ (つまり処理の差分) を利用して反応するタイプなので、単なる Side-chain 信号だと言えないということ。

This という信号の差分が B1 (High) に少しだけ Side-chain して実行されるよって感じ、文字だと意味不。

これらはバンドごとに相互作用させることが出来ます。通常 Side-chain というと、検知回路 (Ditector) に入力する信号のことをいい、検知回路に送れる信号は一つだけです。ただし、Δ MATRIX を利用すると、それぞれの信号に対してそれぞれを Side-chain 信号として扱える、みたいな機能です。面白いと思います。

もちろん、そもそもこの future MB 自体、Side-chain 信号の柔軟性が高いので、なんの意味があるんだろうって思うかも知れないけど、検知のさせ方がエネルギー由来で % 調整なので結構設定しやすいです。Detector 回路を柔軟に設定することは上級者向けなのでありがたい機能でもあると思う。

総括


視認性と柔軟性と専門性が一緒くたになったツール。基本的には周波数帯ごとにダイナミクスやエンベロープを調整したい人向けだろう。

挙動が普通にデジタル以外、特に特色がないので、アナログチックな動作は難しい。

今後のアップデートで Feedback や RMS 制御や Crest Factor 調整や Dual Release 調整ができると、かなーり Mastering 向けのマルチバンドダイナミクスになるのでは。

この辺は DMG Audio の Multiplicity や Flux:: の Alchemist にはまだ及ばないかなって思ったり。

でも、それ以外には気軽に使えるおもしろ機能があったり、割と直感的に利用できるのがいいですね。Alchemist も Multiplicity も痒いとこに手が届くけど、頭が硬いプラグインだから少し柔軟性がないんだよね。そこにハマるのがこの future MB かなって思いました。

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