逆相チェックは評価として基本的には役に立ちません

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逆相チェックは評価として基本的には役に立ちません

逆相チェックは評価として基本的には役に立ちません

これは時事ネタの記事なので、今現在 2026/04/22、検証とかチェックに関する間違った知識、見識、見解を皆さんに伝えたいと思います。


USB ケーブルで音が変わるっていう話は「音声を再生する場合に於いては、物理的に起きる可能性は捨てきれないよ」という話をしました。

これはぶっちゃけると、環境が悪いほうが差異が知覚できるかもしれません。

何故かと言うと、USB ケーブルはインターフェイスとコンピュータと繋がっていて、最終的にインターフェイスはスピーカやヘッドホンとも直接繋がっています。

それぞれの自己ノイズを USB ケーブルが原因でそれらを吸収したり、影響を受けたりして、電源ノイズを拾ったり、なにか外来ノイズを拾ってしまった場合にそのノイズが、繋がっている機器同士で相互的に影響しあって、最終的にスピーカーやヘッドフォンに出力される音に影響します。つまり、データだけを比較してもそれを証明することが困難な議論になります。デジタルデータだけ見ても意味はないと思います。

問題は、音が変わって聴こえるかという、認知の問題です。

ただし、こういう話をすると、だいたい、逆相で打ち消しあったので同じです! っていう主張をする人がいます。

ちなみに逆相チェックのことを Null チェックといいます。

残念ながら、その主張は「非常に浅はかである」と言わざるを得ません。

この話は何度もしているのですが、その話をまとめたいと思います。

逆相チェック (Null チェック) は知識がない人がやっても正しい結果は得られません


デジタルデータの Null チェック (逆相チェック) に於いて、海外の有名なデジタルオーディオについて詳しい解説をしている有名なエンジニアの方 (fabfilter と協力してる人) でさえ、逆相チェックについて間違った解説をしています。それくらい、難しいのが逆相チェックです。

私が非常に S/N が低い、マスタリンググレードの高級 AD/DA コンバータを使った、USB ケーブルの逆相チェックについて、解説したいと思います。


逆相チェックで音が聴こえないから同じ音という主張は非常に浅はかです

逆相チェックに於いて、「打ち消しあった!」という主張を聞くと思いますが、本当に打ち消し合っているのか、エビデンス (証拠) がありません。

音が聞こえないから打ち消し合っているというのは、残念ながら、知識がない人の主張です。それを理解できるように私が出来る範囲で厳密な簡易チェックをした状況を説明させていただきます。


逆相チェックする信号をちゃんと書き出しをして、データを精査する必要があります

私が持っている マスタリンググレードの AD/DA コンバータの公証スペック、 DA の Dynamic Range 138dB、AD の Dynamic Range 128dB の製品でチェックします。

Pro Tools で音を再生し、DA から音がでて、AD にアナログ信号を戻すループ回路です。

USB ケーブルは 2 種で検証しています。1 番、2 番と置きます。

1 番は結構しっかりシールドされた太めの USB ケーブル たぶん 3m、フェライトコアもついているやつ、2 番はなにかの付属品の USB ケーブルだけど、フェライトコアはついてました。柔らかくて短め 1m くらい。

必要なチャンネルはこれだけは最低必要です

逆相チェックで簡易的な厳密チェックをするためには最低これだけのトラックが必要になります。

一応説明しますが、上から…

トラック番号とリストの番が一致します。

  1. DA ▶ AD に送る検証用のサウンド
  2. 1 番の USB のループ信号 1 回目の録音トラック
  3. 1 番の USB のループ信号 2 回目の録音トラック
  4. 1 番の USB ループ信号の Invert (逆相) チェックのトラック
  5. 2 番の USB のループ信号 1 回目の録音トラック
  6. 2 番の USB のループ信号 2 回目の録音トラック
  7. 2 番の USB ループ信号の Invert チェックのトラック
  8. 2 番の USB のループ信号 2 回目の録音の極性反転させたトラック
  9. 1 番と 2 番のループ信号の Invert (逆相) チェック (※1)
  10. 1 番と 2 番のループ信号の Invert (逆相) チェック 2 回目 (※2)
  11. 1 番の逆相チェックトラックと 2 番の逆相チェックトラックの Invert (逆相) チェック
  12. AD Converter のダイレクトサウンド (各ケーブルごと)

はい、おそらくこの記事を見に来てくれた人の誰一人として、全てのトラックの意味と必要性を理解出来ないと思います。それくらい逆相チェックっていうのは難しいのです。


前提条件の話

まず、逆相チェックで確認が必要なのは、本当に音が完全に打ち消し合っているのか を確認する必要があります。

そのため、2 と 3 の同じ USB ケーブルでループを 2 回録音し、それらが全く同じであるか、をチェックします。

トラック 4 の信号を皆さんにお見せ致します。 Pro Tools 上では全く信号は確認できませんが、正しいチェックを行うと見えてくるものがあります。

無音ではないのです、完全に打ち消し合いは起きてない

同じ 1 番の USB ケーブルの 1 回目のループと 2 回目のループなんだから、完全に打ち消し合う、または無音である、という主張をする人はいるのですが、正しく解析すると、残念ながら、このように微弱な差異が検知出来ます。

つまり、打ち消し合いは起きてはいるが、完全に無音ではない、ということだ。

そして、2 番の USB ケーブルの 1 回目のループと 2 回目のループの解析、トラック 7 の解析がこちら。

数値のピークに 9 dB も差が出ている

画像を正しく読み解けるか、が鍵となりますが L と R でピークの数値に結構な誤差 (9dB) が出ています。この時点で既に USB ケーブル差が出ていると推測できます。

ただし、ここではまだ、結論が付けられません。AD もしくは DA の自己ノイズが R チャンネルだけ大きい可能性が拭えないからです。

そこで、AD Direct という AD/DA だけの測定をする必要があります。これが 12 トラックの値です。

これは 1 番の USB ケーブルの AD Direct 測定値、AD の公称スペックレベルの測定値
こちらは USB ケーブル 2 番の AD Direct、残念ながら 2つの観測結果により AD/DA のチャンネル誤差の線は消えた

これが AD Direct の信号の音です。

既に衝撃的な観測結果が見えていますが、USB 1 番のケーブルはほぼ AD/DA の公称スペックレベルの測定値が観測出来ています。Total RMS Level で 約 -126.6dB の下限ノイズが測定されています。そして USB 2 番のケーブルはなんと 10dB の誤差 (‐116.6dB)、しかも、大幅にノイズの観測が増えています。

この時点で USB ケーブルで AD 時の違いが完全に観測されており、USB ケーブルで音が変わる、という完全な証明にはなりませんが、明らかに音が違うと認識できる観測結果が得られています。というかほぼ確定的に USB ケーブル違いでノイズが増えているのは間違いありません。

ちなみにこの雑音を見てると 50Hz のハムノイズの高調波雑音が観測されています。なんとなく THD つまり 自己的な THD+N が見えます。厳密な THD+N の測定ではないですから注意してね。通常の THD+N の測定は基準信号の測定方法があるので、これはあくまで自己ノイズ由来の THD+N を見ている。

この時に見るべきは、本当は dBA とかの単位があればいいのですが、ここでは Total RMS Level で簡易比較できます。

数値は USB ケーブル 1 番が L が 約 -126.2dB、R が 約 -126.6dB、USB ケーブル 2 番は L が 約 -114.9dB、R が 約 -116.6dB です。つまり、逆相チェックの観測された誤差は AD/DA から直接来るものではない、と簡単に推測、説明ができます。

簡易的な測定なので、サンプルが少なくて厳密には結論は付けられないが、このデータだけを見ると、USB ケーブルの違いで誤差は容易に観測できる、ということだ。

ただ、人間が知覚できるか、はなかなか無理だと思うが、めちゃくちゃ環境がいいマスタリングスタジオだとこれくらいの S/N の違いは雰囲気で感じられます。なにかしらの誤差がある、と簡単な推測はできます。この誤差が大きなスピーカーで大音量で聴いた場合にはより大きな誤差に聴こえる可能性は捨てきれません。実際にマスタリングスタジオではなんか違う、という人はいます。これは私もマスタリングスタジオで経験したことがあります。S/N のほんの微細な差異がプロユースなスタジオ環境だとなんとなく感じられるのはプロの制作者は理解できるでしょう。

この時点で、Invert チェック、Null チェック、日本では基本的には 逆相チェック (と呼ばれる) が、ただのマヤカシである、と私はいい張れます。

もちろん、こんなの知覚困難なのだから一緒だろ、という認知の問題がありますが、この誤差が 後段の視聴環境に於いて、知覚できる範囲まで増幅する可能性を考慮せよ ということです。


チェックはこれで終わりではありません

これだけでは正しいチェックになりません。あくまで USB ケーブルごとのループの誤差を見ているだけですので、USB ケーブルごとの逆相チェックを見ていきます。

トラック 9 番 (※1) ですが、これは単純に USB 1 番と USB 2 番の 逆相チェックの音です。

あれ?打ち消し合っていません!

これは USB 1 と USB 2 のチェックですが、なんとも凄い測定値

実は単に USB ケーブル 1 番の信号と 2 番の信号を逆相チェックすると、全く打ち消し合わないどころか、ピークは +1dBFS を超えています。

これは USB ケーブルで遅延の数値が違うから、厳密な時間同期が出来ず、サンプル数では 12 サンプルズレました。

この遅延を正しく補正しない限り、逆相チェックが成り立ちません。これが ※1 のトラック 9 の問題です。

そのため、手動で遅延補正をし、逆相チェックした信号がトラック 10 となります。※2

これが USB ケーブル 1 と USB ケーブル 2 の逆相チェック解析

ここで、USB ケーブル 1 番と 2 番の逆相チェックとなりました。

AD Direct の信号よりは Total RMS Level で USB ケーブル 1 からは 14〜16dB、USB ケーブル 2 からは 2〜6dB の誤差が観測されています。つまり、ケーブルで誤差が観測されている、と言えそうですが、待って下さい。まだ足りません。

トラック 11 は、USB ケーブル 1 番の 逆相チェックの信号と USB ケーブル 2 番の 逆相チェックの信号の、逆相チェックをします。(ややこしいけどわかるよね…?)

逆相チェックの逆相チェック、ここまでチェックをやってみるんだ

これは逆相で殆ど打ち消しあった音同士を更に逆相チェックした場合である。そもそも Total RMS Level -110dB 程度の信号をさらに逆相チェックしているのだから、もっと信号レベルは下がるべきだ、とおもえるかもしれませんが、なんと測定値的には誤差が増えているのです… Total RMS Level がさらに 3〜5dB ほど増えています。

ただし、あくまでこれは逆相同士の非常に微弱な信号をさらに逆相しても、単なる背景ノイズのパワーが 2 倍、約 +3dB 〜 +6dB されただけ、とも解釈はできます。

しかしながら、逆相チェックで音が消えたから 同じデータである、という理屈は全く成り立ちません単に逆相チェックを厳密にしてないだけ、となります。

そして AD Direct の信号を比較に利用してみると、USB ケーブルごとで、誤差の違いが非常に大きく観測されたもの事実です。

実際にピークで -80dBFS 程度の違いは人間では聞き分けは無理、というレベルですが、オーディオを聴く環境の影響度合いでは、-30 dBFS 程度の誤差にまで発展することがあります。

少し条件を悪くすると、-30 dB RMS Level くらいの誤差を観測することは可能です。ただし DAW などの厳密な時間同期をできるだけ行うようなソフトウェアや高級な時間同期を行うようなクロック同期や、ちゃんとした高級 AD/DA の場合はかなり誤差を観測しづらく、そして聞き取りづらくなりますが、周辺機器の影響でスピーカーから実際に聴こえる音には誤差が知覚出来るレベルで発生していることは否定は出来ません。

まとめ


これは USB ケーブルで音が変わる、という確たる根拠にするには情報が足りません。AD のノイズ誤差はあきらかに測定されたので DA の実際の音の誤差はある、と間接的には説明出来るだけです。ただし、簡易的ですが厳密なチェックをすると、明らかにケーブルを変えただけで誤差が観測できるということはわかったと思います。

ここで何を伝えたいかというと、逆相チェックは知識が無いのにやっても全く意味がない、ということを伝えたかったのです。USB ケーブル云々はおまけです。

皆さんも簡易的に信号を逆相にして、元音と信号をぶつけて「音が消えたらから同じ音だ!」という主張をするのは、さすがに浅はかであることを学んでほしいです。もちろん、本当に同じデータの場合は完全に打ち消し合うか、ビット深度の下限ノイズが観測出来ます。そこにも知識が必要で、これが何由来のノイズなのかを判断するだけの知識が必要です。

聴こえないレベルの差異はある可能性はちゃんとチェックしないとわからないけど、自分には聴こえないので同じ音とみなしてもいいかな… 位の話にしましょう。

厳密なチェックのときに Null チェック、Invert チェック、日本語では逆相チェックを根拠に話すのは流石に、もう周回遅れのことだということを理解してくれればいいです。

私は USB ケーブルで音が変わる、という主張は正しいとも思う反面、気にしなくてもいいんじゃないかな… ってか、私自身は USB を利用するオーディオインターフェイスを使わない、という判断をしています。もちろんこのマスタリンググレード AD/DA は電源から USB ケーブルからこだわりを持って自分で選択して利用しています。

ただし、「音が変わるわけがない」という主張は根拠が乏しすぎるのに、頑なに謎の主張するよりは、こうやって出来る範囲で厳密な検証をしていない人より、私は「変わる可能性のほうが考えられる根拠が多すぎる」というスタンスです。

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  • 書いた人: Naruki
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