ネクストレベルの処理「時間制御」とは
GW いかがお過ごしでしたでしょうか。
色々忙しくて自分の時間を作れませんでしたが、GW が空けてもまだ忙しいです。が、別に制作で忙しいわけではなくて事務的な意味で忙しいだけです。いつでも MIX や Recording のご依頼はお待ちしております。
今回はコツコツ書き溜めてきた内容をここで書きたいと思います。やっと説明が楽な Plugin が登場したのも理由の一つです。
今回の内容は「時間制御」に関連するお話です。正直これは話をしてもいいものか、と思っていました (なんていうか時間制御???それって時間か?意味わからんわってなるから。) が、別に減るもんじゃないし、自分以外の人も同じ様にアプローチを考えていただければ、非常に良いことだともいます。
この感覚を掴むのに 3 年くらいかかったので、多分皆さんも「時 間 制 御 完 全 に 理 解 し た」とかドヤるのは 3 年後くらいになると思います。僕はある程度は掴みましたが、完全に理解しているわけではないので自分の理解出来る範囲で記述していこうと思います。
この内容は前提として複合的な理論というか現象というか、論理的な波形合成について多少は理解しているという前提で話を進めさせていただきます。全く理解できない人は理解できるように前提条件を説明しますが、その前提条件すら「よくわからん」ということも大いにあると思いますので、わからない人は別に理解する必要はありません。「ふーん (ハナホジ)」 レベルで十分です。これらはあくまで私が考えるアプローチの考え方の一つで別に理解する必要はないし利用する必要もありません。
ただし、自分の制作のレベルを上げたい人は見ておくといいのでは? くらいにお話したいと思います。
時間制御ってなんだよ
この命題に取り組む前に我々は非常に難しい基礎知識について取り組み、理解する必要があります。
以下に時間制御に関連する処理を列挙するので、基礎的な処理の構造について深く理解しつつ、時間制御の大切さを理解していく必要があります。細かいことは有料にするか、動画にするか、迷っていますが…正直あまりやる気がないので、今回は理解しているであろう前提でお話を進めます。
時間制御を知る前に一応、以下の「動的制御」に関連する記事を先にお読みください。
この上記記事の解説では「動的制御の感覚を掴んだら次は時間制御を考えよう」と言っています。それについて解説するのが今回の記事です。動的制御は常に変化でしたが、時間制御も常に変化を時間的な側面で行うというか、考えることです。
また、コンプレッサーと EQ に関連する動画を先に試聴しておくと、もっと理解が深まるので、ご視聴ください。
以上の項目を完全に理解しているという前提で話を進めるため、なにを言ってるのかサッパリな場合は、さっさとこのページを離れることをオススメします。他にご自身に有用な情報を手に入れるために無駄な時間は避けなくていいと思います。
具体的な意味
簡単に言うと時間軸で処理が変動するとか、時間軸で処理が有効になる、無効になる、という挙動のこと。あとは周波数分離が時間軸で起きるとか、まぁ難しいことは後で分かるので定義とかはどうでもいいかな。
時間制御というと、1 秒 2 秒 などの時間軸で考えがちですが、基本 100 ms 以下、または知覚が非常に困難なレベルの時間軸での処理の話になります。
External Side Chain の処理を思い浮かべてほしいですが、瞬間的な動的処理は処理を実行している本人は A/B 比較が可能ですが、比較対象が無い音源に対して、External Side chain 処理が実行されている、と認識するのは、プロでもほとんど認識できないはずで難しいです。
もちろん極端な処理の場合はわかりますが、同業者に処理構造を音で判断されるミックスは個人的にはやりたくないので基本無視でいいと思います。
瞬間的な動的処理も時間軸で多少の処理変動が起きているので時間制御も内包する処理ですが、狙って行うのは外部検出回路が動作した時のみなので、常に時間制御を実行出来る処理を考えていく。
時間制御の分類
実際にはすべての処理が時間制御に関連するもの、ではあるのですが、実際には処理と同時に時間制御も行っているんだよっ的なものモノの理解や分類するために私個人がセオリー化したものを以下に列挙したいと思います。
全ての処理は時間制御も内包している、ということを忘れてはいけません。ただ、時間制御関連に特化したものがあるので、それらを徐々に列挙します。読み始めは「そうか…?」「う〜ん…」という感じで結構です。
Compressor (Dynamics Processer)
コンプレッサーは主要な時間制御が出来るエフェクトです。というか Dynamics 系エフェクト全般に言えることです。これらの派生のエフェクトが最もどこにフォーカスしているのか、で名前の呼び名が変わってくるものです。
一応、誰でもが理解出来るように基礎から学ぶのも一興なので詳しく見ていきましょう。ただし、ほとんどが時間制御をメインにしているわけではなく、結果として時間制御も可能にしているという部分を考えます。
Dynamics 制御を時間軸で考えていく
通常の Dynamics 系エフェクト、つまりコンプレッサーは音量差を無くすエフェクトのように語られます。これは真実ではありません。ただし、そのような側面も持ち合わせている場合があるだけです。
コンプレッサーは容易な時間制御は不可能ですが、複合的な波形に関しては時間制御が可能です。しかし、万能ではありませんし、なかなか難しいです。詳細は実際の処理項目で解説します。
De-Esser (Internal Side-chain)
これはみんなよく使う割に構造を理解していない人が多い。なんとなく歯擦音を分析してリダクションしてくれるエフェクトだと思われているけど、基本的な構造はただの Compressor だ。
もちろん各社色々な工夫をした De-Esser をリリースしており、特定のアルゴリズムにより対象を選別し、リダクションするものもあるが、基本は Crossover Filter を通過した信号をコンプレッションするというもので、時間制御というより動的制御に近いがこれを利用して時間制御が可能。
上記の Master De-esser は完全に構造自体がわかりやすい。バンドパスフィルターを通過した音をコンプレッサーで処理して最後に SUM するという非常に基礎的な De-Esser。これらは上手に使えば時間制御が容易になる。
ぶっちゃけ Internal Side Chain の強化パス版のコンプレッサーと考えるべきモノで、サイドチェーンフィルターを使えば簡易の De-Esser は容易に実行できる。
時間制御…? 帯域制御 の間違いじゃ…? そう思ってくれていい。これがどうやって時間制御に関連するかは、素材次第だが、基本を理解していくことが大事。そう、帯域制御が時間制御に密接に関わってくる。
Gate/Expander
これも、Internal Side Chain を駆使して時間制御が可能です。が、帯域制御の割合も大きいです。
私は以前から、Envelope の整形には Expander が最強だよ〜ってちょくちょく言ってきた。あまり実用的な説明が出来ずにいましたが、一応 動画 でも立ち上がりの制御に使っています。
個人的には Expander は極端な Dynamics 形成のためと失われた Transient 復元のための Compressor だとちょこっとだけ説明している。
簡単に言うとドラムの Gate/Expander はどうしても立ち上がりのディティールが変形するので、それを後段の Compressor で復元しよう、的なことだ。わからなくてもいいけど、理解して使えるようになっては欲しい。
結局複雑な処理をするとなると、帯域制御と時間制御が両方必要にはなる。以下は立ち上がりの帯域制御と時間制御を行っている。実際にはこの Side Chain は検知に利用しているので、制御自体に極端な帯域制御と時間制御はないが、多少いじれるくらいには思っておこう。
う〜ん…時間制御…? よくわからんなぁ…それでいいです。
もう少し理解を深めると、Pro-MB というプラグインは Expander モードが完全に帯域制限が出来るので、本気で時間制御していきたいユーザーは Pro-MB を攻略しに行こう。
EQ (Dynamic EQ)
既にスネアの Transient と Decay で分けて EQ する方法について理解している人であれば、時間制御ってそういう事? っと気づいてくるだろう。具体例は 動画 を参照してほしいが、私が Compressor で重要なのは Transient と Decay の音を聞き分ける必要があり、EQ も Envelope に干渉するので、Transient と Decay の音を明確に分けて考えて EQ しようという動画を上げている。
つまり、時間制御を理解する上では、Envelope への理解が必要である。そんなに難しくはない。基本的に Envelope がある音というのは決まってダイナミクスが豊富な音であるということで、音を見なくても波形で判断がついてしまうからである。
少し高度な話は後で語るので、EQ は Envelope へ干渉し、それらにもっと適切にアプローチしたいのであれば、Dynamic EQ、とくに DynaQ や SplitEQ を利用していけばいい、という話だが、頻繁に利用するものでも無いというのが実状。
もっと良いアプローチがあるのでそれも後で語ります。
Reverb (Delay)
この項目に関しての解説は、別途記事を書き行うべき代物だと思うが、正直やる気が全く起きないのでこの中に内包して解説します。
Reverb や Delay は Envelope 形成の一種であり、既に時間制御の一端となるエフェクトになります。ただし自由度は高くないし、デザインが難しいし、なによりサウンドクリエイトに置いては、ぶっちゃけ邪魔な帯域になる、という事実があります。
しかし、殆どの場合で空間の表現としての役割や音と音の繋ぎの役割であったり、複合的な距離感の合成と音像をボヤけさせるための手順として、簡単に言うと音を曖昧にするエフェクトです。
これらも直接音から上手く音をデサインまたは部屋の音をキャプチャすると、もちろん Transient と Decay の音が内包されており、時間制御を駆使することで、Reverb を付け足すことで失われる表現を回避しながら音をデザインしていくことが可能です。
この部分に時間制御が密接に関わってきます。Delay は Reverb は結局 Time や Pre-Delay 等々、直接時間を制御するものですが、あまり瞬間的な音、という概念が無く、2 秒 3 秒 と長い時間に囚われ過ぎている印象です。
Transient Design
最近、うるせぇくらい言われる、Envelope Design なのか Envelope Control なのかよくわかりませんが、Transient Shaper を使ってどうのこうのって言う人増えましたよね。
自分が辛口で言うなら「んなもん、ダイナミクス制御でどうにかしろ」と言う場合もありますが、まぁ面倒であったり、求める制御が Transient Designer で可能であれば普通に多様します。
これも結局立ち上がり音とそれ以外みたいな、時間的な制御ですよね。まぁぶっちゃけ、さんざん、EQ でも Comp でも Transient とそれ以外の音をどうやって分けて処理するか、みたいなことしか言ってないので、これが入るのは当然といえば当然。
ここまでくれば、読者も私が何を言いたいのかわかってきたかもしれない。
序章のまとめ
一部の人は Envelope がどうたらこうたら、Transient がどうとか、多分聞いたことあるけど「なんか要領得ないな〜」っていう人、多分、多いと思う。
Envelope については理解はさほど難しくはない、ハズ。わからない人はもう一回 動画 見てくれ。
非常にざっくり言うと「立ち上がりの音」と「それ以外」だ。厳密には「立ち上がり方」と「停滞音」と「減衰速度」が音として認識出来る。ADSR (Attack, Decay, Sustain, Release)ではあるのだが、実際に ADSR がしっかりと存在する素材なぞ殆どないから、立ち上がりとそれ以外の認識でいい。
とにかく SplitEQ 自体は Transient と Tonal に分けている現状、この 2 種 の音以外は基本考えなくていいということだと納得しよう。ただし、Release の早い遅いだけは気をつけてほしい。音の減衰スピードでエンジニアがいう Groove みたいな話へ繋がるからだ。まぁそのアタリは追々で。
私は初期トランジェントとそれ以外、としてか基本考えていないので Envelope? なにそれおいしいの? レベルの人もそこまで厳密に考えなくていい。何度も言うようだが、とにかく立ち上がりの音とそれ以外だと思っておけばいい。
以降深く解説していき、時間とはなにか、を理解出来るように説明していきます。多分…上手く出来なかったらすみません。
そして、我々は Compressor の基本動作をここで再度確認する必要性がある。
エンベロープデザインの落とし穴
これについては実は少しだけ ここ で語っている。
これは Transient を制御したところで、ほとんど意味ねぇぞ、って言う話。
そうなんだよ。トランジェントを制御したところで、なんだ。
トランジェントと複合的に行わなければいけないのが、帯域制御になる。
具体的な実例を見ていこう。
Compressor の本当の動作。
Compressor の動作解析というか、動作説明をするとき、すぐに波形で説明したがります。
まぁ、わかります。これは初心者向けの説明であって、実務的な説明ではない、といえばいいのでしょうかね。
上記図はコンプレッション動作を目で理解するツールみたいなもん。数学的な挙動しか見えないし、ここでは音量しか見えていません。帯域については全く語られていないので、深くコンプレッサーについて理解が深まらないのです。
もちろん、極端な周波数特性を持たない音源に対しては、どんな周波数が複合的になっていようが、周波数特性に関係なく音量をさげるのがコンプレッサーです。
ですから、歌とか、あまりダイナミクスや初期トランジェントが豊富ではない音源に対しては、たしかにただ音量を下げるだけの効果を演出するのが、コンプレッサーです。
しかし、実態は違います。
極端なわかりやすい例
ここではわかりやすい様にコンプレッサーを極端に動作させたときに音の違いを認識出来る素材を用意しました。
以下 スネア の音です。
⚠ 音量注意 ⚠
上記は コンプ をかけていない音。(元々のサウンド整形のための処理は除く)
上記はいっぱいコンプした音。処理は以下な感じ。
一応コンプレッサーを利用すると歪む、という通常の処理動作を考慮する必要があるが、音を比べてかつ、スペクトラムでも確認してみる。
一応ステータス的に量感は同じであると証明のための画像を貼っておきます。
トータルの量感だから、ピークしか無いような音は制御が不利で、FFT だと音量が大きく見えがちなんだけど、トータル上の数値上はあってるから許して下さい。
何を言いたいかと言うと、圧縮自体は音量を下げるだけの効果なんですが、同じ時間軸で FFT を見てみると、明らかに周波数特性の山が「平均的」な値を示しています。これはコンプで処理されたであろう Transient 成分にフォーカスして FFT を見ています。
これが「時間制御」の根幹となる現象です。
波形だけを考えて音量であったり、エンベロープばかり見て、波形の形、しか見ていないと、実際の出音が間接的な時間制御によってどう変化しているのかを見失います。重要なのはエンベロープではなく、エンベロープ (時間軸) ごとの特性であると言えます。
実際には Compressor は周波数特性自体すら揃えてくるエフェクタであるとこの現象だけを見れば言えます。ただし、これは極端を見ているのでここまでしっかりと周波数の均衡化みたいな効果は全てはコンプ特性とその動作のさせ方で顕著に出たり、うっすら出たりです。もちろんコンプで歪んだことによる影響も十二分にあります。
もちろんパツパツスネアはこのままでは使えないので、Reverb や Delay を利用して、コンプで失ったエンベロープをデザインしてあげます。
すると以下のような音が出来上がります。
実は既に数年前に ドラムサウンドクリエイトのお話 で、時間制御についての解説はしていますが、そこでは時間的な制御、というよりは要素を分けて処理してみよう、という内容で語っている。当時はまだ、極端にエンベロープだとか時間制御だとか、小難しいことは語らずに、音の要素を分解して捉えよう、というかなり初心者向けの内容だが、応用していくと全てに当てはまっていく。
エンベロープ制御も確かに重要だと思いますが、時間制御の根幹は瞬間的な時間の中で周波数特性が絶えず変化することへのアプローチが重要であると私個人は考えています。
コンプの場合、意図的な制御は非常に難しいので、基本的にはエンベロープへ干渉しつつ、音が均衡化するという事実を把握する程度しか、応用は難しい。実際にコンプで時間制御は出来るけど、めっちゃ難しいという話。
エンベロープの瞬間的な時間軸で周波数特性が変化するという事実を認識しておくことが大事で、コンプで時間制御をしよう、ではない。
ではこの時間制御 (瞬間的な音の変化の制御) を覚え、応用していくと一体何がすごいのか、もっと詳しく見ていく。
時間制御の極端なわかりやすい例
さて、私個人の命題だとは思うが、確信へと切り込んで行く。
なぜ、自分が時間制御をやりたいか、それはもう、とにかく 瞬間的な制御を行いたい から、である。この瞬間的な制御をすることで、動的制御とマスキング対策をもっと複合的に行うということ。
このアプローチに関しては、EDM 系のサウンドクリエイトの話だと割と有名かもしれないけど、MIX アプローチとしては誰も語っていないと思われるので、時間制御をすると何が起こるのかを見ていく。
実例
とにかくわかり易い例。Kick。
以下は時間制御なし。
そして、こちらの以下の波形は時間制御あり。
違いは一目瞭然だよね。
どちらが好みとか、Kick としてリアルであるとか、の話ではなくて、時間制御を行うとどれだけ音の認識に違いが出るか、という話をしたいのだ。
なにをしたのか。
実は本当に最近出たばかりの Plugin を利用した。まだ Demo 期間中。別に安いから買うけど。
Raising Jake Studios – Advancer
これはただの遅延プラグイン。ただし帯域を Crossover Filter で2分割して、どちらか、もしくは両方を遅延させるという、くっそ単純なプラグイン。ただし、効果は計り知れない。
これを遅延プラグインなしで行う場合、Kick のアタック周波数成分と Sub 周波数を DAW 上で分けて、Sub の信号を Offset する、もしくは立ち上がりを Gate/Expander で遅くする、など。
今回は一つのプラグインで完結出来るものが出たので紹介がてら使ってみた。
これは色々応用が考えられる。
上記はスネアのほとんど Raw サウンド。
下記は 時間制御 を実行したサウンド。
Transient 成分をもっと時間的な軸でスプリット出来る。
別にこれがいい音がどうかは関係ない。自分のアプローチがどう変わるかが重要。
「あれ〜、時間制御すると、まじで EQ とか簡単になるんじゃね?」
そうなのだ。今まで難しいと思えたアプローチが極端に簡単になるんだ。
頭がいい人はマルチバンドダイナミクスプロセッサーの価値を理解出るだろう。
どうしても Transient の成分って LOW の周波数が認識しづらくなる。それは周期が長いせいもあるだろうし、人間どうしても LOW の認知が弱い。
Transient の音を完全にフォーカス (帯域制御+時間制御) しに行けば、桶の中でもかなりの認知のさせ方のアプローチが増える。これを自分で思い通りに出来るとマスキング対策の動的処理すら必要ない場合が多い。
現状の Transient を掴むユーティリティプラグインは Transient 自体は掴むけど、トランジェントの帯域制限と時間制御まではフレキシブルには行えない。コンプレッションやダイナミクスプロセスの場合は結果として時間制御がされている場合もあるが、任意ではなかなか難しい。
聞かせられるベースの音源がないので、紹介できないけど、ベースの音も Transient 成分の高域と低域の時間制御が可能なら、エンベロープを極端に変えずに Low End の帯域をブーストできるようになる。
もちろんこのプラグインは Crossover Filter の音が聴こえるので、そのアタリは許容できるか出来ないかはあなた次第。
もっと音を瞬間的かつ構造的に捉えよう
これらは私が考えるモダンアプローチであるため、不自然と言われればそれまでなのでしょうが、みんな洋楽みたいな音を目指しているのであれば、私のアプローチは普通に洋楽のチャートで聞こえてくる。
スネアの構造に関しても、基音に近い周波数を初期 Transient として考え、エンベロープ制御を高域、中域を空間表現、と 3 バンドに分けて捉えるなどして、アプローチを考えいくことが出来る。例えばアコギなんかも非常に EQ が難しいが、構造を分けて考えたり時間制御を無理やり実行してみたりすると、急に音に対するアプローチが簡単になる場合がある。
歪んだギターもそう、どうしても歪んだギターはダイナミクスが無いので、そこにどうやって変化を付けるか、みたいなことを考えると時間制御でどうにかできないか、と思考できるかが重要だ。
もちろん、ボーカルに関しては間接的な時間制御系として De-Esser を考えることもできる (ただし、ほとんど帯域制限とみなす) し、ベースもトランジェント周波数とトーナル周波数を分けてトラックを作ったりして別々の EQ や Offset を考えつつ、位相のチェックを忘れずに処理したり。
重要な考え方として、単一の音色に対しても、細かい構造的な周波数特性を自分で聞き分けできるだけの瞬間的な認知力と集中力、そして、それらを分けて処理するための数学的思考力、そして、最後にはあなたの感性の素晴らしさ、これらのことが大事かと思います。