みんな大好き、プラグイン比較 【エミュレーション編】

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みんな大好き、プラグイン比較 【エミュレーション編】

みんな大好き、プラグイン比較 【エミュレーション編】 

皆さん、プラグイン大好きですよね。大好きだと思います。なんでかというと、自分のエンジニアリングに自信がないからです。(かつての私もそうでした。) プラグインをたくさん購入している方はただのお金持ちか、プラグインを買うこと自体が目的になっている人、盲目的にプラグインを使えば自分の制作のレベルが上がると思っている人、こんなところが主でしょう。

今まで誰しもが何となくそのことを感じていたと思いますが、こんなことをスパッというここの投稿者、読者に媚びうる気が全くありません。それどころか、いつも読者に毒を吐く畜生っぷり。ネタです。わざとです。笑って許してください。なんでもしますから。

プロは個人事業主として、経費でプラグインを買えますし、年末に減価償却として高い機材買います。またスーパーエンジニア達はお金があるのでとりあえず機材やプラグインを買って使ってダメならアンインストールや中古市場にリリースするだけです。全部使いこなしているスーパーな人もいるかも知れませんね。

NEVE 1073 マイクプリ系エミュレーションを比較


今回は Waves SCHEPS 73UAD Neve 1073Slate Digital FG-73Antelope Audio BAE-1073MP、この 4つ の比較をしました。

WAVES SCHEPS 73


業界スタンダートといってもいい Waves から Andrew Scheps が愛用している SHEP 1073 タイプのモデリングだと思う。詳しくは知らない。

NEVE 1073 系のモデリングのほとんどが、プリアンプの独特の歪、というよりトランス (Marinair か St.Ives) の音です。ですがこのプラグインは非常に EQ が素晴らしく、プリアンプがすごい! という感じはあまりありません。もちろん出力レベルをあげて音量を大きくすれば、エネルギッシュさが増すと思いますが、音を通すだけじゃ良さを感じることはできませんでした…

Drive というモードがあり、これはガッツリ歪ませることができますが、レベルを調整していくと、やはりドライブ感は Preamp とあまり変わりません。ですのでプリとしての使い方はあまりせず、EQ と出力レベルを上げることで最大限威力を発揮するプラグインだと思います。

ちなみにこの Drive モードの歪みは非常に倍音が豊富でこれぞアナログディストーション、というような歪が得られるので、用途によっては非常に重宝されます。

Universal Audio UAD Neve 1073


UAD-2 DSP が無いと使用できないし、プリアンプモデリング?プリのゲイン調整は Apollo Series の Unison プリ機能以外使用不可能っぽい。

そろそろ 20周年 を迎える老舗 DSP Plug-ins library、UAD-2 からは UAD Neve 1073。これも EQ セクションは素晴らしい。SCHEPS タイプより Lo-Fi な印象だが、プリアンプモデリングが Line のゲイン調整のみで、Apollo インターフェイスのマイクプリ、Unison プリでしか使えないのが残念。

NEVE 1290 というプリ部だけのプラグインが既に発売していたようです。全然知りませんでした。Demo ったんですが、めっちゃ使えそうです。これは本物のプリに近い感じのドライブ感が得られると思います。ただ、実機を知らない人にはオススメしません。なにせ実機と同じような動作するので実機の気持ちいいところ知らないと調整が激難です。

Slate Digital FG-73


カリスマドラムサウンドクリエイター Steven Slate が立ち上げた Slate Digital – VMR 付属の FG-73。プリアンプモデリングだが、そのドライブ感がちゃっちい。

カリスマドラムサウンドクリエイター、Steven Slate が手がけるブランド。昔から単体プラグインにはお世話になっていて、FG-X が出たときは、衝撃だった。現在 Everything Bundle に加入しているが、実際に使うプラグインモデリングは 7〜8個。

FG-73 も変化を感じることができましたが、60 〜 80dB のゲイン幅でどう調整するか、大変むずかしいため、ものすごく上級者向け過ぎて、オススメできないというもの。今回の比較の焦点はプラグインの回路を通してどう音が変化するか、です。

Antelope Audio BAE-1073MP


Antelope Audio が 5年ほど前から始めた FPGA で処理させるプラグイン…ではなくハードウェアエフェクト。最近 DAW 上でエフェクトを使えるようにするプラグインを出した。ただし動作はハードということを忘れてはいけない。

オーディオクロックの世界シェアを突っ走る Antelope Audio は 2014年 から独自プログラムの FPGA FX という FX Library をなんとデバイスユーザーに無償で提供している。これはハードウェアベースエフェクトなので厳密にはプラグインではないが、最近 AFX2DAW というプラグインを発表し、DAW 上でこのエフェクトの操作が可能になった。

音は、Native、既存 DSP Plug-ins 製品を置き去りにした。非常に動作がナチュラルで実機に非常に近い。極端に歪ませてもエイリアスノイズが全然発生しないので、嫌なデジタル歪っぽさがまったくない。しかも音を突っ込みすぎても破綻しないのでエフェクト自体は初心者にもオススメという謎なヴィンテージエフェクトライブラリである。

が…こいつも対応したデバイスを持っていないと使えないし、厳密にはプラグインじゃないし、同時処理に限界はあるし、FPGA の動作原理を理解していないと、エフェクトが上手く使えなかったりするので、初心者には敷居が高く、全くオススメでない、というとんでもない矛盾を孕む、エフェクトである。

おまけ Lo-Fi


破壊系プラグイン。実は私が気に入って使っている持っているプラグインはほとんどがディストーション、サチュレーション系プラグインでテープ、真空管、などなどが一番多い。

Digidesign の置き土産、Lo-Fi。非常に単純なプラグインだが、Distortion と Saturation があり汎用性が高い。ビットクラッシャーやレートダウンなどもシンセサイザー音源と相性がよく、100 トラックあったら 80 トラックに挿す、のは嘘だが、それくらいの勢いでよく使うプラグイン。個人的にミックスにおいて、破壊系プラグインがおそらく一番出番が多い。

プラグインの購入の注意点


エミュレーションプラグインというのはぶっちゃけ、実機を知らないとその良さを最初から理解できません。実機の特徴を知らないのに使っても全然意味がありません。パっと見、よくわからない機能がついているのが UAD Fairchild 670 のプラグイン、あれを本物と同じように使いこなせる人はすごいと思います。

実機には得手不得手があり、コンプの場合は独特のアタックタイムやリリースタイム、レシオ設定、などなどがあり、ある程度把握していないと、エフェクトの選択ミスが起こります。だからやたらむやみに買うことをさける、買うなら徹底的に実機の資料を探したり、動作の検証してどのソースに対してどう使うか、などを決め打ちしていかないと、ミックスの時に迷います。

スーパーなエンジニアさんは大量のエフェクトライブラリから的確にソースに対してエフェクトを選択できます。それは実機の音を知っている、毎日 本物の音 を聞いている、などなど理由があります。そんなスーパーエンジニアには簡単にはなれません。環境が違います。なので自分らしさとして使うプラグインはなるべく少なくしたほうがいいと思う。

ミックスにはすべて理由が付きます。なんでこの EQ をしているのか、なんでこのプラグインを使っているのか、例えば、セッションの 100 トラックある中で「なんとなく」な処理をされたトラックは私の中ではありません。

どうしたら上手な選択ができるのか


私も、あのプラグインを使わないとあの音が作れない、とか思ってた時期がありました。それは全くの間違いです。録りの段階で、音の傾向は 90 % 決まります。だから、同じプラグインを使っても同じ音にならないのは、録りが違います。

最近は後処理、というのが大前提になっている気がするんですが、録りの段階である程度、コンプ EQ しておかないと、めちゃくちゃ困ります。だからプラグインでなんとなく後処理するじゃなくて、掛け取りを覚えてほしい…と個人的には感じています。そうしたら基本形のプラグインで事足ります。

取捨選択されてくると大体使うプラグインというのは限られてきます。自分にとっては使いやすいという理由で選んだり、クリエイティビティ、エンジニア能力が上がってくると、自作のチャンネルストリップが出来上がってきます。

個人的には作業を簡略化できるプラグインや人間では不可能な処理を行うプラグインを買うことをオススメ致します。僕はゲートプラグインとリプライスプラグイン、ノイズリダクション、オートメーションプラグインなんかがいいと思います。ちなみに私はオートメーションなんか全然つかいませんがね… (ものすごく細かくボリュームオートメーションとか書いている人はなんのために書いているんだろう…って思ってます。)

キャリアの長いエンジニアほど、新しいプラグインで処理された音を EQ しただけじゃない? っていいます。いや違うだろ、、、って思うときが多いですが、そういうふうに感じるレベルに達しているんですね。自分なら EQ で再現できるっていう自信があるんだと思います。

既存の 基本形 エフェクトで再現ができないようなプラグインを買うべきだなぁって本当に思います。モデリング系はおもったより感動を得られないことが多いです。その点で FPGA FX は感動した。33609 系のプラグイン実機レベルの動作や音するやつ出ないかな… BAE10DCF あるんだけどやっぱオリジナル 33609C がいいなぁ…なんて私でも思ってます。

付属のプラグインを有効活用しろ


WAVES の SSL Collections を使っているエンジニアが多いのが、日本にあるコンソールが SSL 4000E か 4000G か 9000J がほとんどだからです。ずっと使ってきたコンソールと同じものだから感覚的に使っているだけでそれが好きだから使っている人はほとんどいないと思います。

で、皆さん結局他に何使っているのかな〜って見てみると DAW 付属のプラグインなんです。基本形の 5 Band EQ Filter なんですね。コンプもデジタルコンプで普通のヤツ。とくに “これ” といったコンプがあるわけでもなく、使い慣れているので、デジタル EQ で思い通りの動作をさせることができるんでしょうね。私もボーカルコンプは 1176 ではなくて デジタルコンプでやりたいって思っています。1176 の掛かりだと自分の理想とするボーカルコンプの動作をしないからです。

Lo-Fi を紹介したように、ある程度のエンジニアリングの感覚を得ると、もっている普通のデジタルプラグインのほうが、自分の求める音に限りなく近づくんです。もちろん自分の求めている音がそのプラグインにあるのであれば、買うべきなんでしょうが、一歩下がって冷静に考えると、これって今持っているプラグインでも再現できそうじゃね? ってなります。

エミュレーションの場合は独特の動作や倍音があるので、絶対に同じにはならないので実機がほしいでも買えない! ってときは非常にいい選択肢ですが、そのプラグインが本当に実機に近い動きや音がするのか、やはり聞くべきで、実機を知らないで闇雲に買うのは、レベルの低い人が行うことだと思います。そしてたくさんエフェクトを抱えていると、今度は逆にどれを選ぶかで迷子になったりします。プラグインで自分のエンジニアリングが上達するわけじゃないんですよ。

私は、人と同じエンジニアリングなんて 超大っ嫌い なので、Waves は極力使わない。UAD は他メーカーに被りがないものだけを選んで買っています。Waves や UAD は非常に素晴らしいですが、皆さんよく使っているので、単純に新しい制作の仕方を自分なりに模索しているだけなのかもしれませんね。

  • 書いた人: Naruki
    レコーディング、ミキシングエンジニア
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