マスキング対策の EQ なんぞ、クソくらえ!

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マスキング対策の EQ なんぞ、クソくらえ!

マスキング対策の EQ なんぞ、クソくらえ! 

はい、いつになく挑戦的なタイトルを付けました。煽りが大好きなだけです。まぁ、半分くらいは本気ですけど。

記事の中身自体は「マスキング対策の為に EQ を使うんじゃない」って話ではなくて、EQ も簡易的なマスキング対策にはいいけど、もっと他のアプローチしていきませんか? って話をします。

どちらかというと、音響心理学的な視点が多いので、個人的な思考回路をつらつらと説明していきます。いつも言っていることですが、これは数ある手法のうちの一つで、参考にするのは大いに構いませんが、全部鵜呑みにするのはもっと推奨しません。ほとんどは 困ったときのおまじない です。

今まで通り EQ でマスキング対策をすることは非常に有用な場合もあります。しかし、現代はもっと瞬間的な動的制御が可能になっているので「古い手法をやめて新しい手法を取り入れてもっと楽にかつ、制御がばれないように処理して行っていきましょうよ」って話をします。

正味マスキングなんてそこまでシビアに対策しなくてもいいと思います。ただ、楽曲のレベル?トラック数が増えてくるとそうも行かない。あと、なにをフューチャーしたいのか、について音楽的に解釈するなら、マスキング対策は必要。ただし、マスキングのために EQ をこねくり回す必要性はそこまでないぞよ? ってお話をします。

マスキング対策一覧


とりあえず、考えうるマスキング対策を以下に羅列してみる。


音量制御

当たり前ですが、音量でかくすればオケから飛び出てきます。ただ、相対的にマスキングされる音もでるでしょう。


倍音制御

音を認識させたいのであればその音源のエネルギー的な量を増やしてやればいい。ディストーションは非常に有効な手段だと思う。(あまり音量制御と本質は変わらないが、聞こえ方が変わるのに注意)


PAN

当たり前かもしれませんが、2ch の空間の左右を上手く使ってあげて、同時に鳴るような音は別々の配置にしてあげる。人間は左右から違う音が聞こえれば、それぞれ違う音を認識できるだけの処理能力は有しているので、非常に効果的かつ、原始的なマスキング対策だ。

これも元はと言えば LR の音量制御の話にはなるが、誰しも理解する必要はない事柄です。


トランジェント制御

音の粒立ちといえばいいのか、その音の認識の “きっかけ” となる音がオケから瞬間的に飛び出ると、人間は割とカクテルパーティー効果でその音を認識できる場合がある。多少の制御をすることで、その音は認識できる。ただし、トランジェントの場合「そのパート全体が認識できるか?」というと、そうでもないことに注意。

これもトランジェント成分に該当するパスルの音量制御な気がする。原理は大体音量制御なんだろうな。


EQ

マスキング対策 = EQ みたいな思考は常にある。日本では EQ についてかなりマスキングありきで語られてきた気がする。ミックスの本とかブログとかには大体この情報が記載されているし。

このあたりは結構職人技的な意見を抱いている人が多いかもしれませんが、やってることは結局、音量制御と変わりません。それが特定の周波数に対する、Boost なのか Cut なのか、の違いくらいでしょう。


タイミング修正 – Phase shift / Time alignment (または Polarity Invert)

これをマスキング対策だと思っていない人も多いでしょうが、マスキング対策です。 というか基本的にいろいろな音は絶えず打ち消し合っているので、完全な制御は制御は必要ありませんが、瞬間的な制御をしたい場合が多いのでかなり多用する技です。というか基礎。

スネアの Top と Bottom で音の波が反転することはほぼ間違いないです。これを頭で理解できない人も多いでしょうが、簡単に図を書いておきます。マイクが向かい合ってるんだもん、マイクの振動板の揺れが反転することを理解できると思います。

でもこれ、あんまりわかりやすい図でもない気がする…

個人の主張は様々ですが、ボク個人はこれを「位相が悪い」とは 言いません 。そもそもタイムアライメントやフェースシフトでどうにもできない部類の代物なので、極性反転を行います。

あとは、ダブルトラッキングした場合において、タイミングがズレすぎるとフェーズがかった音になりますので、タイミングを調整してあげて音のエネルギーを単に 2 倍することも考えられます。ただ、コムフィルター系のディレイはマスキングにおいていい結果を生む場合があるので、なんとも言えない…

あとは、わざと発音タイミングをずらして、瞬間的な音の同時再生を防ぐというか、回避することもあります。これらは EDM 系の初歩的なチュートリアルでよく解説されるものですが、生楽器系を扱っている人にとってはあまり馴染みがない場合も多いです。


Ducking (ダッキング)

正確な制御はボリュームオートメーションを書いたり、フェードを書いたりしますが、エンジニアが言う サイドチェーンは Ducking のことを指し、External Side-chain 機能だと思って間違いないです。

サイドチェイン機能とひとくくりに言えないのは、Internal Side-chain と External Side-chain は違う動作をします。Internal SC はその内部信号のコンプが反応する詳細を設定する項目ですが、External SC は外部からやってくる信号をトリガーとしてコンプの動作を実行させます。

このプラグインを 7-8 年使ってきていますが、ようやくコツを掴んで来たと思います。マジで Pro-C2 は難しい。

非常にわかりやすい設計をしているのが fabfilter の Pro-C2。この子は SIDE CHAIN と書かれたセクションの中に In と Ext がある。それぞれ Internal SC と External SC のことで、Internal セクションに Side Chain 用の EQ (Filter) があり、なおかつ、External セクションにも External 信号に対応する Side-chain 用の EQ (Filter) 機能を実装している。

言葉にすると「???」だが、External で入力される信号に対しても多少の EQ や Filter を有効に出るという機能だ、これはコンプされる実音には影響しない。詳しく説明してたらキリがないので割愛。


モジュレーション

これらは正確にマスキング対策というかは、正直議論の余地はあると思いますが、ここで一応紹介しておきます。

たとえば Chorus や Phaser は Delay と LFO の仕組みで成立しますが、これらの効果により、非常に周期的な変化が生まれます。人間は実は周期的なものに敏感で、一定の間隔で変化するものはかなり心理的作用を及ぼします。

これらがマスキング対策というかわかりませんが、音をオケの中から認識させるための、ミックステクニックの一つです。自然界には存在しない音は基本的に聞き慣れていないので、違和感を感じて逆に心理的に強く認識してしまったり意識していないのに周期的なゆらぎを脳が観測しまう、という感じでしょうか。


リバーブやディレイ

これもマスキング対策という言うかは不明ですが、人間リリースの長い音はかなり認識できます。ですからトラジェントとリリースの関係が素晴らしい音はかなりオケの中でも映えます。ただし、音が伸びてる (全音符系の譜面の音) と、音のリリースは異なる要素の内包するので、ここではパルスに対する余韻のことをリリースと言っていることに注意です。


その他

一番は楽器の種類を変えるとか、譜面を変えるとか、同時発音数を減らすとか、そもそも音がぶつかりまくるアレンジをしないということです。

具体的にどんな対策を取れるのか?


色々語っていますが、じゃあどうやって具体的なマスキング対策をすべきなのか? それをみんな聞きたいわけでしょう。とりあえず、デメリットを多めに上げつつ紹介します。


音量制御の難しさ

例えば、単発で出てくる系の音、打撃音系は音を大きくしてあげても瞬間的にいなくなるので、音を大きくだしてもあまり曲の邪魔にならないのです。が、ただ聞こえるだけではダメな場合もあります。生楽器の打楽器系の音はリリース表現も大事なため、単に音が大きいのではなく、リリースの制御が重要になります。

そしてリリースを聞かせようとすると、瞬間的にそこからいなくなるわけではなくなるので、曲の邪魔をし始めます。マスキング対策の為に音を調整して大きくしたのに、逆に他の音をマスキングし出すことをがあるので、音量制御だけでは、なかなかマスキングを回避することは難しそうです。

また、アレンジにおいて、ピアノとストリングが同時に鳴っていることはめちゃくちゃ多いのですが、これらは瞬間瞬間にいなくなる音があるわけではなく、基本的にアンサンブルとして聞かせる必要があったりします。

だから個々の音をフューチャーする必要性は薄いですが、音量制御だけはそれぞれの音を認識させるためには難しいと思います。ピアノもコードを進行して、ストリングもレガートだった場合、ピアノとストリングを分けて考えると痛い目見ます。ピアノのアタックだけ重視して余韻はそれこそ、なかなか制御不能なので、基本マスキングありきで全体を捉えることの方が多いのかもしれません。

なので、音量制御をしてもっとコントラバスと聞かせたいって思っても、なんか全体の音量が上がっただけで聞こえ方に変化はないことが多いです。

このあたりはアンサンブルを聞かせたいのか、聞かせたくないのかに左右されるので、エンジニア的には、「ミュートしたほうが早いんちゃうか…?」とか思っちゃう場合もあります。でもいないといないでなんか味気ない。

そんな部分もあるわけで、音量制御は瞬間的に出てくる音にはいいけど、連続的に存在する音にはあまり効果的ではないということを、多少は理解して頂けたと思います。もちろん、めちゃくちゃ高度なボリュームオートメーションを書いた場合は全く当てはまりませんけど…


倍音制御

これは個人的には割と多用します。困ったら歪ませとけばええやろ! 精神でミックスはしています。

というのも、若干歪ませる行為は全然ありです。倍音の出方が変わるので、音像が若干上がります。すごい勝手な解釈ですが、Distortion は若干音の位置が上がって、Saturation は若干音の位置が下がります。もちろんその特性によりますけど。

なので、若干上下に音の配置を変えたい場合は Distortion や Saturation は有効です。ただし、やりすぎに注意が必要です。また、当たり前ですが全部歪ませていけば、結局全体の倍音の量がまた均一化していき、マスキングのための味付けではなくなります。

このあたりが難しい調整ですかね、こっちを歪ませたらあっちも微調整したくなって、歪ませちゃった。なんてしていくと、結局、マスキングの為に歪ませていたら、全体のバランス感が元に戻っちゃった。なんてこと多分往々にして起こりえます。


PAN

これは デメリットが唯一ないマスキング対策 です。しかし、PAN を振ったからといってマスキングが完全に解消するわけではないところが、こいつの難点でもあります。また、モノ互換を考えた場合、考えなしに音を LR の端に追いやってしまうと、事故ります。事故音源となります。

しかし、PAN は全体的に常に鳴っている音に対しては非常に効果的です。音量制御でどうにかならない場合は PAN を使いましょう。極端な例ですが、ピアノは左に寄せてストリングスを右に寄せるとか、全然ありだと思います。

あと、M/S とかステレオイメージャーとかあると思いますが、僕は正直全然使いません。たまーにステレオ素材のバランス修正のために M/S イジったりステレオ系プラグインで若干修正するくらいです。それはマスキング対策というより、音源の微調整の話なので、割愛します。

ただ、PAN は極めてください。PAN がもう完璧でしょ? ってくらいミックスしてから「マスキングどうしても気になるなぁ…」って思ったら他の手法に手を出してください。PAN 最強


トランジェント制御

これは、正直くっそムズい。難しいのです。たしかにトランジェントが見えるミックスができるかもしれませんが、曲として崩壊する場合もあります。そしてトランジェントが見えるけど、見えるだけでなんの楽器なのかさっぱりわからない、なんてことは日常左近寺です。日常茶飯事です。(゚)(゚)

もちろん、わざとトランジェントを減らして、引っ込めるというアプローチもあります。コンプで制御するのか、トランジェントシェイパーとか使うのか、手法はいろいろありますが、トランジェント制御すると何が起こるのか? を事前にみっちり修行して体に覚えさせる必要があり、これはマジで高度な技術というか、トランジェントを制御することによって一体なにが変わるのか、を理解しないと大怪我する原因になります。

ただの Attack と Sustain の制御でしょ? って思っていたら大間違い。結局はリリースの聞こえ方の問題に発展するので、いろいろ複合的に理解した上でマスキング対策として考えなければいけない。要は、こいつをマスキング対策に使うのは、かなり高度なことなので「やめておけ…怪我するぞ…」という話だ。


EQ

これは、ある場合においては別に推奨 するし、ある場合においては全く推奨しない、というものだ。

まず、通常の EQ というは「固定」であり「可変」しないということだ。マスキングのために EQ を施した場合、そのトラックはずっと EQ がかかりっぱなしだ。

つまり、EQ でマスキング対策する場合は「常に同じところを鳴り続けているトラック同士ではなければいけない」ということを肝に命じてほしい。

これは理解できるだろう? マスキング EQ のためにトラックのバランスが崩れたら元も子もない。ギターとボーカルが常に同じように同時発音しているかと言うと、絶対にない。どんなラップ曲だよ!? ってレベルじゃないとありえない。

つまり、よくあるボーカルのためにギターの中域を EQ してあげてマスキング回避するなんていうテクニックは絶対にやってはいけないということだ。(もちろんこれは上記の条件を遵守するという前提に基づいた思考である。)

私はこのミックスにおける心構えで、この事実は割と大事だと思う。面倒であれば EQ すればいいと思うし、マスキング EQ しても特にギターのバランスは悪くないなら、してもいいと思う。けど、マスキング対策の EQ が気に入らないなんてことはよくあることだ。その場合はマスキング EQ しない。それでいい。

あとは普通に High Pass Filter や Low Pass Filter、Band Pass で帯域を棲み分けみたいな EQ は全然ありだと思います。「ローカットすんな」ってよく言うけど、僕はめちゃくちゃローカットしまくります


タイミングやフェーズ制御系

これは正直初歩の初歩であり、マスキングどうのこうのの前にやるべきこと。タイミング修正や同相のチェックなんてやって当たり前。フェーズの調整しかり、若干のディレイ調整は普通に行うことであり、マスキング対策云々ではないと思う。

ただし、例外もある。それが、Super Separator 等のマスキング、というかコムフィルターを利用したテクニックだ。これらについてはここでは長くなるので解説はしないが、マスキングを利用した技術があることを知っておくといい。

位相をあわせるなんていい方よく言いますが、こういう情報系の記述でオシロスコープとにらめっこしながらフェーズ調整している人、僕は見たことないです。僕は EDM 系とか Kick とベースの関係を音でわからないときは普通にオシロスコープ見ます。

このような便利オシロスコープがあるので、Sum の波形見たりして調整する。
Windows VST には最強のオシロスコーププラグインがあるのだが、mac 使いのため Mega Scope 使ってます。

あと複合的な周波数が混ざっている音源に対して僕はフェーズシフトは All-pass Filter 系のプラグインではないと対処は不可能だと思っています。それ以外は基本的にタイムアライメントです。ドラムの位相を揃えよう、なんてよく聞きますが、それ、タイミング調整や。つまり後からマイクの距離イジってることと一緒。


Ducking (External Side-chain)

ダッキングは、立ち上がりの制御とリリースを制御を間違えなければ 完璧なマスキング対策 になります。

なぜかと言うと、Ducking は本当に完璧に近い音量制御が可能だからです。なぜかというと、瞬間的なマスキングに対して容易に対処できるので、聞いている人に気づかれないレベルでの音量制御が可能です。

例えば、よくある「スネアが抜けない」問題。

スネアの信号をトリガーとしてボーカルトラックに瞬間的な Ducking を有効にすることはよくあります。ボーカルの音量がスネアが鳴るたびに下がって、変なポンピング現象を起こす、と考えている人も多いかもしれない。

しかし、それは制御が下手なだけで、アタックとリリース値を適切に調整を行えば全く違和感なくボリューム制御が可能。しかもリダクションの量はコンプで調整可能なので、ボーカルに対して一定の音量変化も与えない。つまり、リダクションしたくない音量の場合はしない。だってコンプだもん、リダクションのゲインは可変でしょ?

とにかく、マスキング対策したい! と思ったら Side-chain 機能を使おう


モジュレーションやディレイ、リバーブ

これらはマスキング対策というより、マスキングを生む場合もあるので、なんとも言えないのだが、聞こえては欲しくないけど、マスキングされるとちょっと音像的に困る、というシチュエーションでは役立つ。

例えば、ボーカルコーラス。これらは主張してしまうと結構メインのボーカルのバランスというか存在がちらつく。例えばだが、ピッチをわざと本筋とはずらしてモジュレーションの類のエフェクト感を演出し、ボーカルのオケ馴染みを一層際立てるとか、マスキングはしてもいいんだけど、埋もれてしまうと意味がないようなトラックに使うものと考えている。

ギターソロなんかも結構いい例。ギターソロ単品でオケから鳴らしてもなんか味気ない場合が多い。そこでちょっと汚したディレイをかますとあら不思議。わりとオケから抜けてくる。マスキングとはちょっと違うかもしれないが、存在感を演出したい場合にはこれらのエフェクトはバンバン使っていこう。


その他

実は重要なのは、瞬間瞬間における制御で、それが可能なのは External Side Chain が可能なプラグインたちです。とくに最近は有用なプラグインが出てきているので、単にコンプレッサーダッキングではない特殊系を以下に紹介していく。

特殊なダッキング



oeksound – Soothe2

最近は “おなじみ” の Soothe 2

oeksound の Soothe2 は SIDECHAIN モードも搭載。サイドチェーン信号をトリガーにして Soothe2 の強力なレゾナンスサプレッサーが炸裂する。もとい、このプラグインはかなり癖の強い動作するので、動作になれるまでは非常に大変かもれないが、上記は Kick の信号に対して、Bass の信号をリダクションするというものだ。

Soothe 2 を使えば特殊な技術は特に必要ない、自身が External 信号に対してどこを削ればいいかさえわかっていれば、あとは Attack と Release は限りなく早く違和感のない設定をするだけだ。ギターの場合は中域を狙うことが多いだろうが、ギターのポイント EQ することを考えるより、Soothe 2 に「この辺リダクションして〜」手伝ってもらうことを覚えよう。


BABY AUDIO – Smooth Operator

あんまり利用人口多くなくて僕は悲しい。

正直 Soothe 2 が誰にでもオススメし、ある程度の制御を覚えたら「プラグインにおまかせ」でいいのに対して BABY AUDIO の Smooth Operator は完全に玄人向けだ。なんせ制御方法がマジで独特だから。

このプラグインは簡単に言うと「過度に溜まった周波数を減衰する」プラグイン。なので音痩せしたと感じる人も多いかもしれない。ただ、音がクリアになるので、録音された若干ぼやけた音像の音をかなりモダンにクリアに仕上げてくれる。聞こえ方が悪い人は上手く Focus パラメータと Output を操ってほしい。

個人的には調整方法を覚えたらこいつを使うことを止められなくなってしまった。非常にコントロールが難しく、直感的でもなく、操作性も良くない。ただ、効果は図りしれない。

これも SIDE CHAIN ボタンが右上にある。しかも リンクボタンアイコン というマジで不親切なアイコンだ。普通はステレオリンクだと勘違いするだろ。あと m のボタンがあるが、Classic Mode と HI-RES モードの切り替えができる。

制御が難しい人は CLEAR START から水平にスレッショルド値を下げるだけでいい。

非常にスレッショルド値のポイント制御が難しい。なのでプリセットを使おう。64 の 初期プリセットがガチで優秀 なので、プリセットを利用してスレッショルド値を変えていこう。操作方法を覚えれば狙った帯域の溜まりを解消できるぞ。しかもこういったプラグインにありがちなシュワシュワすることもない。

おそらく僕のブログを見に来る人は Gullfoss ユーザーが多いと思うが、音の痩せ方は近い。ただ、自分で任意の周波数の減衰ができるので、個人的には Gullfoss より全然いい。あっちは EQ だけど、こっちは完全に抑えに行くので痩せる感覚はあるものの、素材がクリアになる。

そしてなにより、こちらのプラグインにはもっとピンポイントを狙える自由度がちゃんとあることだ。EQ でクリアにできない時はこれを使うとかなりちゃんとした音にもなるし、External 信号を入れればマスキング対策にもなる。

サイドチェーンで利用するのはこれまた結構癖があって掴むのが難しいが、非常にナチュラルに音が変化するので、2mix 上ではほとんど気づかないくらい非常に自然にリダクションをつけることができる。実際に ON と OFF で効果をかなり感じるのに、オケ側で聞くと全然原音に対しての変化が分かりづらい。非常に嬉しい。

そこまで高いプラグインではないので、デモしてみるといい。ただし、何度も言うが、非常に難しいプラグイン であることを伝えておく。


Sonible – smart:comp

若干歪みやすいという特徴があるが、全自動で Sidechain 設定してくれるぞ!

他の追従を許さない、現状最強の Ducking Compressor。

なにがすごいコンプなのか。このプラグインは Spectral Ducking という機能がついている。これは External Sidechain に入ってくる信号のスペクトラムに応じて信号をダッキングするというものだ。

もちろんそのスペクトラムにも Internal SC が可能で、focus のタブから Low Pass と High Pass の設定ができる。完璧といっていいだろう。通常のコンプではこれは不可能だ。現状唯一無二。

ちゃんと Ducking Spectral に LHF がかかっている。

いい忘れてはいけないかもしれないが、これは AI コンプだから、設定は AI におまかせでいい。もちろん AI が設定した値に文句があれば自分で調整すればいい。基本的にスローアタック、ショートからミッドリリースになるので曲の BPM や楽器の減衰等に合わせて調整していこう。

じみーに、Soft limit の機能がいい。


fabfilter – Pro-Q3

意外と忘れがちだけど、Side Chan EQ できるんですよ…

何だお前か、と言われそうな EQ。そう Pro-Q3 だってサイドチェーンで EQ できるんだ。一応、簡易的な Dynamic EQ 機能が備わっているので、External の信号に合わせて Dynamic EQ が動作するぞ。正直普段の EQ の延長で Ducking できるんだ、非常にとっつきやすいとは思う。

これは EQ の延長でって考えると利用価値はある気がします。でも別の Dynamic EQ とか Pro-MB 使っちゃう場合はありますよね。


Three-Body Technology – Kirchhoff-EQ

難しいパラメータばかりだけど、音は一番いい気がするのよね。

非常にユーザーが増えていると思うが、この EQ を使いこなせる猛者はどれほど存在するのだろうか?

僕はこの EQ は Dynamic EQ としての利用と Bus または Master EQ 以外で利用はほぼありません。だって Pro-Q3 のほうが便利だし起動早いし、見慣れてるし、操作楽なんだもん…ごめん…

とにかく Dynamic EQ の部分が意味不明だ。だからマスキング対策の微調整にはもってこいである。しかも、ほんと派手に EQ してもいやらしくない音だし、音像崩れにくいし、音クリアだし…みんな褒めるのわかる。

とにかく Dynamics の制御は非常に多岐に渡る。とにかくマスキング EQ なんで EQ でどこ削りたいか決めたら Above パラメータで調整。そして Pro-Q3 とは異なり Compressor と同じように Attack と Release を決められる。偉い。

そして極めつけは Detect と Relative とかいう謎のパラメータ。マニュアルもなーにを言ってるのかよくわからねぇぜ、くらいのパラメータなのだが、Relative 意味はそのまま相対的なエンベロープへ干渉し、ダイナミクスの調整を可能にするものです。よくわからん、でいいです。

Offsets はトランジェントに対して過敏に反応するようになります。100% に近づくとソフトな音になります。(正直デフォルトの値から動かす必要性はあまり感じないけど、もっとエンベロープへ干渉したい場合は微調整できるよって機能。)

なんにせよ、非常に高性能でやっぱエンベロープへ干渉したいっていう超プロユーザー向けの機能が結構やっぱり役に立つっていうか…こいつやっぱすげぇわ。


 fabfilter – Pro-C2

忘れがちだけど、このコンプの制御がマニュアルでできるなら選択肢として良い。

地味に役立つのが Pro-C2、上位のリダクション系プラグインと比べると幾分狙った周波数をリダクションするみたいなことはできないが、HOLD のパラメータが役に立つ。楽器系より実は Electro 系の相性が抜群にいい。そんなところ。

かなりパラメータは色々いじれるので Pro-C2 マイスターであれば External での利用も結構面白い。ただ、やっぱ難しいよこのコンプ。


fabfilter – Pro-MB

細かいダッキングはできないけど、キルヒホッフじみた機能はある。

マルチバンドコンプレッサーなんだけど、ちょっと融通聞くので非常にいい。大胆大雑把に、のシチュエーションには気軽に利用できる。だけど、やっぱ細かい機能がついているプラグインに言ってしまうのはよく分かる。どちらかと言うとこいつはマルチバンドエキスパンダーとしての利用価値がすこぶる高いので、出番がない人は多いかもしれない。


Kilohearts – Disperser

これ安いのでオススメ。

これはサイドチェーンプラグインでもなんでもないんですが、All-pass Filter 系は結構利用価値がある。

例えば Bass の音は結構複合的な周波数特性を持っています。このプラグインは分けられた帯域の Phase をシフトしてくれるプラグインで、SSL Native では X-Phase というプラグインがある。あっちのほうが高機能だけど、僕はこれで十分かな。しかし X-Phase はいいぞぉ。

若干低域がもたついたり、前に出ない Kick や Bass の位相をフィルターでイジってフォーカスを合うようにするプラグインだ。ふつーに掛けすぎると簡単に音像崩れるので、これがマスキングに役に立つかどうかは、素材と調整次第だが、アルトベンリなプラグインなので紹介しておく。

こっちは SSL Native の X-Phase、きもちぃい!

時代は動的制御へ


結構静的な挙動に対するアプローチのチュートリアルというか、EQ の使い方、コンプの使い方、みたいなものは紹介されていますが、時代はどうやって音楽に動的制御を適切に組み込んでいくか、が勝負です。昔からエンジニアさんが鬼のオートメーションを書いていたのは、静的プロセスでは音楽的表現が難しいからです。

時代は Zero Latency でプラグインをどんどんインサートできるようになり、遅延ズレもほぼありません。積極的に動的制御を行ってください。


マスキング対策は動的制御が有効なわけ

いつも私は音楽について、とりわけミックスアプローチについては、常にその瞬間瞬間で考えていこう的なことを有料記事では語ってきた。今回の内容は単に煽りたかったために有償の記事ではないが、どうやって瞬間瞬間を制御していくとなると、動的プラグインを利用していくしかない。

全てにオートメーションなぞ書いてられないため、ダイナミクスを制御するプラグインを常に有効にしていくわけではなく、その瞬間瞬間に有効にできる External Side Chain を多用していくわけだ。なぜかっこいいミックスができるのか、と考えた時、そこには瞬間瞬間の制御とプロセスがあるということを知ってほしい。常に EQ やコンプがかかり続けている楽曲はわりとのっぺりしがちでつまらないものに感じてくるだろう。(もちろんジャンルや曲に左右される。)

もう少しわかりやすく言うなら。EQ だってその瞬間瞬間で変わってもいいし、実際 EDM 系ではそんなことは結構普通のアプローチになっている。そういう瞬間のアプローチをどうやって自分のミックスに昇華していくかは、各々の考え方と試行錯誤だと思うが、是非、動的制御を覚えてほしい。

動的制御ができたら次は時間制御を覚えていこう。次回のネタにするかもしれません。

Engineer: Naruki

海外の仕事半分、国内の仕事半分くらいの割合でエンジニア活動しています。主に映像作品に使われる音声をよく担当しています。海外メーカーと契約して色々活動しています。

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  • 書いた人: Naruki
    レコーディング、ミキシングエンジニア
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