ヘッドフォンインピーダンスのお話

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ヘッドフォンインピーダンスのお話

ヘッドフォンインピーダンスのお話 

この内容はエンジニアリングのインピーダンスマッチングの話をそのままヘッドフォンとアンプの話と絡めているので内容をかなり端折っていますし、AMÁRI の可変インピーダンスと絡めていて、一般の人向けの内容じゃないので、ごめんなさい。あくまでエンジニアリングのインピーダンスマッチングの延長の話です。一般の方々と視点が異なりますのでご注意ください。

インピーダンスと聞くと、ロー出し、ハイ受け ということをすぐ連想すると思います。基本中の基本ですね。アシスタントが長いとこういう基本をかなり気にします。間違ってはいけない、起こしてはいけないミスですから。

この ロー出し、ハイ受け がわからない人はこのページで解説はしませんので、回れ右するか、自分で調べるか、それかそんなことを無視して読み続けてください。初心者向けに記事は書いていないので、予めご了承ください。

音響機器のインピーダンスの基本


ご存知の通り、抵抗です。厳密にはインピーダンスの日本語訳が無いため、インピーダンス = 抵抗 を同義として扱っているし都合がいいので、大体の認識となっています。

英語ではちゃんと ResistanceImpedance に分かれています。直流の抵抗値と交流の抵抗値 (電圧と電流の比) ということになります。

ここで気をつけるべきは、直流は電圧が一定で抵抗値 (Resistance) も一定です。つまり電流も一定です。交流の場合、周波数が変動し、そして電流も変動します。つまり 抵抗値 (Impedance) は常に変動 し続けます。※ここではヘッドフォンインピーダンスが周波数で変動するという意味。厳密にはコイルやコンデンサの話らしい。厳密なことは詳しくは語れません。特性は こちら で。

わかりやすい解説ページ。
http://www.ceres.dti.ne.jp/~warnerg/SHOBI/TOSS/09/imp.htm

ロー出し、ハイ受けの基本


抵抗値が高い信号を低い抵抗値回路で受けると、ハイ落ちして信号レベルが極端に下がります。当たり前ですが、たまに忘れます。これは絶対にしてはいけないことです。ただし、ローインピー録音をワザとやったことは過去2度ほどあります。

レコーディングでは、600Ω が基準になっていて、普通は気にしなくていい。マイク受けなのかライン受けなのか、Hi-Z なのか、この3種だけ気にしてれば普通は問題ない。

dBu の単位で機器は基本的に単位を扱っているが、これは信号の電圧のことで、基本的なオーディオは電圧で考える。大きい電圧が扱えれば音もいいと考えても、あながち間違いではない。電気利得を考えるならば。

ヘッドフォンのお話


Sony が MDR-CD-900ST の後継機として MDR-M1ST を発表しました。実に 30年ぶりのモデルチェンジ? 新型発売です。

MDR-M1ST – 1989年 今から 30年 に発売されて、国内ではその地位は不動であり他を譲らなかった MDR-900ST に敬礼。

900ST はスタジオモニターヘッドフォンのスタンダーです。(国内だけ) 欧米ではスタジオによって千差万別ですが、AKG や Audio Technica、FOSTEX が多い印象でした。最近の事情は知りません。

ちなみに、海外だと MDR-7506 のほうがスタンダードです。

MDR-7506 + MANLEY

MDR CD-900ST の評価


私もこのヘッドフォンで育ちました。別にフラットでもなんでもない、普通のヘッドフォンです。とにかく聞き疲れするヘッドフォンです。だって観賞用じゃないからね。別に不満もないですが、好きでもないヘッドフォンです。

あったから使っているだけで、別に愛着もないというかわいそうな子です。まぁノイズ探しとかには重宝してました。低域の確認も耳に押さえつけながら確認すれば問題ないレベルだと思います。

値段的にもルックス的にもこっちでいいんじゃね? ってなるよね。

ただ、値段の割にって感じのヘッドフォンです。30年前の設計なので、現代には合わなくなっちゃったのかもしれません。ただし、ヘッドフォンアンプがしっかり設計されていて、鳴らせるモノなら非常に良い音出します。

つまり、AMÁRI 最強。この前 900ST で AMÁRI の音を聞いたんですが、マジで これ 900ST か!? ってレベルの音出します。結局は再生機よ。

いい音とか悪い音とかは、正直スタジオではあまり関係ありません。スタジオスタンダードとして 30年間も君臨し続けたことが称賛に値します。つまり 30年間 もこれに対応するだけのヘッドフォンが現れなかったことがこのヘッドフォンの完成度を物語っています。素晴らしい。そしてお疲れ様。生産も終了かな…?

MDR-M1ST の情報


  • 型式 : 密閉ダイナミック型
  • ドライバーユニット : 40mm, ドーム型(CCAW ボイスコイル)音圧感度 : 103dB/mW
  • マグネット:ネオジウム
  • 再生周波数帯域 : 5-80,000Hz(JEITA)インピーダンス : 24Ω(1kHz にて)
  • 最大入力 : 1,500mW(IEC※) ※ IEC(国際電気標準会議)規格による測定値です。
  • ヘッドフォンケーブル : 約2.5m ステレオ標準プラグ
  • 質量 : 約 215g(ケーブル含まず)

ヘッドフォンのインピーダンスを音響のセオリーで考えてしまう


おそらく、エンジニアリング的に 25人 に 24人 が、ヘッドフォンのインピーダンスも インピーダンスマッチング が正義だと思っていると思います。スピーカーやキャビネットはインピーダンスマッチングしろって習いました。だからヘッドホンも必要だと思ってしまうし、私も AMÁRI の可変インピーダンスがマッチング目的なのか? と疑っていました。

スペックをご覧ください。インピーダンス : 24Ω (1kHz にて)と親切に書いてあります。

先程も言いましたが、気づいると思いますが、ヘッドフォンのインピーダンスは変動します。アンプは一定のはずです。(ヘッドフォンによっては周波数でインピーダンス変化するしヘッドフォンごとのインピーダンスが違うのでマッチングという概念が音響機器と比べて難しい)

ヘッドフォンがどんな特性が知りませんが、アンプは例え出力が 1Ω であろうが 100Ωであろうが、しっかりドライブできるものであれば、インピーダンスマッチングは基本的に関係ないそうです。AMÁRI の可変インピーダンスはマッチングではなく別の意味があるのかな。

インピーダンスマッチングのロー出しハイ受けですが、ロー出しの値に対してハイ受け側は 10倍 くらいの抵抗で合わせていることがほとんどです。機器によってまちまちですが、10kΩ くらいで大体受けています。ヘッドフォンのインピーダンスなんて精々 16Ω〜150Ω です。

音響機器の 600Ω 出し、10kΩ 受けとヘッドフォンのインピーダンスマッチングを同義で考えると 1Ω は妥当だと思える (比率はまちまちで10倍とか100倍らしい)、だから基本アンプ側は低インピーダンス。もちろん、スマフォなどのヘッドフォンアンプは基本的に貧弱なので、ヘッドフォンのインピーダンスによって音量レベルが上がらないとか、そういうことが起こるが、それマッチングの問題じゃなくて 出力パワーの問題 で、パワーがあればアンプのやヘッドホンのインピーダンスは関係ない。

アンプが肝心なんだって。

アンプの場合、出力抵抗が大きければ、それだけ効率が悪くなるので、マッチングっていう考えではなく効率を考えるべきで、理想的な出力抵抗はやはり、 である。ロー出しハイ受けの比率を 10倍 で考えれば、300Ω や 600Ωの高インピーダンスヘッドフォンに対して、アンプ側は 30Ω とか 60Ω で出力してやればいいんじゃないと考えちゃいます。ただ、ヘッドフォンインピーダンス関係なく鳴らすことを考えると 0Ω が正解で、抵抗値を高くする理由は設計者しか理解できないかもしれません。

そこで AMÁRI の可変インピーダンスについて考えてみたが、抵抗が小さいヘッドホンなどを大きい抵抗を持つヘッドフォンにアンプ側から擬似的に見えるような機能なのでは? と考えた。ただし普通に考えて電圧はだいぶ下がるだろうし、これが正解だとは思えない。やはり音色変化を楽しむもので、もしかするとインピーダンスによってヘッドホン再生に良い影響を及ぼす可能性がある? もしかすると抵抗値が近くなることでスピーカーと同じような挙動にしたかった? なんて考えがあるのかもしれない。

そう考えるとスピーカーは大体、8Ω に合わせてメーカー側が設計しているのでマッチング自体は悪いことではないと思う (思いたい)。AMÁRI の可変インピーダンス機能は、ヘッドフォンにあった最適な抵抗値を自分で見つけられる楽しさや、インピーダンスの変化による音色変化を堪能することが出来る。よくわからんがメンブレーンウェイト補正がどうのこうのあるんじゃ? 僕には理解できない領域なのでだれか解説してくれ。

ヘッドフォンアンプの出力インピーダンスってどれくらい?


僕はヘッドフォン界隈には全く詳しくないですが、おそらく高級ヘッドフォンはハイインピーダンス製品が多いと思います。(ハイインピーダンスといっても 300Ω とかだから、エンジニア視点だと低インピーダンスなんですけどね。)

で、おそらく、高級ヘッドフォンアンプの出力抵抗は高めの設定です。つまりインピーダンスが低いヘッドフォンは基本に従うと、鳴らしてはいけないと考えてしまう。(ロー出しハイ受け) ※一部の特殊製品や昔の製品のみで最近は 1Ω とかが普通だって。最近だと高めで 30Ω、昔だと 120Ω くらい。

Web 上には様々な資料があります。
https://umbrella-company.jp/contents/wp-content/uploads/active-zero-impedance-drive.pdf
https://sandalaudio.blogspot.com/2016/07/blog-post_9.html

アンプの場合の電気の考え方

アンプの場合、インピーダンスマッチングは無視して考えることができるようで、スピーカーというのは「仕事」をしています。だから 電圧 ✕ 電流 = 電力 が基本になります。つまり、電圧が高く、より電流が流れる回路の抵抗は限りなく低く、より仕事をします。よくスピーカーが動くって考えてもいい。アンプのスペックってよくワット数で表記されてる。

そしてヘッドフォンは基本スピーカーと同じ原理で動かしています。アンプから電力をもらってユニットが動いている。その時アンプ側の抵抗が大きければ、仕事量は減ります。極端に弱い電力だった場合ヘッドフォンがうまく動かなかったり、性能を発揮できないってことですね。逆に低すぎて電流不足で歪む場合もあるらしい。難しい。

だから電圧だけで考えている、音響機器とは考え方が異なるということを知るべきです。

ヘッドフォンのインピーダンスマッチングは考えなくていいようだ

最初の方に言いましたが、周波数でインピーダンスは変動します。

MDR-M1ST は 1k で 24Ω って書いてありました。そしてインピーダンスは周波数で変動します。つまり、もしかしたら周波数によって 1Ω のときもあれば、100Ω のときもあるかもしれません。だからアンプ側でインピーダンスマッチングは考えるのは普通であれば蛇足のようだ。ましてやヘッドフォンが低インピーだからといって音質が悪いわけでもない。電流の限界値とかあるけど、結局アンプもヘッドホンも抵抗値は設計に左右されているだけだ。

(おそらく 24Ω がアベレージでその値以下にはならないと思う。1Ω というのは測定してないのでもしかしたらの話で、出ないはず)

AMÁRI なんかは ネガティブインピーダンス が可能で、面白いほどヘッドフォンが動くよ。抵抗値小さいほうがガンガン動かせる。アンプの抵抗は 0Ω であれば電圧がインピーダンスで変動しないので理想的だと思う。

また可変インピーダンスの意味を考えたとき、設計者の意図が音色変化なのか、マッチングなのか、本当の意味はわからない。ここでの仮説はただの妄想だ。

しかしヘッドホンの抵抗値が低いからといって製品の質が悪いみたいな内容や音質に悪い影響があるとは心底思えない。結局は鳴らす環境次第ということだ。M1ST 非常に良い製品だと思うよ。どんな再生機でも鳴るような設計で次世代スタンダードになるかも?

ネガティブインピーダンスのヤバさ

面白いことに、AMÁRI 関連の日本語での情報を見てみましたが、誰もヘッドフォンインピーダンス 0Ω のことや、それ以上、ネガティブインピーダンスについて関心を頂いていないようです。エンジニアや、多少回路に知識がある人からしたら、抵抗値がマイナスの領域??? マジで? どうやって実現してんの!? っていう反応を見せるんですが、そんな反応を見ていない。実際抵抗値 0Ω なんて不可能って言われてきたものだから。

インピーダンスを考えるより、ヘッドフォンアンプの出力レベルで考えたほうがいい。抵抗値はなるべく低く、そして出力電圧が大きければヘッドフォンアンプとしては、仕事量が大きくなる。

もちろん、インピーダンスが非常に高いヘッドフォンは専用のアンプがあったりするので、そこではマッチングに関する特別な設計がしてある可能性があるので、マッチング自体悪いことではないと思いたい。現代でも 30Ω、昔は120Ω などのアンプが存在した以上何かあるはずだ。設計者はインピーダンスの設定で出音が変化することを理解しているだろうし、調整しているだろう。

また、最近の売れ筋ヘッドフォンアンプの仕様を見たけど 1Ω ばかりだった。最近は低インピーダンスの製品が増えたので設計者はイヤフォンなどでもドライブさせることに注力しているように感じる。

だからこの小さいインピーダンスの領域でマッチングを考えてもいいし無視してもいいと思う、最終的には アンプ性能が 99% を締めます

ヘッドフォン側の抵抗値が大きいことで問題があるとすれば、音量が稼げない場合があること、つまり音量が出せないことはヘッドフォンをドライブできないこと、に繋がります。逆にヘッドフォン抵抗が小さいと電流の限界があるようです。

ヘッドフォンを出力抵抗の小さいアンプで鳴らそうが、その逆であろうが、実はアンプ特性とドライブ性能による、ということです。結局いいヘッドフォンは良いアンプで聞くことが大事ということになります。結論は今までの説明どうでも良くなる。

インピーダンスは再生においてマッチングは無視しても問題無い、ということのようです。これが言いたかった。高インピーダンスとか低インピーダンスとか、それはそういう設計だから仕方ありません。

また、抵抗値が高ければ高いほど、音がいい、なんて感覚があると思いますが、そんなことはありません。構造上、抵抗値が下げれないとか、高くなってしまっただけで、抵抗値が高い=高音質、抵抗値が小さいヘッドフォンが音が悪い、なんて事はありません。全ては設計次第です。

ヘッドフォンの抵抗値は音質を左右している値ではありません。設計構造によって変動するだけで、ここばかりを気にしても仕方ありません。というか無視してください。ただ、高インピーヘッドフォンを安物アンプで鳴らさないでください。駆動できない恐れがある、それだけ。

ちゃんと理解できれば、アンプ性能でヘッドフォンはいくらでもいい方向に変化することがわかります。

アンプのインピーダンスと転送インピーダンスはちょっと違う


例えば、AES/EBU は デジタル転送で 110Ω って決まっています。クロック信号は昔は 50Ω とかありましたが、現在は 75Ω でほぼ統一されています。またマイクのインピーダンスも 150 〜 600Ω あたりに落ち着いています。

こういった、信号転送においてインピーダンスマッチングは重要です。抵抗値でかなり音質が変わるので、揃えてやることは大事です。また長距離伝送時にはマッチングは必要不可欠なことらしいです。

ただし、アンプの場合の抵抗値はちょっと考え方が異なります。ドライブさせるなら低インピーダンスが有利です。また、複数のスピーカーを鳴らす場合は逆にハイインピーダンスが重要になります。抵抗のあり方がアンプだと異なることをすこしだけ知っておいてください。

つまり、ヘッドフォンそしてヘッドフォンアンプにおいて抵抗値っていうのは音には関係ないわけではないですが、結局はアンプがどれだけドライブできるか、ヘッドフォンがしっかり動いて鳴らせる構造なのか、にかかっている気がします。

スペックばかり見てないで音を聞いてあげてください。そんなことを知ってほしかっただけです。終わり。

追記

Etymotic Research の ER-4 Series は S と PT っていう型番があって PT には抵抗値を変えることが出来る製品 (アタッチメント?) がありました。音の傾向の違いは高域の量感とか、ハイの強さっていうのか、歪みの強さに違いがあったように思います。同じように考えることが出来るかは疑問ですが AMÁRI の可変インピーダンスは、ヘッドフォン前段階の音色調整って考えるのが自然なのかもしれませんね。
CATEGORIES:
  • 書いた人: Naruki
    レコーディングエンジニア
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