iZotope Ozone 10 速攻レビュー

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iZotope Ozone 10 速攻レビュー

iZotope Ozone 10 速攻レビュー 

前置き。

製品のデモや Download は こちら

iZotope 製品のプラグインは Everything Bundle を所持している関係で、基本的には最近のものは全て試し来てきました。自分は「こんなもんでええやろ!」精神で RX を Version 4 あたりから使い出したのが始まりです。当時まともな Noise Reducntion 系のプラグインは選択肢がなかったので、ギターのハムとかの処理に重宝していました。

当時は Spectral を表示して手作業で周波数成分の Repair をするのが主で今のようなモジュールを使っていくような感覚はありませんでした。さながら Photoshop の修復ブラシと一緒です。ぼかしてゴシゴシ。波形をお絵かきカキカキ。

20 代前半のころ、Ozone 4 を使ったことがありましたが、当時、お仕事をご一緒させていただいていたエンジニアさんと色々検証したのを覚えています。当時のサイバーチックな見た目は割と好きでした。音は ジャキジャキしてましたね。

その当時は意味不明な調整項目が多くて、結構敷居の高いプラグインでした。ほとんど使い方がわからなかったしマスタリングもしていなかったのですが、マスタリングに行くと使っているエンジニアさんはいて「なんであんな EQ してるんだ?」なんて思って見てました。

20 代も後半になる年齢、アラサーと呼ばれる年齢のころにはスマホゲームや Youtube 戦略、映像美を追求したメディア戦略やアニメーション動画の台頭など「大 Net Media 時代」が到来。また僕がエンジニアとして駆け出した頃はアニメが絶頂期で、声優さんとの仕事が増えました。

予算が掛けれないナレーション録りや、ゲーム、映像に付随する音声の調整の仕事がザックザク。流石に長編もののリップノイズは RX さんでした。人力だと、もはや終わらない。どれだけ映像用の音声を担当したか覚えてませんが、かなり作りました。合計で 400 は超えいると思う。

音声さんのいない撮影現場も割と普通であったし、スケジュールが合わないから当時から Skype でのリモートでナレーション録りとか普通にやってました。日程調整して時間的にアフレコスタジオに行けると、当時 RX 5 でしたが De-noise した音声を納品してくれるアシスタントが増えました。

スタジオで録った意味よ。だったらクリアなプリに 1176 突っ込まんで欲しいわ〜ってな感じで現場で活動してました。あくまでアフレコやナレ録りスタジオの時はアシスタントにセッティングはすべておまかせでした。せっかく付いてくれてたしね。ただ、RX 処理前のセッションそのままもらってたけどね。

Ozone は正直全然使いこなせなかったですが、imager や Exciter を利用していたのは覚えています。当時は M/S が流行っていた頃で S1 以外の imager は他になかったと思うし、まだ Trash がバリバリ現役でトラックに刺さっている頃です。Alloy っていうチャンネルストリップがあったのですが、僕はそれをバリバリ使ってました。

あと、今は Melodyne が付いてきますが当時は Pitch 補正モジュールが Nectar にはありました。Auto-Tune とか Melodyne とかに比べて全然自由度がありませんでしたが、ちょっとした修正が楽なのでよく使ってました。アコースティック系のアルバムとかで使った記憶があります。

2011 年頃から利用していたはずなのでおそらく 10 年以上は付き合いのあるメーカーです。Stutter Edit の Ver1 とかみんな知らないでしょ。

一応、年季の入った iZotope ユーザーですが、最近のプラグインは自分のセッションで全然使ったことがありません。Alloy が最後まで粘って使いましたが RTAS Plug-in を使わなくなって以降、チャンストすら使わなくなってきました。

リバーブのプラグインだけは数ある選択肢の内の一つとしてたまに使っています。また Transient Shaper の一つの選択肢として Neutron のモジュールを利用したり、独特の Exciter 調整ができるので、そのモジュールを利用します。たまーに Vocal 系のエフェクト使いますが、必ず使うことはありません。

RX も時短を求めるとき以外や映像マイクのノイズリダクション以外に利用していません。おそらく非常に問題の抱えている素材を扱うことがほとんどないから出番は正直あまりありません。ポスプロも映画とか頻繁にやってるガチ勢ってわけではなく映像もできるし音声もできるでしょ立ち位置で仕事してましたし。ハリウッドの映画は 1 回しか担当したことありません…またやりたいな。

今回はなぜ、レビューしたかというと、Ozone に少し気になったモジュールがあったので速攻で検証をしてみました。自分のセッションで使えるかどうか、という話をします。だから購入やアップデートの参考にならない可能性が高いですが速攻レビューします。

ということでマニュアルを全然読んでいませんので、説明が本家と食い違っていたとしたらごめんちゃい。

新しいモジュール


申し訳ございませんが、今回新たに iZotope 製品を買うとか、初心者の方に向けた Ozone の使い方については一切解説致しません。

大丈夫です。僕以外の人がちゃんと Ozone のモジュールについて詳しく解説してくれるはずです。Ozone の構造や処理理念等を理解できるかはさておき。

では、今回検証してみた 3 つのモジュールについて見ていきます。


Impact

新しく追加された Impact というモジュール

これは分類でいうとマルチバンド Transient Shaper であるが、ほとんど自由度がありません。

ただし、Mastering に利用できるレベルだと思いますし、原音のディティールを崩壊させていくものではなく、パラメータ 30 未満なら個人的に 2mix の最後の微調整で使えるレベルだと判断しました。

ただし、かなり改善を求めるモジュールになっています。

まず、Envelope に干渉できるパラメータが事実上 2 つしか無いこと。画面左側の縦のゲインフェーダでImpact の調整するのですが、その項目とモジュール左下の「Envelope」のパラメータしか無い。一つ一つのメーターにオフセットのゲイン調整が欲しい。ゲインの「Auto」で RMS ベースで 0 dB をキープするようだが、自分でゲインの上げ下げを微調整したい。

また、エンベロープシェイプの選択肢もなく、事実上 Sinθ のカーブ、というより Sinθ の三角形型のエンベロープしか描けない。エンベロープを描いた後、若干の微調整ができないのはエンジニアとしてちょっと不便すぎる。ちなみに「Auto」の設定はおそらく自分は使わない。Impact 調整したのだからバランスが変る、そこを微調整したいのよね。

(これはミキサー側の都合でマスターの都合とは違う)

もちろん、モジュールを使ったあとに別のゲイン調整のモジュールで微調整すればいいのだが、モジュールは一つしか使えないので、複雑なシリアル経路を作る暇があったら別の選択肢を選ぶことになる。複数 Ozone モジュールを立ち上げるのも非常にきつい気がするし。

★★☆☆☆

星 2 つの評価です。Envelope のパラメータで減衰スピードへの干渉ができるけど、全部統一なのが悔やまれる。個別周波数にもう少し細かな Dynamics Envelope への干渉ができたら個人的には凄い使いまくっていたかもしれない。

まぁ〜そういう用途向けじゃないだろうから、この評価はちょっとかわいそうかもしれないけど、多分 Electronic 系のちょっと Machine チックな楽曲には全然問題なくマッチするでしょう。だからこの Impact を Jazz 系の楽曲に応用するかと言われたらちゃうやろ? って話で要は使う方の選択次第だ。

あくまで個人的な利用価値でのことでエンジニアさんによっては使い物にならないという人もいるでしょうし、めっちゃ使えるという人もいるでしょう。個人的にはもう少し自由度があると、嬉しかったですがどうせ 2mix の状態でほどんど Transient と Release の調整なんて終わっているので… これが出番があるということは 2mix で見直す場所があると考えたほうが良い。

つまりこの Impact は自分で積極的に使うものでもなく Master Assistance 側の都合って場合もある。ついでにパラメータは 25 以上を動かすことはほどんど無いと思うし、すこーしだけ微調整したい! って人には最高に良いと思う。

2mix 音源からこねくり回さなくてはいけない人が現状増えたしね。


Stabilizer

こちらのモジュールは Neutron、Sculptor の改良移植版?

これは Soothe でも Smooth Operator でも得られない素晴らしい結果が得られました。もちろん、Soothe も Smooth Operator も Suppressor であってこのようなインテリジェントなゲイン調整はしない。だから Soothe や Smooth Operator がお払い箱にはならない。用途が少し違う。

「Shape」と「Cut」パラメータによって素材に分けて処理できる。Shape のパラメータは Bus や Master で使うことが想定できる。かなり違和感なく補正修正するので、Mastering で利用するかどうかはわかりませんが、個人的にはこのモジュールだけは単品で使う可能性がかなり高い。

Cut のパラメータはいわゆる Spectral Compressor みたいな動作をする。Resonance に該当するような帯域を押さえてくれるので、Soothe やそれに該当するようなちょっと高級なプラグインを持っていない人はこちらを使いこなせるようになるのが先かもしれない。

それでいてピンポイントに音を押さえに行きたいという上級者は Soothe や Smooth Operator 等のプラグインを購入するといいだろう。まずはこういう自動リダクション系のプラグインの動作や効果を覚えるためにはうってつけだ。自分でもっともっと詳細に調整したくなったら別のプラグインを買っていこう。

個人的に特にに重要なのは Tame Transients というパラメータを ON にすることだ。

非常に音楽的にダイナミクスが常に変動する。聞いていてなかなかに心地よい。もちろん合わない楽曲もあるだろうが、のっぺりな 2mix がきたらこのパラメータを有効にすることをおすすめする。結構好き。コンプで作ってもいいけど、この Tame Transients って機能だとほぼ自動だから手間が無い。

★★★★☆

星 4 つ。Tame Transients の Emphasis やもう少し微調整が調整できたらもっと最高だった。若干リリースが早すぎるので長めのリリースでもう少しダイナミクスへ干渉したいと思いました。物によってはかなり Transient の特性が変わるので OFF にするほうがいい楽曲もかなりある印象。

そのための Impact モジュールだったのか。

ここで気づく Impact モジュールの必要性。Ozone のモジュールは一つ一つが相互に関わり合い、それらを利用者自身で把握しつつ、利用していく必要がある。Stabilizer と Impact が実装された理由はそういうことだ。相互に動作を補完することで最大限の効力を発揮する。

こういう Spectral Dynamics プラグインは非常に利用価値が高い。人間には不可能な処理をリアルタイムで変動しながら処理してくれるので、非常に有用である。特に Gullfoss 等を使っている層には受ける気がする。個人的には結構効果が高いのでパラレル (Amount) で利用する価値はあるかなと思っています。


Master Assistance

Master Assistance のアルゴリズムはおそらく進化していると思うので利用してみた。

一言で言って かなり優秀。AI は Mixer の意図は組んでくれないので、微調整はもちろん必要である。ただし、ま〜 DTM を趣味としている層であれば最強なんじゃない? 実務的に利用する人は自分で調整するだろうし。

各モジュールを調整しなくても左側のジャンルを選択すればいいし、Target の「+」から音声ファイルを選択すればリファレンス音源を参照して Master 調整してくれる。

Mastering 初心者でもこの画面を見て少ないパラメータの調整なら全然導入できるでしょ?

★★★★★

文句なし星 5。この機能はぶっちゃけ人を凌駕しつつあると思う。もう少し詳しく見ていきたい人は以下を参照。


Equalizer

まーそうだよねっていう EQ をされる。自分で Low-End を大きめにしているし、Hi-End も持ち上げているとはいえ、まだ足りないぞって言われて、中低域出てないぞって言われて中高域大きすぎやでって言われてる。わかってたけど明確に押さえにかかられると自分のアプローチが AI と割と対話できているのがわかる。

わざとらしくミックスしたところをちゃんと AI は理解しているんだ。この傾向は前からなにも変わってないけど。「中低域を押さえているのはドラムの為やで」とか「中高域が大きいのはボーカルやギターのためやで」って自分で明確なミックス指針がある場合、AI の EQ 意図がわかるのである。

「お前、わざと大きくだしてるだろうけど、俺の学習結果からいっても大きすぎやぞ。」と。

こうやって AI の EQ と対話していくのが非常に大事だと個人的には思っている。実際には EQ のゲイン幅は 1.5 dB 以内なので、ひどく音が変化するわけではなく、少し大人しくなる印象を与える。ここから自分で微調整してくといいだろう。


Stabilizer

これは正直 AI 任せでいいんじゃないかな。まだ使い慣れてないしリリースされたばかりの機能については AI が言ってること信じてみようかな? っ的なマインドで良いと思う。傾向を掴むのはこれからだ。

Amount 以外どうやって調整していいか正直わからん。

ただ、かなり Resonance やマスキングが解消するのでマストで使っていっていいと思う。

すごいのは位相特性。これら無段階 EQ ぽい動作をしますが、完全に Linear Phase 動作している。

一応 Low、Mid、High で微調整できるけど、これらが High-Pass や Low-Pass のような動作は出来ない。つまり位相変形を極限まで発生させない設計といえよう。出来ないことは設計者が想定しないないのではなく、設計的に意味のない機能は付けていない、ということだ。

Speed と Smoothing はマニュアルを読み解くと反応速度と周波数バンドにそれぞれ対応する模様。Speed を早くするほど正確な挙動になるが、アーティファクトノイズが発生する恐れがあり、Smoothing を 100 に近づけるほど処理バンド数が減る模様。


Impact

これも同様に AI が微調整してくれてそのままでええんちゃう? くらいに調整してくれる。

こちらは Stabilizer で少し変化した Transient の再整形をしてくれるって感じで Stabilizer モジュールと Impact は割とセットなのではないかな、っという設計者の意図が見える。

EQ や Stabilizer モジュールで変化した Envelope を取り戻す役割のモジュールで素直に従っておけば問題なさそうだ。

Ozone のモジュールはそれぞれが独立しているけど、チェーン内では全てが相互に影響しあっていることを忘れてはいけない。各モジュールの Amount パラメータで Parallel 処理ができるのも忘れてはいけない。


Imager

iZotope の Imager はなかなかに賛否両論だ。例えば Multi-band 用の Cross Filter がどうのこうの。

私個人としては今まで Imager は 100%、Parallel 処理でしか使ってこなかったので、Cross Filter の位相特性がどうのこうの、ぶっちゃけそんなことは出音判断でどうでもいい情報なってしまうのである。もちろん特性は知っておくべきだし、それがどのように影響するのかも、音を聞かずして判断できるだけの経験と知識があることも重要だ。

しかし、すべては「馬鹿と鋏は使いよう」と一緒で使う人のレベルが違えばプラグインもそれに答えてくれるものだ。基本的にパラメータが極端な数値を示さない限り大体大丈夫だ。どうせ Mono でも聞くし、フルレンジでも聞くし。

今回の Imager の AI 動作は非常に面白い。

テストセッションではなんと、低域、中低域を若干広げて、逆に中高域と高域を狭めている。

Mono 互換を考えてくれたのか、広げる志向ではなく狭める思考もできるのはなかなかに凄い。

聞いて判断して欲しいが、Imager の AI の判断は聞いていても素晴らしいと思ったのでついに自分は Ozone の AI に負けたな、と思った。そろそろエンジニアが本当にいらなくなる時代が到来だ。

一応、上記の設定の時の位相特性を見てみましたが、かなり優秀な部類だと思います。

もちろん Solo モード時のフィルター位相は回転してしまいますが、通常利用時に回転軸が 1.5° 程度なので位相より広げた事による音像変化のほうが大きいと思います。敬具。

今までは敬遠していた人たちも新しい Imager モジュールは実用に耐えるレベルでかつ非常に有用な提案もしてくるので、Learn だけでもするのが良いと思います。


Dynamic EQ

2mix 上で気になる特性周波数の Dynamics は正直自分ではなかなか判断がつかない。これらは最終的なチェーンの中で AI が瞬間的に押さえたほうが良い帯域を狙っているのだと思う。

非常に面白いのが、Low-pass の Dynamics EQ だ。EQ でブーストした分くらいを Dynamic EQ で戻している。こうやって EQ が行う Process の趣向を自分のエンジニアリングに活かしていくのが AI の醍醐味。

ブーストした分 Dynamic EQ で抑えるというは結構理にかなっているので利用していこう。もちろん Dynamic EQ は Attack と Release Time が重要なのでその部分も掴めるようになると Good だぞ。

アタックタイムやリリースタイムを掴むためには

まー今回の Ozone の Dynamic EQ も Auto-Scale 機能があるので、正直おまかせで良いと思う。

Maximizer

正直これは僕はわからない。どのアルゴリズムを選ぶかとか、Character はどうしたらいいか、Soft Clip の値や Transient Emphasis と Stereo Independence の Transient の項目の具体的な違いなど。

これは私がまったく Ozone の Maximizer を使ってこなかったからなわけだが、ターゲットにした LUFS に従って調整すればいいのではないかな。原音が極端に変化する値は良くないだろうが、基本 AI でおまかせでも良いと思う。

新しい設定項目は Soft Clip のパラメータだ。ぶっちゃけマニュアルを読んで各パラメータがどう動作するのかを把握し、実際の 2mix にマッチする設定を当てはめていく必要があると思います。今回はマニュアルをまともに読んでませんが、簡単に解説すると、

この Soft Clip は別に単純なクリッパーという動作をするのではなく、完全に Saturator 専用だ。

つまり、どれだけ音を飽和 (Saturate) させるかっていう回路というかパラメータだ。

名前が Soft Clip だけど中身は 4 倍オーバーサンプリングのサチュレーター回路ということだ。

上記の設定で測定してみた。

折返しは非常に優秀な部類だと思う。もちろん無いわけではない。15kHz 以上には結構発生するので、使う使わないは視聴判断してください。また山のように発生している周辺周波数は Maximizer に当てたときに発生するやつです。THD に該当するやつかな? こういうノイズなんていうのか忘れました。すみません。

もちろん、自分は別の Limiter を利用していたりするので、これを Bypass して別の Final Chain を利用します。

まとめ


ほかにもモジュールは沢山あるけど、全然コンプを AI が利用しなかった。

これは自分のセッションの Dynamics 完璧という証拠だろうか?

また Vintage 系や Exciter 系は AI はおそらく利用しません。

味付けを AI はしないということです。

お腹空いてきました。

最速でレビュー出来ましたかね?

ではまた。

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  • 書いた人: Naruki
    レコーディングエンジニア
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