音響機材の世界的な基準の話

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音響機材の世界的な基準の話

音響機材の世界的な基準の話 

エンジニアさんでも普通に機材のつなぎ方を間違えます。間違えると言うか、知らない場合も多いです。禄に機材の仕様を確認せず、接続すると基本的にはタブーな接続方法になったりします。

いろんなプロのエンジニアさんの下で現場を経験してきました。中には理解していない人もいました。プロでもそんなもんです。繋ぎ方間違えてますね、っていちいち説明しているのは正直忍び無いのですし、相手のプライドも傷つけてします。ここで一つ記事を書くことにしました。

一般常識レベルの基準


音響の世界に置いての一般常識レベルだと思うことを書きました。以前の記事でも知っている前提で話をしていたかもしれません。いまいち機材のスペック表とか見ても理解できない人は単純な知識不足だと思ってもいいと思います。

マイクレベル


これを理解していない人が意外と多い。実際、機材の説明書等でまともに説明していることもない。だって常識とみなされているからだ。

まず、マイクレベル とはその名の通り、マイクの信号レベル のことだが、厳密には極小の信号レベルのことを総じてマイクレベルと呼ぶ。マイクの構造を理解している人知っているだろうが、マイクは極微小の電気信号を扱っており、それを汎用性のあるシステムで利用するために、ラインレベルまで信号を増幅する必要がある。それが、マイクプリ だ。(ヘッドアンプって言う人もいる)

つまり、マイクの信号、または極小の信号を扱う機器の場合、マイクレベルの信号はマイクレベルに対応したインプットに出力する必要がある。また、マイク入力に対応した機器に繋ぎたい場合は、マイクレベル出力を使用して接続する。(これはライン入力ができない機器への応用的な接続方法)

特に FOH (PA) の現場では、ラインレベルより、マイクレベルで信号をやり取りする場合が多い。それは扱うレベルが極端に大きくなると、問題が増えるからであるが、日本の現場はレベルオーバーに対して非常に気にしすぎていて、音は二の次の傾向が非常に強い。DI と Pad 使うんじゃなくて、フェーダーでレベル下げればいいのでは?

ラインレベルの信号をマイクレベルで受けたくて DI で -20dB して (製品によってはアッテネーター経由でインピーダンスが下がるものもあるが) マイクプリでレベル調整するとか意味分かんないことが平気で日本の FOH の現場で蔓延している。インピーダンスマッチング的にも間違いだし。(実際に現場では変速的なことが発生することが多いのでこのやり方は工学的な正解ではないが、エンジニアリング的に臨機応変に対応できる利点がある。)

微弱な信号のことは「マイクレベルと呼びますよ」という国際的な音響機材における、常識 であることを覚えてほしい。

ラインレベル


レベルが小さい信号をマイクレベルと呼びましょう、に対して、レベルが大きい信号は ラインレベル と呼びましょう。これが世界的な一般常識。

マイクの信号を増幅すると、+4dBu を基準としたレベルで調整する。これはなんでか、と言われたら VU メーターの基準だから。

「0.775V の時 0dBu で〜」とか、 「1.23V の時 +4dBu で、0 VU で〜」とか、色々ややこしいことがあるのだが、とにかく、今は DAW 全盛期なので、信号が通過する回路を考慮するだけでいい。

マイクプリはマイク用にインピーダンスが調整されているし、ラインレベル入力も然り、ラインレベルを扱うように設計されているので、素直に指示に従うほうが、設計者の意図通りになる。

また、最近のユニットはコンボ端子で Mic / Line を切り替えることが出来るが、

  • XLR はマイクレベル
  • TRS はラインレベル
  • RCA は民生機ラインレベル (-10dBV)

という、信号のレベルの棲み分けを端子形状で行っている。最近のコンボ入力が可能なマイクとラインの切り替えが出来る機材では、ケーブル端子で信号レベルを棲み分けしている。XLR ケーブルでラインレベルを扱うことは実は一般的ではない。

気をつけないといけないことは、現代はフルスケールの信号をアナログに出力することがほとんどで、近年の制作において重要なのは基準の +4dBu よりも 最大入出力レベル だということ。

+20dBu が最大出力の機材から +18dBu が最大入力レベルの機器へ信号を入力してもレベルマッチングはできません。ラインレベルというのは 電圧 の話で音の大きさじゃありません。そのあたりが知識がないと理解できないんです。

特に最近はデジタル機器の利用が多く、dBFS 単位 で信号レベルを調整することがあるので非常にややこしくなってきています。

ステレオ LR の話


世界的に LR の基準があります。

S 端子世代の人たちなら理解していただけると思いますが、家庭用ゲーム機をブラウン管テレビに繋ぐ時、黄色、三色のケーブルを繋ぎましたよね。これアナログケーブルで、

  • 映像信号 → 黄色
  • オーディオ左チャンネル → 白
  • オーディオ右チャンネル → 赤

となっています。

お気づきも方も多いかもしれませんが、RCA 端子の 赤白 のケーブルをご存知だと思います。(S 端子は RCA に映像用黄色信号足しただけ。)

実は音声信号の LR の色は世界的に決まっています。

Lch が 白、Rch が 赤 です。

これをいちいち説明する必要があると説明書は長くなるので説明してないことが多いですし、音響の世界では常識です。白が左、赤が右 です。たまにどっちがどっちだったか忘れます。

dBFS と現実世界の dB 単位系を一緒にしてはいけない


まず、信号と言うとすぐに dBFS だと勘違いする人が多いです。すぐに「DAW のフェーダーのところに出てくるやつでしょ?」って勘違いする人が多いんですが、全く違います。

dBFS現実世界では役に立たない単位 です。

コンピューター上で扱う dB の単位が dBFS で、FS が省略されています。

よくあるのが、信号を DAW 上で -6dB にしてライン出力したのに、受け側の機器には -6dB で入ってこない … なんで? とか思う人多いと思います。実際 dB 表記は細かい単位が省かれているので、統一されているように錯覚しますが、違います。

コンピューター上の dB は現実世界の dB とは実は単位が違いますし、レベルの概念も違います。使っている機材によって出力レベルは変動しますし、受け側の機器によって入力レベルも違います。これは基本中の基本のお話です。

基準入力レベル


すんげーややこしいんですが、上手く説明出来るように書いてきます。この基準入力レベルとは、だいたい、

です。

これは業務機器と民生機の基準の違いですが、数字が違うだけじゃなくて、単位 も違います。

dBudBV です。(業務機が +4dBu、民生機が -10dBV)

そして両方が 電圧の単位である ことを知っておく必要があります。

+4dBu 1kHz という基準は 1kHz の 大体 1.228V の信号ということです。
-10 dBV 1kHz というは 大体 0.316V という信号であるということ。

基準の信号とは 音量 じゃない。電圧の対数表示である。

すぐに dB って付いている単位を見ると、音の大きさだ、って勘違いするので、この基準信号について理解が深まらない。基準信号とは、ある一定の電圧の信号レベルである。定義は音の大きさじゃない。

そして、+4dBu を基準とする わけです。基準 です。あくまで VU メーターが 0 を指すときの電圧が 1.228V で信号レベルが +4dBu というお話で、これが機器の最大入出力レベルを指すものではありません!

-10dBV を基準としている機材に +4dBu 基準の機器をつないで信号を -10dBV 基準のインプットに送ってしまうとエライコッチャになります。数字上で 4倍 差があります。

そして基準が +4dBu の機器なら、すべての機器同様にレベルマッチング出来る、って勘違いしている人がめちゃくちゃおります。基準はあくまで基準!「レベルマッチングは +4dBu で〜」とか言っている人多すぎ! +4dBu の正確な基準信号を生成できる? VU メーター持ってる?

+4dBu で出力した時、受け機器が +4dBu で入力できているか確認することが、レベルマッチングでありますが、最近の機器は機器の入力レベルを監視するのが大変ですし、dBu 表記しないものが多いので結構難しい。

機器によって最大出力レベルと最大入力レベルが違うので、それぞれ電圧を合わせる必要があります。

ごたごたお話しちゃいましたが、

ことが一番大事ですね。アナログ機器であれば、ほとんどレベルが統一されているので、あんまり気にすること無いんですが、デジタル機器の場合、結構入出力レベルが違うから気をつけるべき部分ですね。

ハイインピーダンスとローインピーダンス


これ、理解できてない人、めっちゃ多いですね。正直やばいと思います。

ハイインピーダンスとローインピーダンスはそれぞれ利点がありますが、常識レベルの話をします。

  • ハイインピーダンスの信号はハイインピーダンスで受けてください。
  • ローインピーダンスの信号はローインピーダンスで受けてください。

以上です。これは 常識中の常識 です。

ハイインピーダンスの信号をローインピーダンス回路で受けてもだめ、ローインピーダンスの信号をハイインピーダンス回路で受けてもダメです。原理は理解しなくていいです。基本やってはいけません。常識です。

また、ハイインピーダンス信号の種類とローインピーダンス信号の種類を知ってください。わからなければ機器のスペック表に入出力インピーダンスが載っているので確認してください。

ギターをライン回路に繋ぐのも音作りとして有りかもしれませんがね。

前述しましたが、ローインピーダンスのバランス信号をわざわざハイインピーダンス回路 DI で受けているのが FOH の現場です。工学的には不正解ですが、エンジニアリング的には正解なことだと思います。

あと、最近は逆 DI、Reamp というものが結構一般に広まりましたが、Re-Amp 回路を提供する DI がなぜ必要なのかは、インピーダンスマッチングが理由です。

なぜ、DI、または 逆 DI が必要なのか理解していないと、無駄な出費かさみますよ。Reamp 回路が付いている機器が最近は増えましたが、ラインアウトの別の名称だと勘違いしている人もいますので、インピーダンスについてはマッチングを多少勉強することが大事です。

大体、アンプによっては Send Return 回路があって、それが Pre EQ で入れられることもあったり、Line In 回路があったりして、逆 DI 必要ないことだって結構ある。

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  • 書いた人: Naruki
    レコーディング、ミキシングエンジニア
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