EQ の概念とその向き合い方。

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EQ の概念とその向き合い方。

EQ の概念とその向き合い方。 

世の中には基本となるエフェクトが3種類あります。

まず、このことを知らない人が多いかと思います。

非常に近い存在として Distorsion Effect がありますが、原理は Effect に到達する前の HA や Preamp といった、構造や真空管やトランスを通過した際に対しての入出力レベルの応用になります。ですから、3代エフェクトの仲間からはディストーションは若干逸れます。もちろん現代にとって歪みは非常に有用な存在ですが、音響工学の世界にとって歪みとは排除すべきものです。

アナログコンソールを覗くと必ず、HA の後に必ず、Filter セクションがあり、そして Dynamics セクション、そして EQ セクションがあり、AUX セクションの後に各チャンネルのフェーダーがあります。

SSL のストリップは HA の直下に Filter がある。フィルターは実は非常に重要な回路であることがわかる。

EQ の歴史


まずはじめに、なぜ、EQ が必要なのか、を論じるために EQ が開発された歴史を振り返ります。

これは非常に大切なプロセスです。

なぜかと言うと、Effect には開発者の意図があって、それを開発者の意図通りに使うことによって、開発者が望んだ最良の結果が得られる、ということが本当の機材の利用方法であり、世の中すべての機材における基本概念であり真理だと個人的に思います。

想定されていること以外の使い方は開発者が意図していないものになるので、どんな機材であっても、想定範囲外での使用用途で任意の結果が得られず文句を言われるのは筋違いであり、このあたりを全然理解できていない人が多い。特にアナログ機材や古い機材はパラメータに自由度が無いため、この気が非常に強い。

もちろん、応用を自分なりに聞かせて、開発者の意図とは異なる使用方法もしてもいいのだが、まずは基本の EQ を上手く使いこなせないのに応用方法なぞ考えても仕方がない。というか基本を理解しているからこそ、応用が効くのであって、基本が大事。

1920年代にはじめて登場する


記録がある限り、EQ が実際に世の中に登場するのは、映画館の音響システムの補正として EQ が登場します。

EQ とは Equalization、つまり、日本語に意訳すると平衡化という意味になります。元々は映画館の音響システムを原音に近づけるために開発された回路でした。

日本では EQ は音を平衡化するためのエフェクターだとは、ほとんどの人が知りません。Equalizer の意味を知っている人がほとんどいませんし、そんなこと大体教わりません。EQ とは狙った周波数帯の音をブースト、カット、Filter は音をフィルタリングするものだと思っていることでしょう。フィルターはまんまフィルタリングで間違っていないんだけど。

初期の EQ は Langevin Model EQ-251A などが有名で、フェーダーを使って調整するタイプが主流でした。有名どころで別のタイプだと、Trident-A Range が有名ですね、製造数が 13台 とかいうガチの幻の名機。

Trident-A Range

まだ 100年 も歴史がないエフェクトです。

パラメトリックイコライザーは 1970年代に初めて登場する


こちらは割と有名ですが、George Massenburg が論文でパラメトリックイコライザーなる用語を使い一躍有名に。彼は PEQ の生みの親と言われています。実際には同様の技術を同年代に複数の人が開発しています。

パラメトリックイコライザーの登場により、EQ は元々の用途より、より過激な音作りのために利用されていきます。現代の EQ で特別な理由がない限り、このパラメトリック EQ が採用されています。

この EQ の登場で音場の補正は 31 バンドのグラフィック EQ が担うことになってきました。1967年ごろに Tyep 7080 というグラフィックイコライザーが開発されています、それは 6 バンドでした。現在、実際の映画館の音響補正は DSP 補正の 1024 バンドグラフィックイコライザーだったりします。

EQ を使うシチュエーション


非常に多角的に考えることが出来ますが、EQ とは原音に近づけるために開発されたエフェクターです。その基本は現代でも変わりません。原音に音を近づけるために使用します。

EQ というは必ず使うものですが、必ず使うからこそ、なぜ使うのかを忘れがちになります。

とにかく基本は、マイクで収録された音と実際に聞こえてくる音には差異があるので、それを近づけることをします。これが基本です。


ただし、これは録音時限定の作業となります

最近は EQ を掛け録りする、ということを全くしません。アナログの EQ が単純に足りないという理由もあると思いますが、後で EQ するから何も噛ませずに録る、という現場も 9.5割 くらい占めます。

現場で音を聴きながら音を調整しないと原音には近づけることは出来ません。

掛け取りをするメリット


これは単純に時短ということです。正直申しますと、マルチマイクを立てざる負えないドラムレコーディング時は録りの段階で EQ しないと聞けたものじゃないです。

特にドラムは音量が大きく、アタックとサスティーンの音が大半を占めるのですが、部屋の反響や拡散などにより、非常に音色が変化します。

そして各マイクは、ドラムのどこに立てますか? 思いっきりオンマイクで各ヘッド上部に立てますよね? 普段ドラムの音を僕たちはどこで聞いていますか? ドラムの打点、数十センチの距離で聞いてませんよね?

この事実からドラムの音は Overhead と Room の良し悪しでほぼ決まると言ってもいいのですが、その話は今回は関係ないので、EQ に戻ります。

ですから、単体のマイクオンの音を実際に聞こえてくる音に近づけることが現場では非常に大切になってきます。なぜ、EQ をするのか、と言われたら音作りではあるのですが、マルチマイクの録音では被り、回折、位相差により、録音のマイクの立て方次第で、実際聞いている原音と録音される音は、かけ離れるから、ということを知っておくべきです。

確かにマルチでマイクを立てない、位相差や被りが気にならないレコーディングであれば EQ の必要性をそこまで感じはしませんが、ドラムを後々 EQ すると大見得切って、いざ EQ となっても、録音時の原音を覚えているわけがないので、現場で調整することには非常に大きな意味があります。というか現場でなければ出来ないことです。

また、後々 EQ するという以前にドラムの録音は非常に難しいため、やはり事前の EQ は正直必須であると考えています。

EQ を使用する必要がある現場


ドラム以外にも EQ は非常に多く利用されます。

一例として、Vocal Rec のお話をします。

ボーカルにも EQ は必要です。人によって声は違います。EQ とは Equailizer であります。その人の声質が低域過多であればカットしたり、かすれ気味なら中域のかすれた部分を狙って少し下げたり、伸びがほしければ、高域をシェルビングでブーストしたり… 基本は、平衡化することであります。

派手に音作りをしてやろう、は録音時には意味がありません。

オケがあって、もしその人の声がオケと被り気味だなと感じたら、普通はオケの EQ をするほうがいいとは思いますが、オケのバランスを崩したくない場合には、ボーカルの存在位置を買えるために EQ をしたりします。

ただし、これらは掛け取りの最中に EQ をしなければいけない、というシチュエーションではありません。あくまでもモニター用に音を作るだけで十分なときです。

なぜなら、オケの修正ができるようであれば、声とオケがぶつからないように編曲作業ができるからであり、プリプロって非常に大事なんだなっていつも思います。プリプロしっかりやりましょうね、皆さん。

先程は録りの段階である程度は音作っておかなきゃ、Mix で迷走する確立も高いため、原音を聞ける最中にある程度仕上げる、という手法に対して、こちらは、あくまでレコーディングのモニター用に EQ を掛けるということで、歌い手が歌いやすく、ディレクターが判断しやすくするための、エンジニアなりの気遣い、という位置にはなります。

もちろん、アナログ EQ で録り音を作ってしまうこともありですが、難易度は高めです。私がよくお世話になったエンジニアさんはボーカル取りで EQ 決めてしまいます。

EQ の基本を理解した上で


なんども言うようでくどいですが、EQ の基本は、音の平衡化です。

音作りにも非常に役立ちますが、実はそれは応用の使い方なんですね。

実際のミックスで派手に EQ しなくてはいけない Mix の場合、録り音が悪い、用意した音源が曲構成にミスマッチしている、としか言いようがありません。録音やアレンジの段階で音の方向性がある程度決まっていないと、音作りに時間がかかりすぎて、Mix 出来ません。

結局いい Mix とはエンジニアの EQ の腕前ではなく、プロジェクトをしっかりとした方向性で進められる名プロデューサーやディレクターの存在が大きいものです。

完成形のバランス像があるセッションの場合、用意された音源は録音時に非常にバランス良く混ざり、生で録った音と混ぜるときに No EQ でも問題なく混ざります。

その上で、EQ をどう使うか、を頭に叩き込む必要があります。

ここが一番大事です。

EQ の感覚を掴むための知識


先程も存在しない周波数帯を EQ していることがよくあるとお話しましたが、楽器の音 (楽器の周波数分布) を知らないと EQ のポイントは探りづらいです。ですからアナライザーで周波数分布が見えるほうが、作業が楽です。

楽器ごとの周波数分布等は参考資料で確認してください。音響工学系の本を読めば大体載っています。自分で資料を探して自分で参考書とにらめっこする努力をして覚えることが大事です。大切なことは勉強することです。

例えば上記の図の周波数分布を見れば音を聞かなくてもどんな音なのかくらいはわかります。

これくらい見えると、どの辺りをブースト、カットすればいいかなんとなくわかります。あくまで目安ですが、音をかなり調整しなくてはいけない場合はアナライザーで確認することは必要なことです。

目で大体目星をつけて、そこから実際に音を聴きながら調節していきます。

そして、EQ をしなくてはいけない、という事に疑問を持て。


経験と勘で「EQ しないとヤバいな」的な音源はありますが、音源を聞いたときの方向性やイメージする音に向かうために、「EQ を使う」という選択肢に疑問を持ってください。

現代には色々な解決方法があります。


Low の補正に EQ は最適なのか

一番むずかしいところにいきなり切り込んで行きます。

Low の補正に EQ を良く使います。しかし、存在しない Low の周波数を補正してもなんにも意味がありません。Low の補正をしたいと感じたとき、そこに存在しない周波数の音の帯域をいくら EQ しても意味がありません。

結構プロでもありがちな EQ の使い方です。楽器にほとんど存在しない周波数帯域を EQ でブーストしているなんてよくあることです。

解決方法としては EQ で補正するのではなく、サチュレーションを加えて、聞こえ方を変えてやるとか、Sub 補正をするほうが EQ するよりもいい場合があります。つまり、EQ いらなかった説を常に考えること が大事。


Hi の補正に EQ は最適なのか

Hi の補正にも良く EQ は使われます。ハイシェルビングを使い、良く高域ブーストを見ます。例えば Air EQ 系は 20kHz 以上をブースト出来ます。

なぜ、高域ブーストをしたいのか? を考えましょう。その高域ブースト、本当に必要ですか?

こちらもよくあるのですが、8kHz 以上に存在する音って、もう基音であるはずがないんです。倍音成分なんです。つまり、高域 EQ をしたいな、って思った音源に対して、本当に EQ でいいのか、それともディストーション加えるだけでまとまったりしないか、を Low 補正と同じ様に考えてください。

これはプロでもよくやる謎 EQ の一つです。ほとんど存在しない 8kHz 以上の音に対してピーク EQ をしていることはよくあります。もちろん、なにか意味があるとは思いますが、私にはそのプロセスは理解出来ません。そんな上級レベルのことは皆さんしなくていいです。EQ はしないことに越したことはないのですから。

極力 EQ は最小限か使わないこと


本当に言いたいことはここ。EQ なんて使わなくてもいい

録りの段階で EQ しなくちゃいけないものは EQ すること。これが現代ではなかなか出来なくて、セルフでドラムレコーディングが上手く行かない理由でもあります。

逆に取りの段階で、変に Low Cut や Hi の持ち上げをしすぎて、ボーカルがシャカシャカしてしまうことも中堅者に非常に多いことだと思います。

現代はサンプル音源やソフトウェアシンセ音源が主流で、正直、EQ なんてしなくても非常にいい音でまとまります。生の音源なんてボーカルくらいではないですか?

だったらボーカルくらいは派手な EQ はしないで、マイクの音で勝負してみてはいかがですか?

バンドモノでドラム、ギター、ベースの音作りを後々求められるような現場出ない限り、EQ なんて正直出番はほとんどありません。味付け程度に使用したり、Vintage EQ の場合、その質感だけを求めているだけです。

また、帯域がぶつかるからオケの音の狙った帯域をカットする、なんてことを良くミックステクニック等で紹介されていますが、バランスのいいミックスにはそんなこと全く必要ありません。

逆にオケのバランスがそれで崩れてしまう原因になります。ギターとボーカルがぶつかるから EQ で棲み分けする、なんて良く聞きますが、PAN でしっかり配置分けできれば、オケバランスを変えるような EQ は入りません。

帯域ぶつかるから、EQ したいと感じる場合は音量やバランス、配置が悪いことが一番だと思います。

確かにマスキングされて聞き取りづらくなる音はありますが、ミックスの立体構造を構築できれば、EQ ではなく、PAN と距離感や立体感ステレオワイドの処理でほぼ解決します。

派手な音作りはミックスとは切り離して考えろ


ミックスの段階で派手な音作りのために EQ を迫られる場合は、ミックスではなくて、仕込みというか、ミックスの前段階の作業です。もちろん参考の音源があって、その音に近づけてください、という注文があった場合には EQ を使って追い込んでいきます。それは仕込みの範疇です。

音作りとミックスを同じレベルで考えてしまうと、何時まで立ってもミックスが終わりません。音作りながらミックスしてしまうと、ミックス中に音作りの修正を行ってしまうことがよくあります。

ですから、ミックス、と決めたら音作りに関連することはしない。トラックを書き出ししてミックスしてしまうことおすすめします。私は派手に音作りすると Insert は 6-8 個埋まってしまうので、それらは書き出ししてしまいます。

音作り EQ とミックスは切り離して考えるべきです。もちろんミックス時に EQ はつかいますが、派手な使い方はまずしないほうがいいです。全体のバランスが崩れる原因になります。

ミックスの EQ はあくまでも平衡化と、若干の補正や音の位置を移動させるためのものです。

音作りの EQ は考え方が異なるのでミックスの時に考えてはいけません。

音作りの EQ 時には派手なピーキングやシェルビング等行うことは問題ありません。ただしミックスを始める段階で音作りは完成している前提ということを忘れてはいけません。

もちろんミックスをしている最中に派手に音作りした音源に対して若干の微調整は必要かもしれませんが、大幅な音色変化は下準備として捉えることが一番大切です。ミックス = 音作りや追加アレンジではありません。

重心の移動には大いに役立つ


おそらく 3次元的 なミックスが出来ないから、EQ に正解を求める人が多いのは理解できます。もちろん EQ が最善の場合もあります。

音源の重心の位置を変更するのに一番てっとり速いのは ピッチ をイジることです。ただし、それはミックスの段階でできる代物ではないことが多いので、EQ で音源の重心の位置を上げ下げ出来ます。

ただし、重心の EQ は結構難しく、ドンシャリな音になりがちになり、中域が薄くなりがちになるので、きちんと EQ ポイントを探れて突けるようになる必要があります。

とにかく音を立体的に EQ でイジることができるようになることが大切です。

お金取るレベルの内容です。


今回お話した内容は、お金取りたいくらいの内容です。

ちょっと手の内見せすぎかもしれません。

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  • 書いた人: Naruki
    レコーディングエンジニア
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