Tannoy GOLD 8 【機材レビュー】

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Tannoy GOLD 8 【機材レビュー】

Tannoy GOLD 8 【機材レビュー】 

普段は全く機材レビューとかしませんが、今日はこいつがヨーロッパから届いて、音を聞いて仕事で使って見たのでレビューしたいと思います。

製品あくまで使用感想に近いレビューです。褒めることは多分ない。

購入前提


まず、GOLD 8 を通常の部屋で使用しないでください。6 帖の部屋に 8 インチ、300 W のスピーカーは必要ありません。通常は GOLD 5、GOLD 7 で十分です。僕も GOLD 7 で良かったんじゃないかって思ったりしますが、8 インチが欲しかったのでこれでいいと自分には言い聞かせます。

また、最低限、設置には気を使ってください。


前評判

ドンシャリ傾向、定位は抜群、見た目が安っぽくないけど、リーズナブルな価格帯。前評判は非常に良かったと思います。

機材の評価軸


機材について音質に関してはものすごい主観評価が入り乱れること必須なので、客観的に近いところを評価する必要があります。がそれはちょっと無理ですね。


見た目

正直、機材にとって一番大事、だってイメージがそのまま音になります。

皆さん忘れがちですが、音というのはイメージで印象が替わります。

ダッさい見た目の機材使うと音がダサく感じます。決して悪い音ではないのに機材の見た目で出音の評価は替わります。

Tannoy GOLD 8 は高級感があります。ゴールド (真鍮?) のラインがあり、見た目と名前も相まって、一見いい音出しそうです。

つまり、見た目は GOOD です。


機能性

スピーカーにはいろいろな機能が備わっています。

この GOLD 8 には、HFBASS AdjustInput TrimAuto Standby3.5mm Jack Input と Link 機能、があります。

いちいち説明は致しません。これらはスピーカーを購入検討している人であれば、知っている機能、もしくは把握している機能です。自分でマニュアルを見てください。

マニュアルはこちら

これだけでも概要は解るよね。

重要なのは HF、BASS Adjust、でしょうか。僕の部屋は結構高域が吸われるので、HF を上げ目にして聞くときもあります。あってよかった機能だと思います。ついてないほうがおかしいレベルのつまみでもありますが。

BASS Adjust は、ある程度のアバウトな環境にも順応出来る機能です。僕は使いません。しかし、どうしても BASS Trap がない部屋は低域が回りすぎて低域過多になる傾向がありますので、その場合は抑える必要性はあるかもしれません。

最近 Comb Filter 関連の記事を見ましたが、大元の原因は Comb Filter の現象ではなく、残響が問題であることです。残響がなければ Comb Filter の現象は発生しないのですから。問題は低域の残響が抑制されていないことに発端する、ブーミィーな低域の濁りというか、見えづらさです。打ち消し合いではなく、特定周波数が持ち上がる場合があることも忘れてはいけません。

Auto-Standby 機能ですが、ありがたい反面、反応は遅いです。頻繁に切り替えるのですが、すぐに音が出ないので、この機能は OFF にしたほうが集中して作業が出来るかと思います。


スペック評価

最近はフラットスピーカーがトレンドなので、GOLD Series も測定値は非常に優秀。どうせ人の耳で「フラット」なんてわからないので、測定値は製品の通過儀礼的な位置になりましたね。重要視するところではありません。

スペックでスピーカーは語れない。

測定値はあくまで、一定の条件下なので、通常、この特性には近づかない。

指向性のグラフ、非常にわかりやすくていい。

当たり前だけど周波数ごとに指向性が違う。これを見てくれれば自ずと理解出来ると思うけど、高域の吸音より、低域の吸音が如何に大事なのか理解できる。

よくあるスペック図

特出すべき点はないが、いくつか注意する点として、重さが 14.0 kg とか、サイズは確認すべきでしょう。大きいと言っても、GOLD 8 買う人は許容範囲内だと思うので、普通の人は GOLD 5 か GOLD 7 を検討するように。

ステレオミニジャックをメインで使うな


XLR のバランス、または TS ケーブルのアンバランス、繋ぐならどちらでもでもいいけど、3.5 mm ステレオミニジャックでスピーカーは繋がないほうがいいです、明らかに音が違うので。悪くなります。

でも、AUX In として回線は確保していてもいいとは思います。あって困ることは無くても、無くて困るときはあります。

ステレオミニジャックのインプットはあくまで「おまけ」というか、テレビとかの音をつなぎやすくするためのものかな。

GOLD 8 単体だけだと見失う可能性


GOLD 8 は大きい分、音が派手というか、細部が見えない場合もある。(中低域のコシの音が若干弱い) ヘッドフォンや別の小さいニアフィールドを併用していくことが望ましいかな、と思う。

スピーカーを 2 台、3 台併用できないのであれば、GOLD 5、GOLD 7 か、別のランクの高いニアフィールドを購入したほうがいいと思う。単体運用はプロだと厳しいとちょっと実感。

(自分はもともともう少し低域を確認したく GOLD 8 を導入したので、それ以外の音は 5 インチクラスで確認できるので用途的には問題なし)

リッチな低域と高域の解像度は現代的な音で少しくらい悪い音でもかっこよく聞こえる。

正直ミックス向けの製品ではないかもしれない。難しいスピーカーだと感じました。生録音には非常に良いスピーカーですね、同軸なので、生楽器が生楽器してる 気がする。

GOLD 8 の評価


数値化できない評価というのは相対的なものになります。

つまり、自分が現在使っているスピーカーとの相対評価しかできません。

YAMAHA HS7, Tnanoy GOLD 8, Sonodyne SRP 500 (Left to Right)

使用している現在のスピーカー構成を軽く紹介


YAMAHA HS7

YAMAHA の HS7、7 と名前でついていますが、コーンサイズは 6.5 インチです。まだお金もないアシスタント時代に YAMAHA 10M が嫌すぎて自分の持ち込み用に買ったスピーカーです。

超現役の 10年 選手スピーカーです。フラットじゃないですが、低域がよく見える素晴らしいスピーカーです。ただ、10M を踏襲しているのか、高域はちょっと痛めです。

高域が強めな印象なので定位はいいと思います。ただし視点は高めになる傾向があります。


Sonodyne SRP 500

実は 7、8 年前 現在の Focal の位置にいたスピーカーです。今は Focal ってよく聞きますが、2010 年頃はよく聞いたのが Sonodyne でした。

めちゃくちゃ評判良くて、いろんなスタジオさんが導入していたのを覚えています。これは払い下げを激安で譲ってもらったやつです。現場で使われてたので傷が多いんですが、音はちゃんと出ますし、ぶっちゃけバランスが最高です。

タイトなスピーカーで好きな音が出ます。いわゆる Sub の低域は見えませんが、普通に低域は見えます。高域もキレイに減衰しているので痛くないです。ものすごく視点が低いスピーカーで、小さい割に音は太いです。

Tannoy GOLD 8


評価はどうしても上記 2 つのスピーカーからの相対評価となります。正直この2つのスピーカーがまとも過ぎて、GOLD 8 の評価に困りました。

HS7 は GOLD 8 より設計は古いですし、価格も安いのですのが、HS7 が圧倒的に負けている部分はありません。ただし勝ってる部分も少ないですが。

SRP 500 は当時 20 万クラスのモニタースピーカーでしたので当たり前ですが、GOLD 8 が負ける部分がたくさんあります。というか Sonodyne SRP 500 が優秀過ぎて、中古でもいいから 5 インチクラスのスピーカー探している人いたら、おすすめします。

ただし、どちらもスピーカーの口径だって違いますから本当に個人的な感想だと思ってください。


解像度

非常に定義が難しい言葉なのですが、最近のスピーカーらしく 150 Hz あたりが出ない「フラット」という印象です。ただ、ごちゃごちゃした印象を受けるのも事実で、やたらと分離が良いスピーカーってスッキリ聞こえるのに全帯域聞こえる謎の解像度があります。(部屋の吸音増やしたほうがいい可能性もあり)

値段相応の音がすると思ってください。高級機と同じ音はしません。


定位 (指向性)

同軸だから定位がいい、という評価をしている人が多い印象ですが、モニタースピーカーで定位が悪いスピーカーって正直きいたことありません。みんな定位いいです。傾向はあります。

例えば L to C to R の定位を見たときに、弧を描く時があります。GOLD 8 の定位は 「弧」を描きます。

音の定位が灰色の線の様に見える、良いスピーカーはこれが一定。ドンシャリ傾向スピーカーは大体こうなる

同軸は音が点で聞こえがちになるので、定位がもっとよく、いいように感じるのだと思います。どちらかというと、通常のスピーカーの定位は点から ぼやけた範囲 にあるのですが、この GOLD 8 は点がよく見え、ぼやけた範囲が少なすぎます。

だから音が生々しく聞こえがちなのかもしれません。これは悪いことではないと思います。ヘッドフォンの感覚に近いので慣れの問題でどうにかなるでしょう。


音の傾向

これは同軸の傾向なのか、Tannoy GOLD Series の傾向なのか、トランジェント成分にあたる周波数がやたらと誇張されているというか、音が目立ちます。これもスピーカーが複数あれば、傾向を把握して別のスピーカーで調整できるので、2 台体制がよいですね。

150 Hz 〜 400 Hz あたりの音量が小さい。重心が低く、コシがほしい自分の傾向からすると、SRP 500 がこの部分の再生能力と解像度が高く、GOLD 8 が非常に負けている。

また、1 kHz 〜 2.5 kHz の音量、密度っていうかな、SRP 500 に負けている。GOLD 8 は重心が意外と高いスピーカーである。音量は出るんだけど、欲しいところの迫力に欠けるスピーカーで大きさの割にパワフルな音は出ない。

しかし、50 Hz 〜 100 Hz あたりの再生力は非常にいいと思います。狙ったとおりです。また 10 kHz の伸びは GOLD 8 が勝っています。

ドンシャリ、という前評判通り、ドンシャリです。結局はスピーカーの具合で作品の傾向が出来上がるんですよね。ミックスで使用したスピーカーがドンシャリならドンシャリミックスになりますし、団子スピーカーなら団子ミックスになります。

スピーカーを選ぶときは自分のジャンルにあっているのかを選ぶのがいいんですよね、ただ、エンジニアはオールラウンドを求めるので、厄介!

結局は適材適所で、非常に使う音源に左右されるスピーカーだと思います。音源によってはドンピシャなときがあります。GOLD 8 は R&B や Hiphop には最適かと。

この音源を聞いた時はドンピシャにハマった。

スピーカーはバランスが大事なので、ミックスに使うならやっぱフルレンジが最強かな、と再確認。もちろん個人的な意見です。

オススメするポイント


価格

非常にリーズナブルだと思う。

日本には全然入荷していないようだけど、GOLD 8 は 7 万円以下 で買える模様。

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また、GOLD 5 であれば、税込み 44,000 円である。よくない?


同軸

同軸スピーカーは意外とファンが多いです。同軸でこの値段は実は革命だと思います。今までこんな値段で同軸製品でていなかったので、憧れの同軸への一歩として考えたらいいと思います。

ムジークが同軸か否かについてエンジニアさんと議論したことがありますが、僕はあれは厳密には同軸ではないとは思っています。確かに X 座標は一緒かもしれませんが Y 座標と Z 座標が同軸上にはありません。


見た目

ここに付きます。

音楽なんて感性の世界なので、気にいるか気に入らないか、かっこいいかかっこわるいか、で決めていいと思います。僕は見た目がよかったので買いました。

悩んでいる人は多分ずっと悩むでしょう。欲しい人はすぐ手に入れたでしょう。

機材とはそんなもんです。

最後に


Sonodyne SRP 500 の実力の凄さを再確認しました。

そして 5 インチか 7 インチクラスのスピーカーがオススメです。

8 インチは難しい。普通に部屋で作業するひとは 5 インチでいいと思う。

画像、資料引用先: https://mediadl.musictribe.com/media/PLM/data/docs/P0C2C/Tannoy_GOLD%208%20P0C2C_Product%20Information%20Document.pdf

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  • 書いた人: Naruki
    レコーディング、ミキシングエンジニア
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