直感と思い込みと主観と事実と優先度

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直感と思い込みと主観と事実と優先度

直感と思い込みと主観と事実と優先度 

過去にないくらい、読んでも面白くない内容です。

一部の人間だけが理解できればいいと思います。

思い込みは非常に邪魔


人間、潜在的な意識から思い込みが激しく、これは聞いている音にめちゃくちゃ作用します。

例えば、A と B を聴き比べるとき、A は 10 万円の機材、B は 1 万円の機材で A/B 判断をする場合、素直に皆さん 10 万円の機材のほうが音がいいと言うと思います。

これは事前情報を利用して、聞く音に対する判断を邪魔する人間の心理的な事柄で、これはバイアスがかかった状況だと言えます。別に 10 万円の機材を選んだからといって悪いわけではなく、10 万円という価値を私達の脳が無意識に音に変換していたに過ぎません。

また、私達はどうしても 10 万円のほうが 1 万円の機材より、いい音であって欲しい、という思い込みもするでしょう。そして私達は直感的に 高価なもの = 良質なもの と認識しています。直感で 10 万円のほうがいい音だろうと思い込み、耳、具体的には脳が錯覚を起こします。

ここでは 10 万円と 1 万円の機材の議論をしているわけではありません。実はこの実験には裏があり、実は 10万円 と 1 万円というのは嘘で、実際には同じ機材の音を A は 10 万円、B は 1 万円と偽って聞かせていたとすると、同じ音を聞いているはずなのに、一様に 10 万円の機材の音を良かった、と皆さん発言するでしょう。(信じられないかも知れませんが、これは実験で証明されていることです。)

もちろん、音というのは主観的な好みでも左右されます。この主観と思い込み、そして直感的な情報は非常に判断する側にとって邪魔な問題です。


聴き比べはブラインドテストをする必要がある

もし、ちゃんとした A/B の聴き比べをしたい場合は、2 重のブラインドテストを実施する必要があり、機材の聴き比べというのは実はかなり難しいのです。

事実と優先度


例えば、最近は良く「位相が悪い」なんて言葉を聞くのですが、位相が悪いと判断できる人間は前提的な事実を知っている必要があるのです。

これは非常に個人的な見解ですが、「位相が悪い」=「不自然」という認識だと思います。音が不自然に聞こえることを位相が悪いと言っている人が多いような気がします。

しかし、実際にはそれはジッターであったり、位相が悪いことではなく、位相変化したことによる、複合的な問題である可能性のほうが多いです。

基本的には極端な Q 設定をしない限り、そこまでひどい位相変化を与えることはなく、不自然さを感じることも無いと思います。実際スネアのトップとボトムで位相は逆になることが多いですが、逆相で音を合わせても、不自然さを感じるような音にはあまり聞こえません。スカスカのスネアの音になります。不自然な音ではありません。確かにスネアとしては違和感はあるでしょう。

本当は違う要因で音に不自然さが現れているのですが、我々は位相が悪いなどと判断します。ただし、これは不自然ではない音を知っているから、という前提があります。位相が悪いと思っている音声を初見の人に聞かせても、位相が悪いと思うことはなかなかありません。

ここでは優先度の問題が事実と拮抗します。位相が悪いと感じても、オケで聞くとかっこよく聞こえるなど、実際に発生している位相変化と別の方が初見で聞いている感覚ではその違和感を感じ取れない、というちょっとした矛盾に似た現象を垣間見ることがあります。

これはどちらを優先すべきか、という非常に難問になります。

直感と思い込みと主観と事実と優先度


これら複合的な自分の意識外の問題に取り組むために私達はある程度の知識を知る必要がありますが、それらより大切なこと、一番大事なことは、判断すること、であることを忘れてはいけないです。

ただし とかいうもので判断してはいけません。

しかし、キャリアが長くなれば勘というのは「経験に裏付けされた直感」という言い換えができ、上手くいくことも多々ありますが、できれば勘というものを自分で理解することが大切だということを覚えておいてください。


直感

これは音楽的な直感というより、今までの生きてきた中での自分の中の常識だと思ってください。これは住んでいる世界が違う、学んだことが違うことによって直感は実は大きくハズレることがあります。

直感と事実が異なるよくある例として、サンプルレートの問題があります。私達はサンプルレートが高いほうがより高音質だと錯覚していますが、これは事実とは若干異なる側面を持ちます。

ここでは詳しく語りませんが、物理的、理論的にデジタルオーディオの再現性を考えた場合、高サンプルレートは音の再現性に悪影響を与えるいくつかの問題があります。これらはたくさんの場所で語られている事実で、私達は物理的、論理的に考えれば、16-bit/44.1 kHz 以上のデータは必要ありません。

これは事実です。しかし、その事実を差し置いても、いろいろな要因により、現在は 32-bit/48kHz か 96kHz での制作が主流です。事実と実際の作業に乖離があることは悪いことではありませんが、知っておくと問題回避に役立ったり、判断材料として理解が深まることになります。


思い込み

冒頭で語ったように、私達は無意識の思い込みが発生して、事実とは異なる判断をしてしまうことがあります。同じ音を聞いているはずが、事前に嘘を伝えるだけで、相手の判断を誘導させることが出来ます。詐欺の手法や催眠術に近いものを感じますね。

せっかくアウトボードを買ってそれを通した音が悪くなるなんて思いたくないので、私達は新しく買った機材に対して悪い印象を持ちたくありません。これが思い込みと主観的な事柄に左右される問題です。

このようなことがあるので、思い込みは実は正確な判断を鈍らせる要因となります。ですから思い込みを抜きにした、ちょっとした合理的判断をするための、思考回路といいますか、順序立て、ロジスティックに物事を考えてください。これは全てにおいて採用するわけではなく、判断に困ったときに利用するということです。


主観

例えば、位相変化が原因で音が変わるのは当たり前ですが、この処理をしないと自分の主観的な問題と相反する、という状況が結構起こります。

最近は Low End をフォーカスする楽曲が多く、そのため High-pass Filter を多用する場合があります。(昔から High-pass Filter は多様されているが。)

いろいろな研究資料を読み解くと、Filter というのは一番の位相変化を生むものだと書かれています。極端な Oct-Q を使えば使うほど激しい変化を生むそうです。(実際には数学的な関連性があるそうです。)

しかし、この Filter を多用する条件としては Low End の帯域を空けることで、そこに深みのある低音を配置するのに役立ちます。また、余計な低音は音の輪郭やスピードに影響を与え、カットするほうがいい場合もあります。しかし、位相は変化します。

主観的な問題とは、ここでは Low End の帯域を空けたいので High-pass Filter を多用する、ということにあたります。主観的な判断としては至極まっとうですよね、ボーカルを聞かせたいのである一定の帯域の EQ をする、と同じことです。

このとき知識が豊富過ぎると、ある一定の理を得たい場合、いくつかの犠牲を伴うことを理解できます。この場合どちらの利点を優先し、どちらの欠点を出すか? という悪魔の判断を迫られます。そして最終的な判断は主観的な問題なので、ここで事実と優先度の問題に発展します。


事実

ここでの事実は High-pass Filter を利用すると位相変化する、ということ。

位相変化がどんな効果を生み出すかと言うと、端的に言えば不自然さです。しかし、事実として音が変化しているのですが、主観的に不自然さを感じるか、感じないかは、人それぞれになります。

ここでは自分の耳を信じる、という主観的な判断が貫き通せるか、それとも他の判断材料を探すか、になります。個人的なことを言わせていただくと、自分の耳を信じて、Engage か Bypass か判断すればいいと思うのですが、もう少しレベルアップをしたい場合には、やはり勉強するしかない、ということになります。

事実を知ることは大いに賛成ですが、判断を鈍らせるための知識の使い方をしてはいけないことに繋がります。頭でっかちになればなるほど、合理的な判断を求められます。ですから知ることは大いに賛成ですが、使い方を誤ってはいけないということです。

あっちを立たせればこっちが立たずの状況は音楽制作では日常茶飯事です。柔軟な判断とは合理的な側面も持ち合わせていますが、自分の耳を信じるということにも繋がります。結局責任は自分自身にあります。機材やデータのせいにしてはいけません。


優先度

ある一定の経験を積むと、ポリシーと言うか、テンプレが出来上がります。そして、そのテンプレやポリシーを侵害することは結構難しいです。これは性格的なものも影響しますし、やはり一度このテンプレやポリシーが自分の主観的なレベルで現状最高だと思っているからです。(直感、思い込み、主観、事実に反することがここで集約されます。)

そうなると、あとあとテンプレが原因でなにか問題を起こしていたことを理解しても、その処理は自分が納得して培ってきたものなので、おいそれと変えることは出来ない場合があります。

これがエンジニアにおける、優先度問題です。(処理構造が大事なのか出音が大事なのか問題)

「私は必ずこの様に録音します。」「私は必ずこの様に処理します。」というものを壊されるというのは結構ダメージがでかいんです。だから優先度を変えられずに、そのあとの処理をどうするか、ということになります。

できれば優先度は自らぶち壊してほしいです。極端な変化をしたものを治そうとする場合、信号処理的には上手く行かないです。だからそのテンプレやポリシーをあっさり壊すというか、Bypass する勇気を持ってください。

ですから、こうしたほうがいい、ああするべき、などと発言しているエンジニアさんの言うことは参考にすることは大いに構いませんが、鵜呑みにはしてはいけません。もちろんテンプレを使うこと自体は全然悪いことではありませんが、自分自身で必ず判断してください。

合理的に判断する


私達は合理的に判断できないことが非常に多いです。それは精神的な状況に左右されしまい正常な判断が出来ない場合は非常に多く、判断するための事前知識がないために、不安に駆られるからです。


1. Bypass を多用する

正直、音声処理は全てにおいて時と場合と相手による、とずっと昔から言い続けています。ですから、常に音響的な最適解を選び続けることに意味はありません。また、常にその処理いらなかったんじゃね? と思うことが非常に大切です。

今月 2 回ほど Youtube Live でミックスをして見る放送をしましたが、自分でも全くエフェクトを多用しないセッションにある意味びっくりしています。客観的に自分のセッションを見る機会がなかったので、自分でも新しい発見がありました。


2. 客観性を常に

私はマスターを提出する前にマスターを書き出しして、次の日にマスターを聞きつつ、セッションに戻って、修正箇所を洗い出します。

大体、自分は ミックス中は手抜きをしがち です。ですから、次の日に手抜きした部分を修正していきます。時間を掛けていくこと悪いことではありません。素早い仕事とクオリティの両立は絶対に無理です。

日本では掃除 (仕事) は素早く完璧に、なんて言う人がいますが、素早い掃除 (仕事) は完全に悪手です。掃除機はゆっくり使わないと性能を発揮できません。つまりちゃんと掃除機で掃除する場合はゆっくり掃除する必要があります。

それと一緒で時間を掛けるほうがいいです。


3. 常に処理は消去法

これは個人的な音声処理のポリシーですが、私は全てにおいて、必要に駆られてエフェクトをインサートします。Bypass すると似たような感覚ですが、処理をするには必ず訳があるのです。

ボーカルに EQ や Comp をするときに、みんな使ってるから私も使う、という謎の同調圧力みたいな感覚は絶対に捨ててください。

必要ない処理はしてなくていいのです。必要ないと判断出来ない場合は、判断できないのだから使わないで ください。

自分がこうしたいから、ああしたいから、の処理は最後です。まずは、これは処理しないとまずいな、的な場所を見つけてそれらを終えたあとに、自分の色を出すような処理にかかってください。

推測と洞察


これが実は重要になります。

なにか問題が置きている音声がある場合、なにが問題で、問題に至った経緯を推測、洞察できるようになることが大事です。

それらの推測や洞察ができるようになると、主観的な感覚から問題を問題でなくす事ができます。


位相ずれした音声が紛れていた場合。(極端なマルチマイクを使ったレコーディングやワイヤレスをつかった現場では良く起こる)

殆どの人が信号ズレや波形飛び自体を問題視、または不備があったと文句を言うと思いますが、これはエンジニアリングにおいて不適です。

まず、それは本当に問題なのか問題ではないのかを確認することです。出音判断で OK である場合、それは問題ではなくなります。

推測、洞察力が発揮されるのは、どのような処理をしたら最適に修正できるか、ということです。問題が問題となるか、はエンジニアのレベルで左右されます。

修正すればもっといいものが出来上がる可能性があります。問題があった事実はあるにせよ、位相ズレは修正もしくは出音 OK で問題ですらなくなっています。

ここで言いたいこととは、エンジニアのレベルで問題は回避される場合があるということです。これは推測や洞察ができる (ほどの知識量を持つ) エンジニアは一般的には問題と思われることが、問題でもなんでもなくなるということです。(または考え方の問題の場合もある)

自由度が下がることを避ける


もちろん、デジタルオーディオには実験から理論的最適値があります。

例えば Linear Phase EQ のチャートには面白い指摘があります。

ここには Linear Phase EQ を使うときは Q は 1 以下が望ましいと再三書かれています。実際 Linear Phase EQ を使う場合、原音を損ないたくはないが EQ をしたい、という前提から極端な Q 設定をする人は殆どいないと思いますが、この事実を知っているだけで、極端な 2 つの人種が出来上がります。

  • Q を 1 以上に設定しない人
  • Linear Phase EQ を使わない人

どちらも正解でどちらも不正解です。自由度を妨げてはいけません。ここでエンジニア考えます。

ここでは Q 設定が極端なことが悪となるが、自由度を下げてはいけない、という掟があると、これらの設定は簡単に覆すことができる。

話の筋としては 優先度 の問題と酷似しているが、情報を鵜呑みにしすぎると、自分で自分の制作の制限を設けてしまう。

これだけは気をつけよう。なんにしても柔軟な発想と、問題を問題と認識させない人がプロだと思う。

まとめ


実はほとんどの場合、自分の「神様」との戦いです。例えば、ギタリストでも自分は Fender 以外のギターは絶対に使わない、みたいなギタリストいると思います。それはどちらかというとポリシーに近いもので、Fender 以外のギターでもおそらくそのギタリストはちゃんとギターを弾けるはずです。でも Fender 以外は使わない。これを私は自分の神様と呼んだりします。

この神様が邪魔する場合もありますが、神様と上手く付き合うことが一番大切です。

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  • 書いた人: Naruki
    レコーディング、ミキシングエンジニア
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