保存の仕方で音声は変わるのか?
SSD や HDD で音が変わるというエンジニアは多いです。正直、笑ってしまう人もいるかも知れませんが、当たり前ですが、保存方法で音質は変化します。
当たり前というのはちょっとそんなこと聞いたことない知らない人にとっては、なんか嫌な言い方に聞こえるかもしれませんが、このサイトの記事を読んでいる人であれば、大体なぜ、音が変わるのか、予想は簡単にできると思います。
通説
かれこれ、7、8年前でしょうか、当時はまだ、HDD が全盛期でしたが、ある有名なマスタリングエンジニアさんにお話を聞く機会がありまして、そこで、
なんていう話を聞いたときには戦慄しましたが、正直そこまで変化はないだろう…とタカをくくっていました。
現在は SSD 全盛期、SSD が普及し始めた頃、エンジニアさん達はこぞって、
と口を揃えていっていました。確かにスピーカーの反応が速い、といういかにもエンジニアさんらしい、わかりにくい表現ではありますが、音色が違うのは自分も認識していました。
保存媒体が違えば原理はどうあれ、音は変わるのだ、という認識はプロエンジニア界隈では非常に常識的な認識のお話です。
実験内容
前回、Thunderbolt と USB 接続で音が変わるのか で説明した通り、通信規格で音が変化することは証明済みです。つまり、保存の仕方が違うストレージでは音に違いが出ることは、容易に想像できます。
今回、音の差を明確に出すために、iMac の内蔵 SSD から音声を再生して内蔵 SSD にデータを録音、保存、逆に比較用のデータは外部ストレージから音声を再生し、外部ストレージへ録音データを保存、ということを行いました。
いつもどおり、愛機 AMÁRI ちゃんにお手伝いを頂きました。
データ信号の流れとしては、
外部ストレージ → 再生ソフト → DAC → ADC → DAW → 外部ストレージ
外部ストレージは USB 3.0 規格で接続しました。
視覚的結果
衝撃的な結果です。一目瞭然。

何も言うことはありません。波形でこれだけ差があります。一瞬で両者の違いを耳でも知覚できます。
比較用に音声をアップロードして皆さんに聞かせたいのですが、リファレンス音源には原盤権があるのでおいそれと載せられません。もし非常に上から下までまんべんなく音が存在するロイヤリティーフリーの音源ありましたらご提供ください。
個人的な見解ですが、USB 接続の外部ストレージの 波形は荒く、SSD の 波形は細かい 印象を受けます。
聴覚的な感想
SSD で保存した音声はどちらかと言うと迫力は薄く、外部ストレージに比べ、低域の量感が違う。SSD の音声はクリアだが、外部ストレージの音声は歪みが多い印象を受けた。
低域の再生している周波数帯域が絶対に変化しており、低域の重心が外部ストレージの場合、上がっているように感じた。SSD は落ち着いて低域の再生をしているように感じた。
低域の量感の違いは、低域の再生周波数が若干上の帯域に移動したから、だと感じる。それを証明するために、両方ともスペクトラムを見てみた。
スペクトラムの解説

まず、赤い線が内蔵 SSD の周波数特性、青い線が外部ストレージの周波数特性。
SSD のほうが、極低域、30Hz 〜 80Hz は量感があるのに対して、USB 接続の外部ストレージは 100Hz 〜 200Hz つまり、スピーカーが余裕を持って再生できる低域の量感が多い、だから迫力があるように聞こえた。
スペクトラムを見てもこれだけ音の違いが見て取れる。聞いてみるとものすごい変化していることがわかる。
どちらがいいかと言われたら、パッと聞ぎは、外付けストレージのほうがいい音だと感じる方が多いかもしれません。ただし、SSD のほうがクリアでストレートな音がします。
正直好みの問題だとは思いますが、USB という規格を通過するだけで、歪みの量が増える、低域の特性に変化がでる 可能性があることが、前回の実験 から更に証明されました。
総括
できれば、ご自身の環境で検証したほうがいいと思います。SSD や HDD、外付け、通信規格、それぞれで各々変化します。あくまでこれは一例です。
正直ここまで変化が顕著に現れてしまうと、ご自分の耳で判断するべき ですね。もう一度言いますが、今回の検証は 違いを明確に出すため にあえて、外部ストレージを使いました。
こんなことまで気を配るのはナンセンスだと思う方は何も考えずに内蔵ストレージに保存するのが吉かもしれません。USB 経由で外部ストレージへ録音するのはちょっと避けたほうがいいかもしれません。これらの結果から、USB 経由での音声信号のやり取りをし、保存先のストレージの形式が違う場合は、かなり音に影響を及ぼす ことが示唆されます。
個人的には、色々考えて悩むよりも、新しい通信規格を積極的に使っていくことが望ましいと思います。