Pro Tools AUX I/O はただの中間ドライバ

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Pro Tools AUX I/O はただの中間ドライバ

Pro Tools AUX I/O はただの中間ドライバ 

Pro Tools 2022.09 で AUX I/O が実装されました。

なんかすげぇ機能だって思われているので、実際に実用に耐えうるのかを確認していく。

これは、ガチプロ Pro Tools ユーザーに向けた解説となりますので、チンプンカンプンなことがたくさん書かれていると思います。実用的に Pro Tools を使われているエンジニア等に向けた、内部ルーティングに関する客観的な情報をここでは解説していきます。

記載されている内容は状況から推測される事柄がたくさん書かれていますので、本気で気になる人は Pro Tools の Expert 認定資格を有する人に聞いたりしてください。私は PT 201 を数十年前に取得しましたが、当時もかなり Pro Tools は曖昧な事柄の試験をした経験があります。(試験も確か全部英語だったしな)

実際にはただの中間ドライバ


最初に結論を言うならば、別に Sound Flower とか BlackHole と一緒です。AUX I/O は中間ドライバと簡易的な BUS ミキサーが内部に実装されただけと同じで、中間ドライバが標準で提供されますよ、中間ミキサ機能が Playback に実装されただけで、実際に運用できる範囲は RadioCast + Sound Flower とか BlackHole から拡張できるか、問われたら絶対にそんなことはありません。

なぜかというと、Pro Tools の最悪なミキサールーティングにあります。

みんな割としらない Pro Tools のダイヤグラム


Pro Tools のミキサーダイヤグラムってホント「クソ」なんです。

簡単な図を製作しました。

現代では通用しない古いというか、他の DAW とは異なる出力設定

Pro Tools のミキサーダイアグラムの簡易版です。Send は Pre-Fader と Post-Fader があり、デフォルトでは Post-Fader です。Pro Tools が最悪なミキサーであるのは、Post Master、つまりここで言いたいことは Master Track を Pass することに該当する出力が存在することです。

通常、Bounce は I/O に出力されている信号、つまり Master Fader 後の信号が出力されます (もちろん複雑な設定をすると変わる)。Pro Tools はそれ以外にも Bus や個別 Output の書き出しが可能です。ただし、Master Track の出力をちゃんと指定していない場合はすべて Bus や個別の出力は Pre-Fader の情報が書き出されます。これは Pro Tools 上の I/O のチャンネルとは関係がなく違います。

例えば、Bus のチャンネルを書き出すと… Pre-Fader の信号が書き出されます。その Bus に Master トラックを設定していない場合、Bounce 機能はすべて Pre-Fader で出力されます。Bus はアウトの集合体で Bus Track 前の信号なので、あたりまっちゃそうなんですが、現代の DAW の設計から考えると正直、Post-Fader Bounce が欲しい。というかトラックバウンスすればいいことかもしれないですが。

なんかいい方法お持ちの方教えて下さい。もちろん、余ってる Bus にルーティングして Rec すればええやんって言う人多いと思うけど、リアルタイムは嫌やねん、Bounce したいねん。って場合最近多いねん。つか、Track Bounce を Bus に行えばええだけなんだけどさ…笑

つまり、柔軟に信号を Pre-Fader 設定や Post-Fader 設定したい場合は、Bus や個別出力に Master Track を指定し、最終的な物理の Out 設定を Master 指定する必要があります。なんと、面倒な!?

まぁ普通に考えればそうなんだが、Master Track が Bounce 分必要やないかい!素直に Track Bounce すればいいのだけど、Multi-Bounce で一気にやりたいなぁって。思うわけで。

たぶん、わかりやすくていいし、後段の機能としては割と優秀なのかもしれないですが、Master Track という分類の Fader が増えるので、Input Trim 機能とかあると嬉しいですよね。それが Master Track の機能なんだけどさ…

僕は Pro Tools 9 になってから Pro Tools の資格を取得したので、それ以前の知識は持ち合わせていないのですが、おそらく、昔の Version の Pro Tools は Master Track だけが 48-bit Fixed 処理に対応していて、プログラム内部的には Mixer Engine と Master Fader Track Engine が別々に実装された経緯があり、それが原因なのではないか、と思っています。

実際の内部エンジンの処理構造はまったく知りません。現在はすべての Fader が 64-bit Float になったと思っていますが、明らかに Pro Tools の Float 処理は Studio One と比べて「クソ」です。ただ、最近は調べてないのでこの情報を鵜呑みにしないでください

Master Track を設定すると、Pre-Fader 処理だったものが、Post Master Fader 処理に変わります。

なぜ Pro Tools のこの機能が最悪なのか


最悪な事柄、それは

Master Track には Send の概念がない。

ことです。

Master Output の Track には Send の概念がないので、Pro Tools は Master 信号を分配する機能が事実上存在しません。つまり Pro Tools の Post Master の信号を複数のデジタル出力へ送るということは不可能なのです。

つまり、AUX I/O が僕はこの不便な出力構成を解消してくれると思ったら大間違いでした。ただの 仮想 I/O を構築してくれるだけで、根本的な Mixer Diagram の問題を解消してくれるものではありませんでした。

何という肩透かし。


そして最悪な Master Pass な機能

Pro Tools の非常に最悪な信号ダイアグラムとして AFL (After Fader Listen) という機能があります。

これを利用するエンジニアは実は少ないと思います。ただし Pre-send や AFL 機能がないと、Only Send Monitor がとても面倒なんです。んで、私は割と AFL 機能を多様します。ショートカットキーも割り当てています。

ただし、この AFL は Master Fader を飛び越えて直接物理アウトにルーティングされているのです。

AFL/PLF はなぜか、Master Track までも Pass して物理アウトに出力される。

AFL/PLF は Master Track を Pass して出力される。Bounce の場合は Master Track が設定してあると、Post Master の信号が出力されるが、AFL/PFL は Master Pass してしまう。Master Track は見栄えは少々わるくなるけど、Bus の Pre-Track-Fader の役割みたいなものになる。

たぶん、このことを皆さん知ってると思いますが、気にしたことある人はどれくらいいるのでしょうか。昔のアナログ卓の AFL/PFL の機能を考えるとこのダイアグラムは決して独特の設計ではないにしろ、現代の環境には合っていません。

AFL が Master Pass ということは AFL を ON にすると、信号は Master の Fader を飛び越えて物理 Output へ出力されます。すべてのダイアグラムを飛び越えて AFL/PFL の設定 Output へ出力されるため、全ての中間 Fader が無視されます。これは Final の Master Fader でさえ、そうです。

ですので、Master Track を Send 設定出来ないという構造プラス、Master Track を飛び越える機能があるという他の DAW では考えられない設計となっています。これは Pro Tools の最終アウトを複数設定したとしても回避不可能です。

つまり、AFL の機能はどう頑張っても自分の物理アウトでしか視聴出来ないということになります。もちろん物理アウトを再度 Input して別チャンネルへ流すということをすれば可能ですが、なんのための Virtual Driver なんだって話になる。


少しまとめ

Pro Tools のミキサーは現代製作の手順に置いて「融通が効かない」のである。

各チャンネルを Bounce しようとしても、冷静に考えればトラック前の信号が書き出されるという状況なので、最終的にはトラックバウンスを実行したほうがいい。まぁそのための Track Bounce 機能だ。

特に Stem 納品をするとき Bus でまとめて Bus を Bounce したいとき、Fader バランス通り書き出しは出来ない。そのために Master Track を各チャンネル用に実装する必要がある。もちろん、Bounce を別トラックへリアルタイム書き出しする人はなんの問題もないが、Pro Tools にはちゃんと Multi-Bounce 機能があるにも関わらず、実際には Track Bounce とは同じ用には動作しない。少し手間が必要である。

そりゃダイヤグラム考えりゃ当たり前だけど、Post Fader あとの Bus Bounce 機能実装されないかな…素直に Track Bounce しろよって話だけど…笑

AFL 機能は Master を飛び越えて、物理 Output に出力されるため、AFL 機能はシビアな製作現場では全く役に立たない。バランスを保ったまま、Solo 機能を有効にできないし、Solo 機能を使った場合、機能を使いながらのマルチ出力には全く役に立たない。

つまり根本的な出力の問題解決には至っていない


AUX I/O 機能は複数のアプリケーションを介す必要がなく、インテグレートに Pro Tools 上で出力を管理できるのは非常に有用な機能であるが、根本的な Pro Tools のポンコツダイヤグラムの問題が解決できるわけではない。

ただ、Sound Flower と RadioCast の機能が Pro Tools 内部に実装されただけで、全く根本的な問題の解決には至っていない。Post Master の信号を私は融通よく機能させたいのだ。


いやいや、I/O Setup に AFL/PFL の設定あるやんけ

そういう人、いるのはわかります、ただし、これは出力が複数に分けられないのです。

そして、おそらく最初に語ったように AFL/PFL 機能は Mixer とは関係のない I/O セクションに実装されてしまっている (Pro Tools 上の Mixer をすっ飛ばしている) ので、物理 Output 以外にルーティング出来ないのです。仮想ドライバに出力させることができますが、自分が今度は視聴できなくなるというふざけた機能なのです。

もちろん、すべての出力を仮想ドライバ経由して再度物理アウトにルーティングすれば可能ですが、それじゃ、なんのための内部出力 AUX なのか、って話になる。

もちろん、AUX I/O を経由した音を Physical Output として扱うのは Pro Tools 最後の壁なのだが、モニターレイテンシーの問題がある。そして AUX OUT は Physical に出力はできないので、結局 Pro Tools とは別の出力ミキサーが必要になる。

ん〜 Pro Tools インテグレートしたいのに本末転倒だ。

AFL/PFL が Master 前に実装されていれば、出力のセーフのための Fader 調整ができるのに、AFL/PFL 機能なのに、Master Fader を Pass するという After Fader Listen じゃないんかい! っていうツッコミがしたい。いや、Pro Tools の 所謂古典的なそういう Solo モードなのは理解しているんだけど、流石に Studio One や Logic のように、古典的な AFL/PFL の機能は廃止して、Master trim の有効無効のオプションあってもええんやないか…?

つまり、この機能はなんのため?


HDX ドライバは HDX デバイスしか Playback 出来なかったので、AUX I/O 機能を使うと Core Audio デバイスも同時に入出力を扱えますよっていう機能。あたりまえだけど、タイミングは合いません。同期も出来ませんし、遅延補正も効きません。つまり実用には耐えないけど、遅延を無視できる用途には使えます。

まず、エンジニアとして利用価値はほぼ無いです。あるとしたら複数の Core Audio のリアルタイムコンペティションくらいしか思いつきません。あとは、うーん。複数の DAW の信号のやりとりを AUX I/O で可能ってくらいかな、ぶっちゃけそんなこと AUX I/O じゃなくて、ハードデバイスでできるし…

HDX と Core Audio を別々に動かすなんて、通常はできないけど、私の利用デバイスの場合 HDX も Core Audio も両方同時に動く、高性能デバイスなんで  HD I/O とか使ってる人からしてもあまり旨味はないっていうか、HD I/O に Core Audio の機能ないし。

う〜ん。この機能を存在意義とは。


結局 Loopback があれば AUX I/O の機能いらない

AUX I/O の機能をフルに活用しようとおもうと Loopback の機能が必要になるんだけど、Loopback が AUX I/O の機能を実装していて、わざわざ AUX I/O の機能使わなくてもいいって本当に AUX I/O の使いみちが全く思い浮かびません。

Loopback を独自で形成できるオーディオデバイスの場合、HDX 出力でも Thunderbolt/USB 出力も自由に Core Audio Input に入力できるので、別に AUX I/O も仮想ドライバも中間ミキサーもいらないのだ…

どうしたもんかね。

Monitor Path や AFL/PFL Path が重要なのだが、これは物理アウトしか有効にならない。最終 Master を飛び越した設定になるので、Pro Tools 上の Master 操作は全く関係なくなる。Monitor Out や AFL/PFL の信号を融通できたらなぁ。
現在利用中の Galaxy32 というデバイスは任意の信号 HDX であろうが、Thunderbolt の信号だろうが、好きなところに Loop できる。つまり AUX I/O より柔軟な信号を形成できる。
結局 AUX I/O の仮想出力を仮想的に扱いたい場合、Loopback や RadioCast が必須になる。だから既に仮想ドライバを利用している人は AUX I/O を利用する価値はなし。
Galaxy32 の信号を内部ループさせ、OBS 上でその信号を入力させれば、Loopback 用のアプリすら必要ない。

う〜ん。AUX I/O マジで入力と出力の I/O を分けたい、とかいう、ちょっとプロじゃ考えられない状況や場面でしか利用できない。

正直、商業の制作現場で同録ズレを気にしなくていい、マルチデバイスを扱う現場なんて無いと思う。どんな状況だ? おそらくアマチュアやセミプロの現場とデバイス検証やモニターセクションがやや簡易的な状況、もしくはガッツリ同期させて、出力だけ分けたい Mastering のとき、くらいしか思い浮かびません。

Mastering で入出力デバイス分けれるのは、割と需要ありそうだけど、多分みんな Pro Tools で Mastering しないっしょ…そんな状況あるかな?

いや、出力 DAW は Pro Tools で Record DAW を別の DAW と I/O はできるな。今の所そんなこと考えられるけどたぶん Mastering Engineer はそんな事考えないでしょう。

無いよりはマシ


Pro Tools ユーザーにとっての鬼門は Pre-Fader 機能と Post Master Pass の機能をしっかりと把握することで、ここが解消されない限り、Pro Tools が便利である、とは絶対に言えない。こんな事考えるなら素直に Galaxy32 の内部ルーティング素晴らしい! とか Studio One の Output セクションはまだフレキシブル! って思うだけ。

AUX I/O はもちろん Core Audio 間をマルチで扱えるので 2In 2Out しか利用できない HDX 対応デバイスを Core Audio という制限ながらマルチ入出力を提供してくれるので、高度な Compensation を把握しているエンジニアであれば、ギリ実用に耐えうるかもしれませんが、HDX と Core Audio ではマジで同期は非常に難しいし、レイテンシー性能も違うので、一色たにできないのです。

ついでに配信系で使い方を模索しようとしたら、OBS が優秀すぎて、AUX I/O は別にいらないという落ちに。Windows 版なら複数アプリの信号を直接 OBS に流せるので、既に仮想ドライバすらいらないという。

AUX I/O はたしかに複数デバイスを同一コンピュータ、Pro Tools 上で扱えますが、扱えるだけで、実用的かと言われれば、かなり疑問が残るモノです。Compensation も難しいし Sync behavior も難しい。


終わりに

さてはて、酷評の AUX I/O 機能ですが、有効に使える方法を見つけた方は教えて下さい。複数デバイスが利用できるようになったとか、そんなの AUX I/O 実装以前から可能でしたので、そんなの利点でもなんでも無いです。

もちろん私が考えつかなかった範囲の話をお待ちしております。

ただ、Pro Tools 上で少しだけ管理ができるようになった程度です。Core Audio やハードデバイスの同期遅延は回避不可です。だってドライバ違うじゃん。通信速度も異なるだろうし、完全同期はかなり難しい。賞味些細な違いでシビアになる必要はないけど、実用的、ではなく、あくまでパーソナルな状況では実用的かもねってレベルですね。

もっと詳しくレイテンシ情報や Sync が可能かは、おいおい確認したいと思います。

ばいばい。

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  • 書いた人: Naruki
    レコーディングエンジニア
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