セキュリティとパフォーマンス
おそらく DTM 界隈? でセキュリティに関する記事を書いている人はあまり多くはないと思います。これは DTM というかコンピューターとの戦いを語る記事となります。
毎回、私は梅干しを食べたスッパマンのようにクドくいいますが、DTM とはコンピュータオーディオを制することです。つまり、DTM とは「コンピュータを知ること」と、ほぼ同義だと考えています。
今まで同系統の記事は1つもみたことがないので、最近気になったことをまとめます。
音楽制作にとってのセキュリティ
物理的なセキュリティ
もちろん、僕のようなエンジニアはデータ流出という部分の物理的なセキュリティに関する知識というか意識が必要です。ありがたいことにハリウッドの映像制作に関するお仕事を頂くことがありますが、データ流出に関しては非常にシビアな業界です。ここでは詳しくお話することはできませんが、様々な対策をしています。
納入の仕方が細かく指定されていたり、データ受け取りにも指定を受けたり、さすがに大きいタイトルの作品に使用するデータのやり取りは大変なときもあります。これは古典的なセキュリティですね。
個人的なセキュリティ
最近はウェブブラウザで非常に大切な情報を扱います。例えばクレジットカード情報など。そのためってわけでもないですが OS 側はセキュリティを年々強固にしています。
本当は DTM 用のコンピューターと私用のコンピューターは分けるべきですが、まぁ無理ですよね。
なぜかと言うと、マルウェアなどが勝手に通信をしないために OS やセキュリティソフトが許可した通信以外は行わない、などなど、万が一マルウェアに感染しても、情報が漏れにくい状況にしています。
ただし、これらはオーディオ製品に悪影響を与えることもあります。必要な機能にアクセスするために、OS にいちいち許可を求める必要がある場合があります。製品の正常動作に悪影響を与える場合もあります。
最近では DAW に音が入力されない原因の ダントツの 1位 が OS のマイクセキュリティ問題です。
悪影響を与えるセキュリティ
セキュリティで問題が多いのは、アプリケーション動作への悪影響です。
例えば Anti-Virus ソフトウェアがバックグランドで動作し続ければそれだけ、コンピュータのパフォーマンスは落ちます。特に SSD や HDD の読み込みに介入し、CPU リソースを割り当てるため、必要なんだけど邪魔であるソフトとなります。
Windows も macOS もそうなのですが、最近はマイク入力に関しても許可が必要です。これはオーディオインターフェイスも同様です。
マイク入力を OS 側で許可しない限り、オーディオインターフェイスで永遠録音ができません。これを許可制にしているのは、マイクを通じてどこかに通信をして、内容を傍受されることを防ぐ、という意味があります。
特に最近はスパイウェアが世界的に問題視されています。スマフォですら、このアプリのマイクのアクセスを許可しますか? 的な表示出ますよね。非常に大切なことなのですが、それが原因でアプリケーションの正常動作を妨げる原因にもなります。
また、セキュリティによってはインストーラーを弾きます。インストールに成功しました。と出ても、実際にはセキュリティがインストールしたデータを削除している場合もあります。
インストールに成功しないことも多々あるので、気をつけないと一生ソフトウェアが使えない状態に陥る。そんなことは気にならない人もいると思うけど、意外と盲点だったりする。
Anti-Virus ソフトは音質に悪影響する
これはある会社の CEO に聞いた話で、具体的な理由はそこでは突っ込んで聞けませんでしたが、Anti-Virus ソフトがオーディオ音質に悪影響を与えるそうです。
どんなロジックかはわかりませんが、とにかくバッググランドで他のアプリケーションを動かさない、ということは基本中の基本っていうことですね、だいたいが USB のストリーミングに悪影響を与えるということです。
本当にコンピューターオーディオって難しいよね。
セキュリティとはちょっと違う可能性がありますが、OS の機能によっては USB ストリーミングに悪影響を与えることは知っておいたほうがいいとは思います。
DTM とセキュリティ
Anti-Virus ソフトを入れるとか、ファイヤーウォール設定をちゃんとするとか、普通にできることがあるのですが、それらはちゃんと OS とオーディオインターフェイスの動作関係、音楽ソフトウェアの動作関係を把握している必要があります。
もちろん、これらは一般スキルに該当するレベルのものだと思いますが、よくハマります。アプリケーションとセキュリティ関連はよくハマります。だからといってセキュリティをおろそかにはできません。というか OS 側が勝手に制限を書けています。
一番はマルウェアに感染する恐れのあることをしない、に直結します。
一番多いのはメールの添付から侵入するタイプですが、最近は流石に引っかかる人はあまりいないと思います。
しかし、DTM、クリエイター側の人間は非常にマルウェアに近い存在なのです。以下にその危険性を解説します。
クラックソフトウェアとマルウェア
正直言いますが、クリエイター界隈ではクラッキングソフトというものはもはや空気と一緒です。見えないけどそこにある、くらい暗黙の了解というか個人利用のみの利用であれば…非常に言いにくいのですが、そこにはあるんだけど見えない、と言う状況です。
もちろん、私は ProTools 使いなので Crack AAX がほぼありません。だからクラッキングとは無縁です。
クラックソフトとパフォーマンス
最近のマルウェアはコンピューター自体に悪さしてやろう、というものではなく、リソースをバレないように奪ってマイニング利用したり、分散コンピューティングに利用したり等で、よくある「ウィルスに感染した、コンピューターが壊れた!」というようなことはまずありえません。
例えば、クラックソフトウェアに忍ばせたコードは、そのソフトウェアの動作には何ら影響を与えず、クラックソフトウェアは正規ソフトウェアと同じ様に正常に動作します。忍ばせたコードはソフトウェア動作とは関係のないところで、着々と動作しているのです。
だからクラッキングされたソフトウェアを使用している人は何ら不自由を感じないのです。もちろん見えないコードが動作しており、リソースを奪われている、とは思いも寄らないと思います。
もちろん、リソースを奪うだけのコードではありません。DAW の場合、偽装して OS のセキュリティを難なく突破することができます。よくわからないソフトウェアがセキュリティの認証を求めたら Deny すればいいですが、DAW が許可してくださいってアラートしたら許可しちゃうよね。
Ableton Live のクラックで見つかったもの
Ableton Live は今や世界一のシェアを誇る DAW です。
最近のセキュリティ研究の報告の中に、Ableton Live クラックの内容がありました。
Ableton Live のクラック版は正規ソフトウェアに悪意あるコードが足されていたようですが、これが全く Ableton Live の動作に影響を与えなかったそうです。ただし、Ableton Live の影でコードは仮想通貨のマイニングを行っていたことが報告されています。
つまりクラッキングソフトはやはりパフォーマンスに悪影響を与えていたのです。
もちろんマイニングに利用されている以外にも踏み台にされたり、データを盗み出したり、通信を傍受されたりなどなど、いろいろな実害が考えられます。
セキュリティで得られる利点
セキュリティソフトの影響でパフォーマンスの低下を引き起こすこともあるかもしれないが、それ以上にマルウェアの実害が大きい可能性がある。
セキュリティの意識というのは結局は自分自身の良心の呵責の範囲の話となる。
正直に言うがクラックソフトウェアはアンダーグランドネットには普通に存在するし、物価価値が違う国の人にとっては 1万円のソフトウェアすら超高額ソフトである。同じ様に海賊版 mp3 の昔話と一緒で聞けないから mp3 をダウンロードするしか無かった、という人たちも存在したんだ。
OS 側のセキュリティが向上しているため、マルウェアの手口が巧妙になっているので、俺は大丈夫って思っていても、感染している可能性は非常に高いです。
特に DTMer、クリエイター諸君、クラッキングソフト使ってないかい?