Black Friday in 2021
今年もこの季節がやってきました。
去年も実は BF で買うべきプラグインを紹介していますが、今日はもっと的を絞って実用的な用法も交えつつ、余裕があったら買っておくべきプラグインを紹介します。
もちろん、去年と被っているものもあると思いますし、あくまで個人的に利用頻度が高いものを紹介しますので、別に全員におすすめするとかではなく、買って利用価値があったものを紹介していきます。
今回はプラグインの実用例も含めて紹介したいと思います。本当はこういうのは Youtube に動画でも作って Upload すればいいと思いますが、いずれやるかもしれません。
EQ
Fabfilter – Pro-Q3
説明不要かと思うけど、一応ね。この EQ は使い込むと素晴らしい威力を発揮する EQ です。
前バージョンの Pro-Q2 あたりが出た当時は、この EQ 以外には選択肢がありませんでした。強いて言うなら Massenburg EQ かな、ってくらい。もちろん他にも色々あったけど、気軽に利用できる代物ではない EQ ばかりでした。
現在では対抗馬の EQ がちらほらでているので、Pro-Q3 離れしている人もいるとは思いますが、Pro-Q4 を開発中だろうし、また素晴らしい Update が来ることを願って最初に紹介させていただきます。
また、使い方を熟知すれば本当に別に他のプラグインを利用しなくても他のインテリジェント系プラグインと同じような効果を得られます。ただし、使い込みや操作性を熟知する必要があるので、ボタン一つでその効果が得られる他のプラグインを利用する方が楽ではあります。
つまり、Pro-Q3 を理解すればするほど他の EQ やユーティリティプラグインは必要ありません。一つを買って一つを極めるというエンジニアリングにはもってこいな EQ です。
Pro-Q3 の実用例
最近は Resonance (共振や共鳴) に対する適切なアプローチを求める手法が一般的になりました。別に削る必要性は独断感じませんが、処理できる技術を持っているか、持っていないか、は重要です。それを利用するかしないか、はまた別次元の話です。
一つ、個人的にドラム音源の処理について非常にシビアになってほしい、という願いがあるのでここに自分が Pro-Q3 を利用した処理 Tips を紹介致します。
最近のドラム音源はかなり品質志向で、いわゆる 生々しいドラム音源 が多いです。
一つ、ドラムとは確かにサンプルされている音は重要ですが、処理されていない音はわりと聞くに耐えません。
その実例として、スネアドラムによく起こる、不安定な倍音処理を紹介致します。
オリジナルのスネアの音はいわゆるスネアのリングサウンドが少し強めで、コレ自体は削りすぎると、良くないのですが、このリング音がピッチが悪いというか、ヘッドのピッチベンドの作用により、ちょっと間抜けなサウンドに感じます。
Pro-Q3 には大雑把にレゾナンスの帯域を見つける方法があります。EQ の FFT の下部をマウスホバーし続けると、FFT がキープされます。そして、ある周波数帯にチェックが付きます。そこに当たりをつけてカット EQ を設定します。これだけです。
処理した音は以下です。
あまり差異を感じられないかもしれませんが、ピッチの変化に注目してください。若干不安定で不明瞭だったスネアが少しだけ印象が良くなりました。EQ を行ったぶん、すこーしレベルが下がっているので、印象としてはオリジナルのほうがいいと思う人もいるかも知れません。
ただ、ここでは、レゾナンスの処理を簡単に行う一つの一例としてこの EQ の使い方にフューチャーしているので、音は二の次に考えてください。操作性のお話をしています。目で当たりをつけたほうが、聞く時間が必要な操作より、格段に早い仕上がりが期待できます。
もちろん、EQ の音質担保の機能も豊富で、Natural Phase Mode や Linear Phase Mode の切り替えも可能。最近は位相変化に敏感な人が増えているので、そういう人向けにも利用できます。ただし、レイテンシーが多い機能は多様しません。あくまで必要なときに必要なだけ利用しましょう。
いろいろな EQ に手をだすのはわかりますが、この EQ だけで実はいろいろな EQ の代わりになります。特に視認性と操作性は業界一です。プロが使う EQ でこれが多いのは音質や機能より、その見た目や操作のわかりやすさと動作の軽さ (Zero Latency Mode 時) が所以です。
Three-Body Technology – Kirchhoff-EQ
ここ最近、誰もが「すごいぞこの EQ」と持て囃されいる 超新星 EQ です。
中国ベンダーの Three-Body Technology が開発した EQ、何がすごいって、機能の割に値段が安いところ。
まだ実は発表されて間もないため、イントロプライスで買えます。だからバグが多いもの事実。イントロリリース価格はそういう意味で少し安くなります。BF とあまり関係ないかもしれません。
Pro-Q3 に飽きた人が使う EQ で正直、まだまだ、作り込みに甘い箇所があり、あまり初心者向けではありません。Pro-Q3 のようなユーティリティが豊富なわけではなく、Pro-Q3 と同等の機能を持ち合わせてはいるものの、そこまで実用的ではありません。
もちろん、割と挙動が安定していないため、EQ ではなく、自分の耳を信じられる層が、期待を込めて購入する EQ です。精神的な上級者ではない人は買わないでください。あと英語がわからない人も買わないほうがいいです。
なぜ、この EQ を絶賛する人が多いのか?
音がクリア。掛かりがすごくクリア。つまり、ピーク系の EQ は実行しているのか分かりづらい EQ しているんだけど、原音から極端な音質変化が無いため、音質重視ユーザーに非常におすすめ。
ただし、こう EQ してるぜ!って気持ちを味わいたい人は Pro-Q3 のほうがいいと思う。
また、FFT の解像度を変更できるのもポイント。ただし、使い勝手は Pro-Q3 よりは劣る。
また、今後 Update で増えることを期待していますが、Q カーブのプリセットが豊富。Type-E は 4000E、Type-G は 4000G、British N は Neve EQ の Q カーブを再現しているなど、エンジニアを悩ませない設計が見られる。
そして、Dynamic EQ の機能もあるので、Dynamic EQ って選択肢が結構限られるんだけど、ここで Dynamic EQ にふれる事もできる。もちろん Pro-Q3 にも Dynamic EQ 機能はあるけど、なんというか簡易的な機能なので、完全に Dynamic EQ の機能はこちらが上。ただし Pro-Q4 に Update が来た場合、この部分の改良があると予想される。
もちろん、操作性や直感性は Pro-Q3 には正直かなり劣るものの、EQ の選択肢が Pro-Q3 以外なかった層におすすめ。ただし、まだリリースされたばかりなので、この EQ と一緒にレベルアップしていける層や、完全にイントロプロダクションを利用できる精神的に余裕のあるプロ層向けの製品であるので、注意されたし。
音質評価
先程のスネアの音を Kirchhoff-EQ で処理した音源を置いておきます。EQ は割と大きく設定しましたが、その変化具合をお聞きください。
Mix 2kHz モード時
Pro-Q3 が若干スピード感というか音が鈍るような感覚を得るのですが、こちらはそういった要素は感じられない。もちろんモードの違いや EQ しているポイントも全然違うので比較参考としてはあまり役に立たないだろうが、割とキツめにポイント EQ をしてもいやらしさを感じないので、こちらを使う場合と Pro-Q3 を使う場合で利用分けができる。
Dynamic
Sonnox – Oxford Drum Gate
現在最強のドラムゲートツール。今回の BF の目玉かもしれない。本家サイトで £42.50 急げ!
今までのゲートツールはそのゲートプラグインの癖を掴むというか、被りがあるソースに対してはゲートというか、エキスパンダのように、大きい音は通過させて、小さい音はより小さくする、的な用法が現実的だった。
しかし、このゲートプラグイン。ほぼ自動で狙った種類の太鼓だけを抜き出すスーパープラグインだ。
実際、生ドラムのソースを扱う人はもう殆どいないだろうし、今回は被りがある音源を用意できなかったので、この部分のデモは省略しますが、それ以外にも非常に有用なプラグインだ。
まずは、なんと言っても今までの不親切なゲートプラグインと一線を画す、その優れた UI だ。
名前もわかりやすい、左端 Open Threshold がゲートの開く値で、右側が選択した太鼓の種類のトランジェントを検出するレベルだ。説明を聞くより、できれば買わなくてもいいから、デモしてほしい。
詳細はマニュアルを読んでほしいけど、正直読まなくてもなんとなく操作できてしまう各機能に脱帽だ。
そしてその能力は生ドラムの処理時に最大発揮される。もうコレ無しでは生きていられない。
今回は説明を省略するが、指定した太鼓の種類だけを通過するゲートで、被りが多くでもインテリジェントに処理してくれる。
特に、感動するのはリリースの調整。今まではゲートのリリースの調整は結構手間がかかったり、リダクションメーターと結構にらめっこする必要があるのだ、これも Decay の値を調整するだけでいい。ほんとそれだけ。
そして極めつけは Leveller 機能だ。どうしてもショットが安定しない演奏はあります。しかし、このレベラー機能を使えば、ショットのアウトプットレベルを自動調整してくれる!
しかも、Auto-Set Leveller ボタンひとつでなんとなく機能の詳細を把握していなくても OK!
リングサウンドの処理
音のサンプルとして、スネアの余韻調整に一役買ってくれる。
手軽にスネアの余韻を調整することで、EQ で追い込むより、Gate で余韻を処理したほうが、不安定なヘッドダウンを回避できる。ただし、余韻調整がむずかしくなるので、ドラムゲート自体は結構上級者向けの処理。
ドラムゲートでアタックを強調しつつ、嫌な音を排除できたら、余韻を調整するために、トランジェントを変更できるツールが別途必要になってくる。そこが難しいところかもしれない。
Waves – API-2500
ここに来て、かなり古いプラグインを紹介する。こいつは 2007 年、大雑把に 15 年前に発売されたプラグインだ。
個人的に Waves の API-2500 は多用する。このプラグインのいいところはそのパンチ感。
これじゃないと再現できないパンチがあり、アナログモードで利用する前提でお話する。
まず、このコンプ、現代エンジニアはおそらく敬遠するだろう。アナログモードを ON にすると、ヒスノイズは発生するし、現在は標準搭載のオーバーサンプリング機能はないし、パラレル用の Dry/Wet 回路もない。(というか、僕はパラレルはフェーダー派なので別にいらないし、必要ならパラレル処理できるようにするユーティリティプラグイン使うよ。)
でもこいつにしか出せない味があるということでご紹介。
Analog Mode の実力
アナログモードにすると、出力レベルが若干変動する。
スネアの音は結構パンチが聞いた良い音に変化する。
Reverb
LiquidSonics – Seventh Heaven
リバーブは最近 LiquidSonics 一強になりつつある。対抗馬は Relab くらい。
購入するなら Professional Edition ではなくていいと思う。高いから。
ただ、なぜコレを紹介するかというと、そのプリセットと作り込みのし易さ、というか定番っぽさ。
なにも考えずにポチポチして「おっこれええやん!」で終わるリバーブ設定。
凝りだすと、永遠終わらないリバーブ設定は邪道。以上。
適当に設定しただけだけど、全然行ける空間表現
初期の Chambers 1 から Decay time だけリズムに合わせただけ。それだけで十分。
LiquidSonics – Cinematic Room
ご予算に余裕のある方は Professional を買いましょう。
こちらは作りたい人向け。プリセットを選んで想像している空間表現に近づけていく感じ。
音はちょっとリッチな感じなので、弦楽器や Cinematic 系のドラム音源にルームサウンドを付け足していくときにかなり有用。音像を大きくしたい人向けかもしれない。
LiquidSonics – Illusion
いや、このシリーズなにが違うん? って人多いと思うけど、Illusion は上級者向けって感じかな。もう少し色々自分で作ってみたい人用? って感じ。
ちょっとディティールが変わる。こっちはカッチカチ系のリバーブから以下に色々いじって作り込む系。
LiquidSonics – Reverberate 3
これは Impulse Responce 大好きユーザー向けで僕には扱えないっす。
LiquidSonics – Lustrous Plates
プレート特化型。ただ、プレートだけ特化したい!ってユーザーもあまり多くないと思うので、コレを使う層はこれじゃなきゃって人のみ。ちなみにボーカルリバーブにはよく使います。
Seventh Heaven とか Cinematic Room ユーザーはわざわざ購入するメリットは少ないかも。
Special FX
Oeksound – Soothe2
僕の考えた最強プラグインの一角。
不要な共振や共鳴は音のフォーカス具合などが崩れる原因にもなったり、耳障りな一定周波数として邪魔な場合があります。
そんなときは高性能 EQ の出番ですが、EQ の場合、集中力やエンジニアリング技術が必要になります。そして時間が掛かります。
そんな、悩みを解決してくれるのがコレ。狙ったレゾナンス周波数をかなりの自由度でサプレッサーしてくれます!
もう、熟練の EQ 技術は必要ありません!!!
最初の Pro-Q3 や Kirchhoff-EQ の設定は何だったのか…
オリジナルと処理後
EQ なんていらなかったんや!
Utility
ADPTR Metric AB
これはリファレンスを聞いたり、ラウドネスを確認したりと総合的なマスターツール。
特に重要なのはリファレンスを即座に B に切り替えて聞けること。もうそれ以外の機能はおまけみたいなもん。
iZotope – Insight
周波数の監視はコレが結構見やすくて楽。カラーバリエーションに早く RX9 仕様を追加してほしい。
あとは、スイープを使って遊ぶ時とか検証用に使ってる。
iZotope – Total Balance Control 2
これも監視目的。ただし、この領域をガイドにはしない。ただし、ガイドにするほうがいい場合は多い(笑)
残念ながら割引されるかは不明
紹介したプラグインたちは割引提供されるかは不明です。